いまさら韓ドラ!

韓国ドラマの感想をネタバレしながら書いています。旧作メイン

サイボーグでも大丈夫

2012年09月28日 | 韓国映画
サンドゥの余韻が後を引き、
ピ主演の何か別のドラマを観よう……と思い立ち、
悩んだ挙句、とりあえず映画を観ることにしました。

「サイボーグでも大丈夫」お?いいじゃん。なんかかわいいっぽいし。
「絶対彼氏」とか「Q10」みたいな感じ?
主演の女の子は眉毛も剃って体重もすごく落として
体当たりの演技といううわさで、なんか期待できるかも~。

え?あれ?監督って「親切なクムジャさん」の人?

《あらすじ》

精神病棟に入院したヨングンは、自分をサイボーグだと思い込んでいる。
ご飯を食べると故障しちゃうから、乾電池をなめて充電、充電。
だんだん弱っていくヨングンが気になるイルスンは、
人から何かを盗む天才。
卓球の才能とか、あいさつだって盗んじゃう男。

ヨングンはおばあちゃんを救うために自分の同情心を盗んでもらう。
はやくはやく、入れ歯を届けてあげないと、
おばあちゃんは大根を食べられない。

でもおばあちゃんはとうとう介護施設で亡くなってしまった。
食べ物を受け付けず、ヨングンは死にそうに弱ってしまう。
イルスンはなんとか彼女を助けようと一生懸命考えて、
ある発明をするのでした。

その名もライスメガトロン。
ね、サイボーグでも大丈夫。



まあ、ネタバレしてどうこうという映画じゃないんですが、
いろいろ書いてありますので未視聴の方は以下、ご遠慮ください。
てか観てないと何書いてるかわかんないかも。


猫がかわいすぎる。

映画の冒頭で、あー、アメリ?なんて感じたのはあれだよ、
鮮やかなグリーンと赤の配色のせいだな、きっと。
いきなり手首切って配線つないじゃうし、
やっぱりこわい、この監督。

でも精神病棟の色合いがパステルトーンですごくかわいい。
「チャーリーとチョコレート工場」みたいな感じ?
毒のあるかわいらしさでいっぱいです。
本当の精神科病棟がこんなだったら平和でいいんだけどねー。
なんか世の中のしがらみから解放されて、
精神を解き放って自由に生きられていいよな、と思ってしまいそうだけど、
そこは病院ですから。
電気ショック治療なんかがへーぜんと行われていて、
やっぱりこわい。

私は精神病院に入院してからのヨングンを見て、なんかがっかり。
眉毛は脱色してるだけだった。
ほんとに剃ってたらかっこよかったのになー。

ヨングンはおばあちゃんっこで、
おばあちゃんがぼけちゃって介護施設に収容されてからおかしくなった。
自分がサイボーグだと信じてるから、ご飯も食べないし、
人間らしい感情を禁じてる。
でも同情心をなくすことは難しくて、そのせいで
おばあちゃんを助けてあげることができない。
入れ歯を届けてあげることができないの。

彼女はおばあちゃんを捨てたという罪悪感があるんじゃないかね。
直接的には施設に入れちゃったお母さんとおばさん夫婦が悪いんだけど、
自分は何にもできないこと後ろめたく思ってるんじゃないかな。
だって入れ歯すら届けてあげられない自分なんだもん。

そしておばあちゃんがぼけちゃったことを恥だと思っているお母さんを許せない。
おばあちゃんに優しくないお母さんを許せないんだよね。
いろいろ許せないけど、いちばん許せないのは自分自身だから
拒食症になっちゃうんだろうなー。
そのへんのつじつまを合わせるために、
自分はサイボーグだと思い込んじゃってるわけだ。

イルスンは幼いころお母さんが家出したトラウマが尾をひいて、
おかしくなった。
たった一度「歯をみがきなさい」と連絡してきたくせに、
電気歯ブラシセットを持って家出した母親。
そのせいで病的に歯を磨き、人の持ってるあらゆるものを
盗むようになっちゃった。

電気ショック治療を受けたことで、サイボーグ幻想が加速しちゃって、
拒食のために死にそうになってしまうヨングンを救うために
イルスンは必死でライスメガトロンを作る。
体に埋め込んで、ご飯を電気エネルギーに変えてくれる機械だよ。

それを埋め込んでもらったら、ほらご飯が食べられる。
サイボーグでも大丈夫。

ヨングンが生まれたとき、未熟児で保育器に入ってたことも
サイボーグ幻想の根っこにあるのかもね。

最後は「存在の理由」を解明したヨングンが、
イルスンを伴って雷雨の中に出かけていく。
むき出しの自然の中で、ふたりは裸になって抱きあう。

てなラストをむかえます。

生まれ変わったヨングンが空想の中で
ホワイトメン(医師・看護師)を皆殺しにするところが最高。


指先がマシンガン使用。004だね

あのシーン、1カットで撮ってるんだけど、
もうみんなの動きがどんだけ計算されたものなのかと思うと
きゃーってなる。

ヨングンとインスンが安静室に入れられて、
一緒に妄想の中で山にでかけるシーンが大好き。
インスンのヨーデルうまい。


この美声は患者さんからもらったものです

おばあちゃんの腰のゴムひもと、点となって消えるとこ、
患者たちの妄想がまじりあってて楽しい。

ライスメガトロンを埋め込む手術、
本当にカッターで切っちゃうかも……と疑ってちょっとこわかった。
痩せ細ったヨングンの背中を見て、涙をこぼすインスンが
いとおしかった。


メガトロンはイルスンの母の形見?的なものからできています

うー。そしてヨングンがおばあちゃんの遺灰を埋めて
その死を悲しむシーンでの、エクソシスト的キスシーン。
ぎゃー!あまりの長さに日が暮れちゃってますけど!
ねばっこいけど、イルスンのありったけの愛情を感じましたよ。
サイボーグのヨングンも溶解。
ちょっとときめいちゃったりして。
恋ですね。恋。


ピュアっぽいのは最初だけです

このシーンがあったから、ラストシーンが
あれでよかったんでしょう。
裸になっとく必要があったんかい、と思うほどの遠景カット。
その直前のふたりのやりとりから、
あー、全部脱いでそうなったんだねーってわかるからいいけどさ。

ご飯食べられたところから、もうひとやま山場があって
ラストを迎えられてよかったな、と。
ライスメガトロンのとこだけで終わったらつまんないもんな。
「ライスメガトロンの保障期間は一生だ」
それじゃフツーのラブストーリーだろ!
(だいぶ状況設定は特殊だけど)

イルスンはお母さんへの恨みを葬って、
ヨングンは自分がサイボーグだと主治医に告げることができました。
ふたりとも一歩踏み出した感じ。

この主治医もいい味出してます。
彼女がサイボーグだということを受け入れ、
つらかったでしょ、と包み込んでくれた。
「大丈夫よ、わたしが知ったから」

誰にも知られちゃいけない、食堂にお客さんが来なくなっちゃうから、と
お母さんに言われて、ずっと隠していた秘密。
一緒にわかちあってくれる人ができて、本当によかった。
サイボーグだって言っても、大丈夫だった。

先生は言います。
「知ることの次に大事なのは信じること。
そしてそれより大事なことは、食べること」

うん、真理、なんかなぁ。
チョコは甘いと知ればいい、ただそれだけ。って感じの
描写がなんか好きだ。

ヨングンの探し求めてた自分の存在の理由が、
彼女が世界を滅亡させられる核爆弾だった、というのも、
寓話的な演出なんでしょうか。



あの寒々とした、というか晴れ晴れとした、というか
幻想的な風景の中で裸のふたりが抱き合ってるラストは
いいんじゃないでしょうか。
唐突な終わり方で、エンドクレジット出てきたときは
ちょっと拍子抜けしましたけど。
核戦争後の地球っぽい感じもしましたしね。

前衛映画というほど奇抜ではなく、
恋人とデートで観るのにおススメ!というほど甘くなく、
シュールと言えばシュールな話だけど理解はできて、
映像がきれいだったのでまた何度か観たいなぁと思う映画でした。

あのキスシーンだけがやたらと「生きてる」って感じの
オーラというかフェロモンというか生の息吹っていうか、
なんかもやもやもや~とした湯気みたいのが立ちのぼってて、
ズキーンときた。

12歳の娘とも一緒に観られる映画を作ったんだーと監督は
言ってたそうですが、この映画、12歳が観るのはどうかな……。

監督は繰り返しますが、
「親切なクムジャさん」の人です。
「オールドボーイ」とか観られないと思うって前に書いたけど、
やっぱり観たいかも。てか観ないとダメかも。



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2 コメント

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再トライしようかしら。 (hop)
2012-10-01 08:56:44
実はこの映画リタイアしちゃったんですよ^^;

血の匂いプンプンのクムジャさんも、えげつないオールドボーイも平気だった私ですが、
手首系がものすごく弱いんです。

でもビスコさんの感想を読ませてもらって
もう一度観て見ようかなぁって思ってます^^v
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とりあえず飛ばして (ビスコ)
2012-10-01 22:24:33
手首系が弱い、ということは冒頭でリタイヤだったのでしょうか。
確かに電極を差し込んだあたりでクラッときますね。

その後は手首系は出てこないし、
マシンガン打ちまくりくらいのかわいいものですので
心配はありませんよ。

とりあえず冒頭は飛ばしてご覧になってはいかがでしょうか。

私はオールドボーイを手にとっては棚に戻す毎日です。
観たい気持ちは募るのに、ちょっとビビってるんですよ。
hopさんは平気だったのね。
そしてえげつない映画なのね。
うん、やっぱり観よう。

「えげつない」に惹かれる自分ってなんなの?とも
思いますが……。

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