山川港へと下っていく坂の勾配はいったい何%ほどの坂なんでしょうか。しかも、ゴールまで後10㎞という一番しんどくなる場所にあるこの坂はランナーの足腰や膝にかなり大きなダメージを与えるということは、単純にこの坂だけを走って下るだけでも十分に分かるほどです。
ですが、この坂を下りきってからどれだけ自分のペースを保てるかが、この先10㎞のたたかいにとって大きな試金石であることは確かです。
ですから、浜児が水あたりからずっと抜きつ抜かれつを繰り返してきた数名のランナーたちとここサヨナラすべく、平坦になったと同時にスパート。引き離しました。そして、33㎞地点で町の中から海岸沿いの道に出ると、私の前にいるランナーたちを100人抜こうと決意。
・・・ 疲れで、数えるのが面倒になってすぐにやめましたけど(笑)。
かなり足にきているなと感じつつでしたが、走りのリズムは守れていたので、まだまだいけると確信できました。
山川駅をちょっと過ぎた所が35㎞地点。
正面には指宿フェニックスホテル前の最後の坂が見えています。この坂、菜の花マラソン参加者泣かせの坂と言われています。
そんなに急な坂ではありませんが、だらだらと約1㎞も続くのが、きつさにつながっているようです。
ここでタイムのチェックが不十分でした。私の時計は通過タイムはとれても自分の頭で計算をしないとラップは分かりません。
ただ、30㎞で計測しそこねていたので、25~35㎞のラップになります。計算してみると、58分台だということは覚えているのですが、35㎞の通過タイム自体はそのまま忘れられてしまいました。
この坂で一挙にペースを落としてしまったランナーたちをどんどん抜いていきます。
高校の頃、練習でよく走っていた坂ですが、試走の時にはここでも心が折れました。それでもリズムを保って駆け登ることができました。もちろん、最終盤だけに体の動き・呼吸もきつくなっていました。
さらに、JR指宿枕崎線の陸橋下から突然正面からの風が強くなりました。登り坂の頂点になればなるほどその風は強くなっていきました。
坂道を登り切れば、指宿市街地の眺望が一気に開けます。
今まで何十回、何百回となく見てきたこの景色ですが、登りきった喜びに浸る間もなく、下り坂に向かいます。
確か、母がこの辺りで応援に来ているはずです。
しかし、事前には膝の調子が今ひとつだから、13時頃に来れたらいい方だよと言っていたので、それより1時間ほど早く通過となれば来ているはずがありません。
母はスーパー・ニシムタ(坂の頂点のすぐ近く)のところに行くと言っていましたが、姿は見えませんでした。
間に合わなかったか・・・と思いつつ、国道から温泉街へと下るために右折です。
と・・・・・
写真左のマンションみたいな建物の入り口の近くから母が私の名前に続いて「がんばれ~」と叫びながら、路上に飛び出し、私を追いかけてきました。
今日、72歳の誕生日を迎えた年女の母がよたよたしつつ、追いかけてくるのです。
びっくりでしたが、胸が熱くなりました。
いくら年を取っても、私は子どもなんですよね。そんな母の愛をいっぱいに感じながら坂道を下りました。
これがコースで最後の下り坂です。もう、ためらうことなく下りました。
下りきり左にカーブをとりますが、そこが38㎞ポイント。ここから4㎞少々、ゴールの陸上競技場に向けて市街地をほぼ一直線になります。