ちょっと待って!

見たこと聞いたこと、すんなり納得できません。あ、それ、ちょっと待って。ヘンじゃありません?  ヘンです。

従姉の事情

2009-12-04 00:26:52 | 健康・くすり
 耳の遠い従姉から電話が掛かって来た。
「お薬、送って。練薬と液体と。わたし、脳梗塞でひっくり返っててん。7月に。進一が丁度来てくれて、すぐに救急車呼んでくれたから助かってん。3週間、入ってた。タエちゃんもおんなし病気でこの春に入院したけど、時間が経ってたから助かりはしたけど歩けんようになってしもて、今、車椅子に乗ってるわ。わたしも歩かれへんかってんで。あんたの家伝薬一生懸命に付けて、家の中は歩けるようになった。やっぱりあんたの家伝薬はよう効くわ。もっと付けるから、五個ずつ送って欲しいねん。雅三がアホやからまた女に入れあげて、金カネばっかり言うて飯代一銭も入れんと取って行くから腹が立って、バアッと血圧が上がってん。お医者さんが診断書に、『脳梗塞の原因は、息子』と書いてはる。ほんまにアイツはアホや。病院の支払いするのにな、仏壇の抽斗に30万円しもたあってん。いつお金が要ることあるか判れへんと思て。進一に、退院の時そのお金持って来て言うたのに、無いようになっててん。留守の間に雅三が取って使うてしもたんや。悪いやつや。病院の支払いは、進一が立て替えてくれた。あの子は親孝行や。毎日来てくれて、掃除や洗濯やご飯拵えしてくれる。あの子はガンやのに、ようしてくれる。うん。お医者さんの薬飲んだら耳鳴りがするねん。ガーガードンドンジージー、喧しい喧しい。人の言うこと聞こえへんねん。補聴器買うたけど、あかん」
「耳鳴りは、酵素油Aを耳の下と前後に塗ったら治るって言うたやろ」
「耳に薬入れてもダメ。お医者さんに言うてもあかん」
「耳鳴りを止めるお医者さんはないって」
「うん。お医者さん3軒行ったけど、みな『仕様無いです』言わはった」
「そやから、酵素油Aを耳の下に塗らなあかんて昨年言うたやん」
「薬、耳に入れてもあかん」
「入れるんと違う。耳の下に塗るだけ」
「塗ってもあかん」
「知也ちゃんとこ、酵素油A無いやろ。送った覚えないもん」
「ふーん」
「持ってないやろ?」
「孫はあれ好きやから、ちょっと指ケガしても虫に刺されても塗ってる」
「送ったことない」
「頭に薬付けても耳鳴りは止まれへん。髪の毛は黒いけど…」
 従姉は大正十五年生まれだ。
「35年前に頭のてっぺんに材木が落ちて来て薬で治したけど、時々ズクズク痛いなるからそのたんびに薬塗ってるやろ。すれで髪の毛も黒いしボケもせえへんけど、耳鳴りはあかん」
 聞こえにくいところへ耳鳴りがしているのでは、こっちの言うことが聞こえる筈がない。一人で喋っている。
「進一ちゃんも、うちの薬飲んでる方がええよ」
「わたし、飲むのんきらいや」
「進一ちゃんや」
「ああ。進一か。ガンはきれいに取ってもうた」
「ガンはまた再発するから」
「胃、全部取ったのに、一遍に仰山食べて苦しがってる」
「ちょっとずつ、4回か5回に食べんとあかんわ。うちの薬、飲んでた方が安心や」
「ふーん」
「孫、何時に帰ってくるのん?」
「え?」
「ユーちゃんは、何時ごろ帰って来るのん?」
「え? ああ。ユーちゃんか。もう帰る」
 と言っている向こうの方で、「ただいま」と声がした。
「ユーちゃんに、電話代わって」
「ユーちゃん。親類のおばちゃんが、電話に出て、って」
 聞こえてる。
「はい。こんにちは」
「ユーちゃん。そこにな、酵素油Aいうのんある?」
「白い油ですか?」
「瓶は白で、色なしのさらさらした液体」
「ああ。瓶、あります。酵素油Aと書いてます。中身はちょっとです」
「そう。ほな、それも送ります。それから進一のおっちゃんに、黒い薬飲んだほうがええと親類のおばちゃんが言うてた』と言うといて」
「はい」
「ほな、そんなけ。あんたもがんばってください」
 三人も息子がいて、みんな頼りない。一番親孝行の長男に先に死なれたらどうするのだろう。三男の雅三が離婚して、その息子を2歳から知也子が育てた。しっかりしているらしいが、今年やっと中学生になったばかりだ。


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