171126 競技指導のあり方 <過度な減量 選手生命に影響 女子競技指導の問題点>などを読んだり見たりして
人を指導するというのはどの世界でも難しいことですね。いやいや家庭内で子どもを指導するなんてことはとてもとても大変な事。これはマニュアルもなにもありませんね。他方で、競技の場合、一定のマニュアルがあり、それが世界標準と比較され、次第にわが国の指導方法も見直されているように思います。
私が高校野球をやっていた頃、練習中一滴の水も飲むなと言われていまして、我慢していました。よく熱中症にならなかったといまでは不思議に思います。練習が終わった後の水は何よりも美味であり最高でした。最近のスポーツ選手(学生)は外食したり、そうでなくとも自動販売機でいろいろな美味なものを飲んでいますね。私の時代は自動販売機自体がなかったのですが、そういう飲み物があってもさほど興味をそそられることもなかったですね。
ところがその後遺症がやはりあるようです。長い間飲み物は、仕事後ビールなどを飲む以外あまり飲みませんでした。ジョギングなどでも何かを飲むと言うことはなかったですね。それと以前はリサイクル法がなく、ペットボトルの取り扱いに疑問があったので、これをもたない意識が強すぎたことも影響しました。そろそろ後遺症の話をしないといけません。その結果でしょうか、肌の乾燥がひどくなりました。かゆくなるのですね。それで最近は飲み物をできるだけとるようにしていますが、後の祭りでしょうか。老齢化の影響もあり、瑞々しい肌にはほど遠いだけでなく、声も以前にも増して枯れてしまい、ときどき発声できなくなるくらいですから、困ったものです。これらが飲み水制限の後遺症とまで断定できませんが、練習中は飲み水を飲まないという習性が仕事でも長く続いたことで、少なからず体の不調に影響しているような気がします。
さてそろそろ本論に入ります。今朝の毎日記事<ぷらすアルファ過度な減量 選手生命に影響 女子競技指導の問題点>では、<万引きをしたとして窃盗罪に問われた女子マラソン元日本代表選手(35)の初公判が今月開かれ、元選手は現役中の食事制限による摂食障害に長年苦しんできたことを告白した。>としています。この選手は11月9日付けの記事で取り上げられていた<アクセスマラソン元日本代表が万引き 摂食障害、追い詰められ 厳しい食事制限、指導で横行>だと思われます。止められない万引きはこういった病気なり、異常な体質なども影響することが多く、個人の主体的判断ではコントロールがきかなくなる場合が少なくないことを私も事件で数多く経験しました。
中川聡子、坂根真理の2人の女性記者が取り上げたのは、<陸上界では厳しい食事制限を課す指導が依然として残っており、専門家は「特に成長期に正しい食習慣を身につけることが競技継続や強化の上でも重要」と改革の必要性を強調する。>と問題提起しています。
この問題は<女性アスリートは食事制限や減量指導が将来、けがや障害につながる傾向が強いことが、約10年前から海外で指摘されるようになり、日本でも問題意識が広がる。>と最近になって海外で取り上げられるようになり、わが国でも問題になってきたのでしょうか。トップアスリートの有森裕子、高橋尚子、野口みずきといった方々は、独自の練習で、むろん食事療法も取り入れて、堂々とやっていたように思っていました。たしか高橋さんはもりもり食べていた映像を見たことがあり、そうなんだなんて感心しましたが、これは例外中の例外なんでしょうね。
この減量指導については、<女性アスリートの陥りやすい障害(Female Athlete Triad、通称FAT)として、エネルギー不足・無月経・疲労骨折の三つが上げられる。トレーニングの量や質に合わせ、バランス良く、十分な量の食事を取らなかった場合、「エネルギー不足」になり、月経が止まったりなくなったりする。そこから骨の形成に欠かせない女性ホルモンの分泌が減り、疲労骨折や靱帯(じんたい)損傷を引き起こし、将来的に骨粗しょう症になるリスクが高まるのだ。>とすでに科学的なデータがあるようです。
わが国でも科学的な指標により現状把握を始めているようですね。<順天堂大スポーツ健康科学部准教授で陸上競技部女子監督の鯉川なつえさん(45)は、FATが疑われる状況にあるかチェックするための「FATスクリーニングシート」=表=を作り、選手らに活用を呼びかける。
鯉川さんが15年に大学女子駅伝出場選手314人に調査した結果、72%が体重制限、73%が無月経、46%が疲労骨折を経験していた。また、27%が鉄注射をしたことがあると答えた。
「ご飯を食べるな」という誤った指導がなされる一方、選手自身が「太ったら成績が落ちる」という恐怖心から食事に消極的になるケースも多い。順大の新入部員が合宿の食事を前に「こんなに食べるんですか」と驚く様子を何度も目の当たりにしてきた。「勤勉で期待される選手ほど自分を追い込みがちだ。親やコーチの介入が欠かせない」と、周囲がFATへの問題意識を高める必要性を訴える。>
高校でも始まっています。<練習後には必ず、部員に体重測定を課す。顧問への報告や記録の義務はなく、選手自身で体重と健康を意識するよう習慣づけるためだ。体重が増えたら食事内容を自分で見直し、豆腐や納豆を食事に取り入れるなど対策が取れる。
栄養指導にも力を入れる。強化練習会では、松井顧問やコーチらが栄養学を部員に教える。疲労回復にいい食事や、体重増加につながりやすい食べ物の知識を伝える。「自分で考え対策を取るよう促している」と狙いを語る。
体重測定や栄養指導以外にも、無月経が3カ月続いた場合は、病院の受診を勧めている。女子部員の一人は「松井先生はどんなケアをしたらいいか教えてくれるから、無月経や貧血になったことはないです」と話す。>
トップアスリートを目指すレベルだと、<松井顧問は五輪を目指すジュニア選手を集めた合宿にもコーチとして参加。食事はバイキングで、同行する栄養士が選手の選んだ食事内容をチェックし、栄養バランスをアドバイスする。「子どもが試合で結果を出せないのは、コーチの責任だと思っている。しっかり健康を管理できたら結果を残せる。選手も陸上の楽しさを感じ、練習に励むことができる」と強調する。>ということで、次第に改善の兆しが見えることは期待したいと思います。
ただ、気をつけておかないといけないことは、大学生以下だと、ほとんど指導者の指導に従う傾向が大ではないかと思うのです。それが問題かもしれません。自分で考えてよりよき健康管理と技術・能力アップを行う個々の意識改革も必要ではないかと思うのです。むろん指導者も。当然、指導者や健康管理スタッフの方が情報が多いわけですが、それを一方通行するのではなく、選手・学生と意見交換しながら、よりよき選択をするそういった指導法を目指してもらいたいと思うのです。
高橋尚子さんと小出義雄監督との関係などを見ていると、見事な師弟関係が成立していたのかなとの印象を受けます。
そこで場面ががらっと変わって、昨夜ちらっと見たNHKの<奇跡のレッスン「ラグビー編~エディー・ジョーンズ~」>を取り上げたいと思います。ラグビーの試合は割合好きで時折見ますが、どうもゲームの戦術や成り行きがわかりにくいスポーツとの印象をいつも抱いていました。
でもエディーコーチの考えは違うようです。ものすごい頭脳プレーなのですね。今回は東京の強豪校・目黒学園の学生をたしか4日間でしたか、指導しただけですが、がらっと選手の意識や行動が変わるのですね。その秘訣は、選手同士のコミュニケーションをその場その場で具体的に指導するのです。
ラグビーというと、つい力勝負、あるいは素早いパスワークと巧妙なステップによる切り込みなどを、言葉を超えた前進の体をフルに使う、肉体美みたいなものに見とれてしまいますが、勝負の決め手は別のところにもあったのですね。
ディフェンスなり、オフェンスで、各選手が相互に他の選手の位置を指示しながら、チーム全体で有効なフォーメンションをとることで、一糸乱れぬボールさばきができ、トライに結びつけることができることを見事に証明してくれました。
指導の成果を見せるため、専修大学(これは選手の体格からみて失礼ながら控えの方ではと愚考してしまいましたが)と試合をしたのですが、最初は大学生の勢いに押されながらも、指導の効果が現れ、逆転勝利を挙げていました。
その中で注目したのは、選手は皆大きな声で威勢良く動いていましたが、エディーコーチいわく居酒屋の騒ぎだというのです。たしかに意味のないかけ声をいくら大きな声で叫んでも、チームの機動力を機能させることにはつながらないでしょう。まさに肝心のポイントです。その意味で、適宜適応の言葉を選び、それに応じて各選手が動けば、言葉は一糸乱れずの塊として巨大な力を発揮することができるように思えます。
そして重要なもう一つは、それぞれの選手が自分の考えを示すことでした。チームプレーというと、昔教えてもらったのは、黙ってチームのために、脇でも働くといった風に感じていたこともあります。しかし、ここではチーム全体のために、自ら主体的に意見を述べることが求められ、それは試合中でも発揮する動きが必要となるのだと思います。
わが国のスポーツ競技、とくにチーム競技では、コミュニケーション技術が重視されてこなかったと思うのですが、エディーコーチの指導はその意味で、今後、採用を検討してもらいたいと思った次第です。
その言葉が、TVなどの高感度マイクで拾うことができると、ラグビーの魅力がもっとますのではと期待しています。
そして再び、個々のアスリートの健康管理を改めて、指導者には求めたいと思うのです。そういえば、たしか西武ライオンズの藤田監督が野菜食を重視して導入したといったことが昔話題になったように思いますが、他のスポーツでも食事や健康管理・筋トレなど、さまざまな観点から、最低限度、アスリートの将来を考えた健康管理だけは確保して欲しいと思うのです。
今日はこの辺でおしまい。また明日