180621 相続とマイナス資産 <相続した空き家の管理策>などを読みながら
今朝は昨夜のやや強い雨脚も途絶え、雨上がりの朝靄の感じが谷間に広がり、瓦屋根と白壁の倉が点在する集落、そこを囲む雨露を含んだ木々になんともいえない情緒を感じました。
雨を嫌う人も少なくないようですが、私は日照りのことを考えれば雨こそ天恵と思いますし、雨を題材にした古今の作品はわが国の見事な多様性のある景観を生み出す重要な要素であること、それこそ日本人の特性を生み出す基本要素と思っています。
ところで、今日は特別急ぐようもなかったのですが、最近は疲れが残り、昼間はボッとしてばかりいて、電話があると少しはっきりするくらいで、ほんと疲れやすい体になっているようです。高齢化?の影響でしょうか。東京で再会した同じ世代の友人は元気活発にやっているので、私の体と精神がなまっているのでしょうね。
さて本日のテーマ、とくに浮かばず、毎日朝刊記事<くらしナビ・ライフスタイル相続した空き家の管理策>は、私自身も、最近相談として増えてきたかなと思う内容なので、これまでも取り上げてきたことと似ていますが、少し違った観点で触れてみようかと思います。
記事は最初に<家が子や孫への「負の遺産」になりかねない時代だ。>と指摘します。
この意識が大事でしょうね。ある時期の経済政策から、持ち家優遇策を多面的に政府が行い、不動産業者、金融機関、そして消費者、ついでにいえば廃棄物処理業者(解体業者)など全体が、将来のことも考えず、持ち家志向に邁進した結果は、すでに80年代くらいには綻びがでていましたが、それでも抜本的な改善策もなく、今日までいわば消費財のごとく作られ、放置され、あるいは解体されてきたのでしょうか。
若い人が都会に出て、年寄りたちも家で生活できなくなり、あるいは亡くなったりで、空き家の数は増える一方でしょう。それに対する対策としては、現在おこなわれている、行政的な支援策と、民間サービスが、ここで紹介されています。
前者は<山あいの盆地に位置する埼玉県秩父市。>の例。
<市シルバー人材センターの登録メンバー、黒沢友一さん(77)が、1軒の平屋建て住宅の周囲を丹念に点検する。ここが空き家になったのは数年前。住んでいた女性が介護施設へ移り、所有者は東京都内で暮らす。ひび割れを透明テープで応急手当てした窓ガラスや草刈りされた庭。所有者の依頼でセンターが家を手入れしてきた痕跡が、随所で確認できた。>
秩父市がこの取り組みを始めたのは<2016年、空き家の見回りサービスをふるさと納税の返礼品に加えた。作業の担い手はセンターだ。市は「空き家の管理に役立つうえにシルバー世代の働く場づくりにもなる。故郷に貢献できる返礼品として、ふるさと納税本来の趣旨にも沿っている」と期待する。>一つの方策としては人気があるようです。
ただ<国が5年に1度行う住宅・土地統計調査によると、全国の空き家は13年に820万戸と、30年前の2・5倍に上った。住宅総数の中の空き家比率は13・5%になる。居住者の入院や死亡などで管理や撤去が必要な「その他空き家」は、このうち約4割を占めている。>といった現状を見たとき、このような対策では到底対応できない事態になりそうであることは火を見るより明らかでしょうか。
他方で、後者の例は<全国で空き家管理事業を展開する「日本空き家サポート」>によるサービスを紹介しています。
依頼人は地方に住む両親を高齢者住宅に入所させ、残った空き家の管理を心配した子供です。
<ともに90歳近い両親は福島県相馬市で暮らしていたが、父は認知機能が衰え始め、腰を痛めた母は買い物にも行けず「家に食べ物がない」と電話でこぼすことも。「このままでは無理だ」と昨夏、首都圏のサービス付き高齢者住宅に2人を転居させた。一人息子として「両親が新しい所になじめなければ帰れるよう、相馬の家をそのままで残しておいてやりたかった」が、自身は家族も仕事もある東京を離れられない。>
そのサービスの内容は<庭木の手入れや室内への風通し、水回りの点検など、実際の作業は、運営会社のL&F(千葉市)が業務提携する地元の不動産業者が担う。作業ぶりは動画で撮られ、パソコンやスマートフォンで会員専用サイトから見られるので安心感もある。料金は月1万800円。男性は「自分で相馬に通って手入れするよりお金も時間もずっと節約できる」と実感している。>とリーズナブルな値段で,自分でやることを考えれば安上がりでしょうか。
といっても、これらの対応策は抜本的でないことは確かですね。将来の利用を考えていないのですから。当然、<いずれ両親が他界し、家を相続した時>には問題が発生します。所有者不明の不動産ではありませんが、地域にとってもその家庭にとっても負の遺産にしか写らないように思えます。
最後は崩壊の危険が生じた場合に空き家対策特別措置法の新設により、行政代執行手続が実効性を発揮し、これまですでに<国土交通省の調べでは、同法施行後から今年3月31日までに実施された行政代執行は、既に全国で23件に上っている。>とのこと。
でも、それでは全国で問題となっている空き家対策としては間に合わないでしょう。所有者自身が生きているとき、その活用や将来の利用を考えて、計画を立てておくことこそ、終活の中で最も重視されてよいことのひとつではないでしょうか。遺言書を書くことだけをすすめるような法律専門家に頼っていては、最後の仕上げをしていい人生を送るといったことが望めないかもしれません。
残された人のこと、周囲の人のこと、そういったことに思いをはせて、自分の持ち物について責任を果たしたいものです。という私も終活なかばですが。
最後に、この記事を見て、昨日の法律相談であった話を思い出しましたので、付け加えておきます。親が亡くなり、負債があるということで、親が亡くなる直前まで乗っていた古い自動車が残っていて、その廃車をどうしたらいいかという相談でした。
こういう場合負債を支払って残った財産がプラスなら相続する限定承認制度があると話したら、すでに一人を除いて相続人全員が相続放棄をしてしまったというのです。この制度は相続人全員が共同して手続をしないといけないので、これを選ぶことができませんでした。そうなると後は、相続人がいない(残りの一人も相続放棄する予定とのこと)場合の相続財産管理人を家裁で選任してもらい、廃車手続を行っていもらうしかないでしょうと回答したのですが、費用をかけて負の遺産を処理するのも大変ですねと述べるしかありませんでした。ま、ウェブ上では、いろいろな情報が流れているようですが、法的にはこれ以外は難しいと言わざるを得ないでしょう。
これもまた、親はかなりの高齢で、いま話題の免許返上することが求められるような方でしたので、そのことも含めて、免許と車の廃車を生前にやっておれば、残された家族が困らなくて済むのですね。そういったことは結構あります。終活のチェックポイントはどんどん増えていくと思いますね。こういう点への配慮があまり考えられていない気がします。
といったところで一時間が経過しました。これにておしまい。また明日。