3月後半から国内出張が増えてきて
遠くの景色を見ながら春を感じてい
る。
先週訪れた北海道も山脈一部の残雪
だけが冬の名残りで春に交わること
なく美しさを放っていたが、近くの
禿げた木々には冬の厳しさを乗り越
えた後の暖かさに帯びていた。
午前の商談を終えて道南の街中に
入った日の不思議な出来事を少し記
したい。
観光地から少し離れた倉庫街を車で
走っていると倉庫に沿った歩道側に
工事現場が見えてきた。
するとその現場の前に着物姿の女性
が二人立ち並んでいる。
向かう車側から見ると後ろ姿。
薄い黄色と桃色の着物を着た二人が
忙しそうな工事現場を案山子の様に
見ている風に始めは見えた。
寂れた倉庫街に着物姿で立ち尽くし
ている光景。
これだけでも十分に違和感を感じる
のだが、そのまま車を進めて近づい
た。
すると手前黄色の着物の方の表情を
はっきりと捉える事が出来た。
先程説明した通り工事現場側に
向いて立ち並んでいるが、彼女の
視線は工事の様子を見ているのでは
なく、ただ深く項垂れているのであ
る。
哀しげに見える表情は何を示すのか
。
何故こんな場所に立ち尽くのか。
釈然としないままこの光景を後に
して次の商談へ向かった🚙