あのねぇ、どうしてもスグンが好きなのよ、わたし。
噂を流しに町へ行くときにさ、スグンは太鼓を叩いて大道芸みたいにするでしょ?
お芝居っぽい抑揚でしゃべって、見得を切って、
あのシーンすごく好きなんだよねー。
《あらすじ》
ギルドンは死を前にして、和尚との問答を思い出していた。
「死を前にすれば、自分がどう生きるべきか、答えが出せそうか?
その答えを、見つけてみろ」
剣は王の元へかえり、ギルドンは逆賊として死んだとされた。
残されたチャンフィは、ギルドンの残した言葉について考えている。
「そこまでして、なぜ王になるのか?生き残るお前が考えろ」
多くの人を犠牲にしてまで、なぜ?
母の墓土を入れた守り袋が、矢の威力を弱めてくれた。
ギルドンは仲間に助けられ、一命をとりとめる。
しかしそれは、誰にも知られてはならないのだ。
ギルドンは生きていると信じ、必死で彼を捜す、イノクにも。
さらし首になった無実の人々の首を盗み、弔うギルドン。
父を慕い、泣く幼子の姿がまぶたに焼き付いて離れない。
「チクショウ、やっとわかった」
さらし首が消えた噂で、イノクはギルドンが生きていると確信した。
チャンフィ王子もまた……。
ギルドンは、盗賊たちに声をかけ、あらたな仕事をしようと持ちかけた。
「朝鮮一の泥棒をねらうぞ」
ギルドンのねらいは、高級官僚たち。大臣の屋敷に押し入る算段だ。
しかも相手が「どうぞ持って行ってくれ」と言うように仕向けるのだ。
大臣たちの乗る輿が次々に狙われ、肥やしがぶちまけられた。
汚物に汚され、右往左往する両班を見て、人々は溜飲をさげる。
そして町中に貼られた声明文。
「ひと月後、もっとも多くの賄賂を受け取った大臣の家に、盗みに入る」
という泥棒の一筆だ。
誰が一番賄賂を取っているのか?盗みに入られるのは誰の屋敷だ?
町中の人々がおもしろおかしく噂する。
イノクは、ギルドンが生きていると確信して、ひとりで捜すとがんばっている。
そんな彼女を放っておけないチャンフィ。
そしてノ尚君も、動揺する王子の様子をうかがって、イノクを商団で雇うことにした。
王子の心を揺らす女などもっての他だが、側に置いておければ見張りも楽だ。
彼女の知るイノクが生きていたとすれば、王子とよいご縁だったはずなのだが。
約束の日、ギルドンらは次々に大臣宅に盗みに入る。
誰もが、自分が一番だったと知られたくない。
騒ぎ立てることもなく、官軍を呼ぶこともなく、仕事は簡単だ。
ただ、ギルドンは左議政の屋敷でウネに姿を見られてしまった。
仕方なくギルドンはウネと話をつけ、自身の生存を秘密にさせた。
ギルドンは、盗んだ金を両班に虐げられ、搾取された人々と分けるのが道理だと言った。
盗賊団の仲間も、皆承諾した。
貧しい人々の家々に、金が配られた。
働き手を失い、路頭に迷いかねない人々も、これで冬がこせる。
「その道が、お前の見つけた道か?」
「さあね、今できることをやってみるよ」
和尚はギルドンのすべてを受け入れる。
「イノクはどうする?ずっと待たせておくのか?」
「あきらめさせる」
ギルドンは、和尚に頼んで血にぬれた守り袋をイノクに渡した。
「これを抱いた遺体を見つけた猟師がいた。どうもギルドンのようだ。
遺体は焼いたそうだ。イノガ、ギルドンは死んだ」
イノクは、何を言われたのか、咄嗟に理解できない。
涙がこぼれる。
膝の力が抜け、石段に座り込んでしまうイノク。
どんどん涙があふれてくる。嗚咽がとまらない。
大きな声で、子どものようになきじゃくるイノク。
物影からその姿をこっそりと見ていたギルドンは、きっぱりと背を向けた。
(つづく)
母の墓土を入れたイノクお手製の守り袋。
もちろんこれが、ギルドンの命を救うことになると信じていたよ~!
ギルドンの死を信じないイノク。
希望的観測も多分にあるわけだけど、賢い娘だ。
そして一途にギルドンを想う気持ちが本物だよ。
スグンが「子鹿ちゃん」と呼ぶ気持ちがわかるなー。
かわいすぎる。
若君が彼女に惹かれるのも当然わかる。
そもそも縁のあるふたりだもん。
私はイノクがチャンフィと結ばれたっていいよ。
暗い影を持つ王子に癒やしを与えてあげたいもん。
そして彼に、王になる意味を教えてあげられるのもイノクだと思うし。
彼女が側にいるかぎり、彼はよい王でいられると思う。
ただ、イノクがそれで納得するかなんだよね~。
ギルドンのこと、すっごくすっごく好きだもんね。
どんなに王子に同情しても、きっとギルドンをあきらめられないんじゃないかな。
そういう娘だから好きなんだけどさ。
ああ!王子もギルドンも好きだから!
どっちのふたりにも、イノクと一緒にいさせてあげたい!
人の心って、どうしてこう、思い通りにならないんでしょうね……。
ウネアガッシがギルドン生存をしっている、というのがくやしいです。
恋敵のイノクには、きっと教えてくれないだろうね。
そこのところの少女の気持ちはよくわかる。
でもいつかきっと、その秘密を守ることができなくなるに違いないよ。
なぜならね、
いい男を愛したら、自分もいい女になっていくのよ~。
自分だけが知っている、ギルドンの生存。
最初はうれしいだろうけど、だんだん少女らしい潔癖さと、
ギルドンに対して恥ずかしくない人間でありたい、という正義感、
そして、たとえ誰かと並んでも自分は選んでもらえるはずだという自負心が
彼女の中で湧き上がってくると思うの。
同じ男を愛した女同士、対抗心とともに、なぜか連帯感を感じてしまうもの。
きっとウネちゃんは、ギルドン生存をイノクに教えてくれると思う。
どこかのタイミングで。
イノクを巻き込まないために、彼女を愛しているからこそ、
自分が生きていると言えないギルドン。
思い出のよすが、守り袋さえ手放して、自分の死を納得させようとするギルドン。
いい男だよねぇ~。
どうやらイノクは、商団に雇ってもらえるようだし、
チャンフィ王子は今が勝負所なんですが、わかっていますでしょうか?
ギルドンは、義賊として生まれ変わった。
差別され、虐げられ、搾取されている人たちを助けたいと思った。
もちろん、彼に言わせれば、「そんなかっこいいもんじゃない」って言うと思う。
「奴隷の身分から抜け出せない自分のためだ」って言うと思う。
「奴隷は奴隷だからしょうがない、逃げるしかない、と思っていた自分が、
お偉い奴らに一泡吹かせて天下をひっくり返してやるのも面白いから」って言うと思う。
ギルドンがかっこいいのは、自分の生き方と、女を愛することをいっしょくたにしないから。
「あいつがいないと生きていけない」っていうのは、やっぱりしょーもない男のセリフで、
愛する人への思いを胸に秘めて、自分の仕事を成し遂げるのが、いい男の条件だと思います。
もちろん女だって一緒よ!
泣き崩れるイノクを見ているギルドンの胸の内……。
すごくつらいけど、それほど彼を愛してくれるイノクを見て、
同時にすごく嬉しいハズ。
複雑よね……。
奇しくも死者として生きる身となったチャンフィとギルドン。
ふたりの男はまた出会うはずですが、いったいどうなるんでしょうね。
わー楽しみだ!
噂を流しに町へ行くときにさ、スグンは太鼓を叩いて大道芸みたいにするでしょ?
お芝居っぽい抑揚でしゃべって、見得を切って、
あのシーンすごく好きなんだよねー。
《あらすじ》
ギルドンは死を前にして、和尚との問答を思い出していた。
「死を前にすれば、自分がどう生きるべきか、答えが出せそうか?
その答えを、見つけてみろ」
剣は王の元へかえり、ギルドンは逆賊として死んだとされた。
残されたチャンフィは、ギルドンの残した言葉について考えている。
「そこまでして、なぜ王になるのか?生き残るお前が考えろ」
多くの人を犠牲にしてまで、なぜ?
母の墓土を入れた守り袋が、矢の威力を弱めてくれた。
ギルドンは仲間に助けられ、一命をとりとめる。
しかしそれは、誰にも知られてはならないのだ。
ギルドンは生きていると信じ、必死で彼を捜す、イノクにも。
さらし首になった無実の人々の首を盗み、弔うギルドン。
父を慕い、泣く幼子の姿がまぶたに焼き付いて離れない。
「チクショウ、やっとわかった」
さらし首が消えた噂で、イノクはギルドンが生きていると確信した。
チャンフィ王子もまた……。
ギルドンは、盗賊たちに声をかけ、あらたな仕事をしようと持ちかけた。
「朝鮮一の泥棒をねらうぞ」
ギルドンのねらいは、高級官僚たち。大臣の屋敷に押し入る算段だ。
しかも相手が「どうぞ持って行ってくれ」と言うように仕向けるのだ。
大臣たちの乗る輿が次々に狙われ、肥やしがぶちまけられた。
汚物に汚され、右往左往する両班を見て、人々は溜飲をさげる。
そして町中に貼られた声明文。
「ひと月後、もっとも多くの賄賂を受け取った大臣の家に、盗みに入る」
という泥棒の一筆だ。
誰が一番賄賂を取っているのか?盗みに入られるのは誰の屋敷だ?
町中の人々がおもしろおかしく噂する。
イノクは、ギルドンが生きていると確信して、ひとりで捜すとがんばっている。
そんな彼女を放っておけないチャンフィ。
そしてノ尚君も、動揺する王子の様子をうかがって、イノクを商団で雇うことにした。
王子の心を揺らす女などもっての他だが、側に置いておければ見張りも楽だ。
彼女の知るイノクが生きていたとすれば、王子とよいご縁だったはずなのだが。
約束の日、ギルドンらは次々に大臣宅に盗みに入る。
誰もが、自分が一番だったと知られたくない。
騒ぎ立てることもなく、官軍を呼ぶこともなく、仕事は簡単だ。
ただ、ギルドンは左議政の屋敷でウネに姿を見られてしまった。
仕方なくギルドンはウネと話をつけ、自身の生存を秘密にさせた。
ギルドンは、盗んだ金を両班に虐げられ、搾取された人々と分けるのが道理だと言った。
盗賊団の仲間も、皆承諾した。
貧しい人々の家々に、金が配られた。
働き手を失い、路頭に迷いかねない人々も、これで冬がこせる。
「その道が、お前の見つけた道か?」
「さあね、今できることをやってみるよ」
和尚はギルドンのすべてを受け入れる。
「イノクはどうする?ずっと待たせておくのか?」
「あきらめさせる」
ギルドンは、和尚に頼んで血にぬれた守り袋をイノクに渡した。
「これを抱いた遺体を見つけた猟師がいた。どうもギルドンのようだ。
遺体は焼いたそうだ。イノガ、ギルドンは死んだ」
イノクは、何を言われたのか、咄嗟に理解できない。
涙がこぼれる。
膝の力が抜け、石段に座り込んでしまうイノク。
どんどん涙があふれてくる。嗚咽がとまらない。
大きな声で、子どものようになきじゃくるイノク。
物影からその姿をこっそりと見ていたギルドンは、きっぱりと背を向けた。
(つづく)
母の墓土を入れたイノクお手製の守り袋。
もちろんこれが、ギルドンの命を救うことになると信じていたよ~!
ギルドンの死を信じないイノク。
希望的観測も多分にあるわけだけど、賢い娘だ。
そして一途にギルドンを想う気持ちが本物だよ。
スグンが「子鹿ちゃん」と呼ぶ気持ちがわかるなー。
かわいすぎる。
若君が彼女に惹かれるのも当然わかる。
そもそも縁のあるふたりだもん。
私はイノクがチャンフィと結ばれたっていいよ。
暗い影を持つ王子に癒やしを与えてあげたいもん。
そして彼に、王になる意味を教えてあげられるのもイノクだと思うし。
彼女が側にいるかぎり、彼はよい王でいられると思う。
ただ、イノクがそれで納得するかなんだよね~。
ギルドンのこと、すっごくすっごく好きだもんね。
どんなに王子に同情しても、きっとギルドンをあきらめられないんじゃないかな。
そういう娘だから好きなんだけどさ。
ああ!王子もギルドンも好きだから!
どっちのふたりにも、イノクと一緒にいさせてあげたい!
人の心って、どうしてこう、思い通りにならないんでしょうね……。
ウネアガッシがギルドン生存をしっている、というのがくやしいです。
恋敵のイノクには、きっと教えてくれないだろうね。
そこのところの少女の気持ちはよくわかる。
でもいつかきっと、その秘密を守ることができなくなるに違いないよ。
なぜならね、
いい男を愛したら、自分もいい女になっていくのよ~。
自分だけが知っている、ギルドンの生存。
最初はうれしいだろうけど、だんだん少女らしい潔癖さと、
ギルドンに対して恥ずかしくない人間でありたい、という正義感、
そして、たとえ誰かと並んでも自分は選んでもらえるはずだという自負心が
彼女の中で湧き上がってくると思うの。
同じ男を愛した女同士、対抗心とともに、なぜか連帯感を感じてしまうもの。
きっとウネちゃんは、ギルドン生存をイノクに教えてくれると思う。
どこかのタイミングで。
イノクを巻き込まないために、彼女を愛しているからこそ、
自分が生きていると言えないギルドン。
思い出のよすが、守り袋さえ手放して、自分の死を納得させようとするギルドン。
いい男だよねぇ~。
どうやらイノクは、商団に雇ってもらえるようだし、
チャンフィ王子は今が勝負所なんですが、わかっていますでしょうか?
ギルドンは、義賊として生まれ変わった。
差別され、虐げられ、搾取されている人たちを助けたいと思った。
もちろん、彼に言わせれば、「そんなかっこいいもんじゃない」って言うと思う。
「奴隷の身分から抜け出せない自分のためだ」って言うと思う。
「奴隷は奴隷だからしょうがない、逃げるしかない、と思っていた自分が、
お偉い奴らに一泡吹かせて天下をひっくり返してやるのも面白いから」って言うと思う。
ギルドンがかっこいいのは、自分の生き方と、女を愛することをいっしょくたにしないから。
「あいつがいないと生きていけない」っていうのは、やっぱりしょーもない男のセリフで、
愛する人への思いを胸に秘めて、自分の仕事を成し遂げるのが、いい男の条件だと思います。
もちろん女だって一緒よ!
泣き崩れるイノクを見ているギルドンの胸の内……。
すごくつらいけど、それほど彼を愛してくれるイノクを見て、
同時にすごく嬉しいハズ。
複雑よね……。
奇しくも死者として生きる身となったチャンフィとギルドン。
ふたりの男はまた出会うはずですが、いったいどうなるんでしょうね。
わー楽しみだ!
王子は、王子だから王になろうとしてただけなのU+2049U+FE0E
現王の愚政に苦しむ民のためじゃなく?
ていうか、ノ尚宮の狂気じみた信念が
彼を育てたんだね(/ _ ; )
そこから抜け出し、自分で答えを出さなければならないね。
頑張れ!チャンフィ王子!
ウネお嬢様の、悲劇のヒロインぶりっ子がハナにつきます。
これから彼女も成長していくのでしょうか?