七月 一日(土) 曇り
7月だ。今日から一週間『第62回全国労働安全衛生週間』が始まった。
この一週間は安全大会はもちろん安全協議会、自主パトロール、安全パトロール、健康診断
等のチェック、反省会迄計画がある。
この期間中の結果内容は本社労務安全部迄報告書が閲覧されるが、かなり厳しいチェックも
支店パトロール隊にて実施される。
労基署も所轄の現場に《立入り検査》をされるであろう。
先月6月30日を終わって出来高は16.2%で工程消化日数は34%だ。
工事は順調に進んでいる。
今月は3階と4階の2フロアー分はコンクリートを打設するのがメインの仕事だ。
3階から6階迄は同一スタイルだからピッチは早くなりそうだが、夏休みも始まるし、夏バ
テ、熱中症も出るので無理は禁物だ。
お盆迄に5階、8月末で最上階が出来れば申し分ない工程だ。
だが、M店舗は今月が勝負だ。基礎のコンクリート打設、下旬には『鉄骨建方』になる。
Kビルが同一作業の繰り返しの間に、M店舗を重点的に工程監理しよう。
鉄骨工事は危険が多いし、思ったより手配ミス、段取りミスが多いものだ。
―――レッカーが届かない、鉄骨納期が遅れる、主要部材が前後して入って来る、搬入大型
トラックの手配が付かない、アンカーボルトがズレている、鉄骨の建て方精度が悪い―――
等もよくある話だ。
この鉄骨造というものは昔からのクセものだ。
鉄骨工事については後でまた述べよう。
毎月1日は定例の安全大会だが今月は特別な大会である。
今日は特に(20分間)も行い、大会実施状況の写真も撮った。
暑い中、ダラダラせずに各職種毎に並ばせるのも、小学校の朝礼の様に賑(にぎ)やかだ。
どうしてペチャクチャと話が出て来るものだろう。
「黙って並んでくれよ、さあ並んで、並んで……若林君ヘルメットのあご紐どこへやったの?
命綱は?……」
とF君もテキパキと動きが執(と)れる様になって来た。
私の挨拶よりも安全についての私の講釈(講演とまで行かない)が始まった。
今日は特に《足元廻りの片付け》について話をした。
3階の躯体工事を行う為に1階の支保工(材料)を3階へ転用しているので、1階は休憩所
とか資材を置く場所としても使える様になっている。
夏には弁当をここで食べるのには絶好だ。
器用な職人さんが足代板等でテーブル、長椅子を作って、各々の職種のグループが作業服を
置いたり道具を置いたりしてはいるが(掃除、片付けは俺知らん)という男衆ばかりだ。
灰皿はあるけれど煙草をついつい投げ捨てる。
ジュースの空き缶も足元に転がっている。
スポーツ紙、競馬新聞も風に舞う。
弁当屋さんから買ったおかずの残りがビニール袋に入ったままゴミ箱に入り、夜、ノラ猫に
荒らされる。
まあ、建設業を嫌う理由の5Kのうちの一つ『汚い』『臭い』の紛(まぎ)れもない事実を
認識せざるを得ないものだ。
「誰が片付けるんだ?」
と私は常日頃言っているのを今日は訴えてみた。
ゴミを跨(また)いで通るうちはまだマシだとして、足の踏み場もすぐになくなる神経は何なのだ。
「人間が歩いている時、つま先は床からどの位離れていると思いますか?」
と皆の前で聞いてみた。
「5㌢位だろう」というのが最も多かった。
「2㌢と上がっていない」と私。
「えーッ?」
「けつまずいたモノを振り返って見てごらん、桟木(27×54㍉)ですべり止めを作るけれど、
上がる時は楽だけれど降りる時は親指に神経を使うでしょ。足は殆ど上がってないんだヨ、足
元片付けがいかに大事か気にして欲しい」
と私の蘊蓄(うんちく)である。
それから《ジュースの空き缶》の問題もある。
マナーの問題だが、刑務所の時は『モラルの向上』というテーマで自作の看板迄掲げてみた
ものの、立派な看板が泣く程《空き缶拾い》を行ったものだった。
Kビルでも空き缶は相当ある。
私は現場から事務所に帰る時、空き缶が目に付いた範囲のものだけでも拾っているが、土の
う袋にすぐに一杯になってしまう。
空き缶はこれからのシーズンには悩まされる問題として、皆で取り組む(片付ける)事に
なろう。
「所長は片付け好きだねえ―――」
と蔭で言っているのが、聞こえて来る。
片付け(空き缶に限らず)の姿は皆に『印象付け』をしているつもりである。
所長が勝手に片付けてれば………とは思わないだろうから、自主性を植え付けるか、待つか
は私の行動をみて、本人達が決めてくれればいいと思う。
誰が片付け好きなものか・・・。
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