元サラリーマンの植物ウォッチング第5弾。写真はクリックすると大きくなります。
多摩ニュータウン植物記Part5
キクニガナ
上柚木会館付近の民家で見掛けた「キクニガナ(菊苦菜)」。キク科キクニガナ属の多年草で、ヨーロッパ~中央アジア原産。日本には江戸時代後期に観賞用や食用として移入された。「チコリー(chicory)」とも呼ばれる。この界隈の道路の中央分離帯に生えていたという目撃情報があり、ここから逃げ出したのかも知れない。
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チドメグサ・2~果実
ウコギ科(←チドメグサ科・セリ科)チドメグサ属の「チドメグサ(血止草)」。先日の花に続いて写真は果実の様子。直径は約1ミリで扁平な円盤型をしている。
さて大場秀章編著『植物分類表』(アボック社:2009年初版)と米倉浩司著『新維管束植物分類表』(北隆館:2019年初版)では、チドメグサ属はウコギ科、ツボクサ属はセリ科に分類されているが、伊藤元己・井鷲裕司著『新しい植物分類体系 APGでみる日本の植物』(文一総合出版:2018年初版)ではチドメグサ属とツボクサ属はともにセリ科からウコギ科に移されたと記述されている。
そこで『新しい植物分類体系』の著者のひとりの井鷲裕司教授(京都大学大学院農学研究科)に直接メールでお尋ねしたところすぐに回答を頂戴したので以下に記載しておく。
<井鷲教授からのご回答の要約>
書籍や文献ごとに属が所属する科が異なる、あるいは属の有無が異なるのは分子系統学に基づくAPGのもとでも起こりうること。
被子植物の分類体系は長らくエングラー体系に基づいていたが、DNAの塩基配列情報に基づく被子植物全体の分子系統解析であるAPGが1998年に発表され、それ以降、何度かの改定を経てより信頼性の高いものになっている。
APGの分類体系は、エングラー体系とは大きく異なり、例えば、エングラー体系でユリ科、ユキノシタ科として扱われていた分類群が大分裂し、目を超えた移動があった。また、目のような大きな分類群も多数が新たに認識され、また、消えていった目や科もある。この様な変革を経て被子植物の系統に対する理解は深まってきた。
ただし分子系統解析とはいえ、魔法の手法ではなく、被子植物全体の系統関係は時間をかけて、何度かの改訂(APG (1998)、APG II(2003)、APG III(2009)、APGIV(2016))を経て明らかにされた。そのため、それぞれのバージョンで系統樹の形が異なっているところがあり、日本語の書籍でもどのバージョンに準拠しているかで記述が異なることが起こり得る。これが書籍ごとに分類群の所属が異なっている理由のひとつ。
もうひとつの理由はより本質的なもので、2016年に発表されたAPGIVでは解析が進み、被子植物全体の分子系統に関する理解はかなり固まってきた。つまり、より真実に近い系統樹が得られていると言える。
しかしながら、そのようにして得られた系統樹を用いても、分類群の所属が異なることが起こる。それは完全な系統樹のもとでも、系統樹のどの部分をひとつの科として扱うかについては、一意的に決まるものでないため。科Aと科Bか系統的に大きく離れていれば問題無いが、例えば、セリ科やウコギ科のように2つの科の差異が小さい場合には科の境界をどこに設定するか決めるのが難しく研究者によって見解が異なる。この場合、科に含まれる属が研究者ごとに異なることが起こる。またこのような2つの科をどちらも認めるべきなのか、近いのならばひとつにまとめるべきでないのか、といった疑問も生じる。
この問題は簡単に解消できるものではなく、微妙な関係にある科や属の間では今後も起こるもの。もちろん全ての科や属がこの様な状態ではないが、完全な系統関係がわかったとしても、どこまでを属や科の境界として認識するかということは、これからしばらく解決するとは思えない状態にある。このあたりの分類群はそうしたものだとの理解の上で、系統樹の形がわかった上でも、研究者の見解によって、どちらの属、あるいはどちらの科にも属しうるものだと理解されるのが良いと思う。
井鷲教授、どうも有り難うございました。
さて大場秀章編著『植物分類表』(アボック社:2009年初版)と米倉浩司著『新維管束植物分類表』(北隆館:2019年初版)では、チドメグサ属はウコギ科、ツボクサ属はセリ科に分類されているが、伊藤元己・井鷲裕司著『新しい植物分類体系 APGでみる日本の植物』(文一総合出版:2018年初版)ではチドメグサ属とツボクサ属はともにセリ科からウコギ科に移されたと記述されている。
そこで『新しい植物分類体系』の著者のひとりの井鷲裕司教授(京都大学大学院農学研究科)に直接メールでお尋ねしたところすぐに回答を頂戴したので以下に記載しておく。
<井鷲教授からのご回答の要約>
書籍や文献ごとに属が所属する科が異なる、あるいは属の有無が異なるのは分子系統学に基づくAPGのもとでも起こりうること。
被子植物の分類体系は長らくエングラー体系に基づいていたが、DNAの塩基配列情報に基づく被子植物全体の分子系統解析であるAPGが1998年に発表され、それ以降、何度かの改定を経てより信頼性の高いものになっている。
APGの分類体系は、エングラー体系とは大きく異なり、例えば、エングラー体系でユリ科、ユキノシタ科として扱われていた分類群が大分裂し、目を超えた移動があった。また、目のような大きな分類群も多数が新たに認識され、また、消えていった目や科もある。この様な変革を経て被子植物の系統に対する理解は深まってきた。
ただし分子系統解析とはいえ、魔法の手法ではなく、被子植物全体の系統関係は時間をかけて、何度かの改訂(APG (1998)、APG II(2003)、APG III(2009)、APGIV(2016))を経て明らかにされた。そのため、それぞれのバージョンで系統樹の形が異なっているところがあり、日本語の書籍でもどのバージョンに準拠しているかで記述が異なることが起こり得る。これが書籍ごとに分類群の所属が異なっている理由のひとつ。
もうひとつの理由はより本質的なもので、2016年に発表されたAPGIVでは解析が進み、被子植物全体の分子系統に関する理解はかなり固まってきた。つまり、より真実に近い系統樹が得られていると言える。
しかしながら、そのようにして得られた系統樹を用いても、分類群の所属が異なることが起こる。それは完全な系統樹のもとでも、系統樹のどの部分をひとつの科として扱うかについては、一意的に決まるものでないため。科Aと科Bか系統的に大きく離れていれば問題無いが、例えば、セリ科やウコギ科のように2つの科の差異が小さい場合には科の境界をどこに設定するか決めるのが難しく研究者によって見解が異なる。この場合、科に含まれる属が研究者ごとに異なることが起こる。またこのような2つの科をどちらも認めるべきなのか、近いのならばひとつにまとめるべきでないのか、といった疑問も生じる。
この問題は簡単に解消できるものではなく、微妙な関係にある科や属の間では今後も起こるもの。もちろん全ての科や属がこの様な状態ではないが、完全な系統関係がわかったとしても、どこまでを属や科の境界として認識するかということは、これからしばらく解決するとは思えない状態にある。このあたりの分類群はそうしたものだとの理解の上で、系統樹の形がわかった上でも、研究者の見解によって、どちらの属、あるいはどちらの科にも属しうるものだと理解されるのが良いと思う。
井鷲教授、どうも有り難うございました。
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ホドイモ・2~開花
蓮生寺公園で咲き始めた「ホドイモ(塊芋)」。マメ科ホドイモ属のつる性多年草で、夏に変わった形の花を咲かせる。ひとつの花の長さは約1センチで、写真中央の花で上部から左側に拡がっているのが旗弁。その右側にぐるりと曲がった竜骨弁がありそこから雄蕊と雌蕊が出ている。左側の花でも竜骨弁の曲がり具合がわかる。先端が紅色の部分は2つの翼弁になる。この花をようやく見つけることができたが、次は秋の果実を観察しよう。
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ヒメミカンソウ
コミカンソウ科(←トウダイグサ科)コミカンソウ属の「ヒメミカンソウ(姫蜜柑草)」。雌雄同株で葉腋に雌花と雄花が付く。花径は1~2ミリで蒴果の直径は2.5ミリほど。熟してもコミカンソウのように鮮やかなオレンジ色にはならないようだ。これは柚木街道大田平橋付近のもの。
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ハイミチヤナギ
柚木街道大田平(だいだびら)橋東交差点付近で見られる「ハイミチヤナギ(這路柳)」。タデ科ミチヤナギ属の一年草でヨーロッパ原産。世界各地に帰化しており日本でも北海道を含め全国で見られる。茎は基部から分岐して地を這い草丈は50~60センチになる。花径は5~6ミリで、花被片の中心は緑色で縁は白い。ミチヤナギと良く似ていてその違いは果実の形のようだが、これはとりあえずハイミチヤナギとしておこう。
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