堂場瞬一著のスポーツ小説を紹介します。
競泳の中でもメドレーリレーを題材とした珍しい小説です。
リオオリンピックで第4位であったリレーメンバーが、東京オリンピックでメダル獲得を目指すというものです。
内容としては、オリンピック選考会で代表になれなかった選手がいきなり日本代表コーチになったり、ゴールタッチ後に選手がプールに飛び込んだりと奇妙な部分はありますが、小説からはメドレーリレーに対する”熱い気持ち”が伝わってきます。
競泳は基本的に個人競技ですが、リレーは団体戦であり、組織の力が試されるものです。
インターハイや全国中学では学校対抗戦として、国体では都道府県対抗戦として、そしてオリンピックでは国の対抗戦としての総合力が競われるわけです。
小説を読んでいて、今まで経験した”熱い”リレーの闘いを思い起こしていました。
特に私の印象に強く残っているのは、2011年と2017年のインターハイの800mフリーリレーです。
当時、800mフリーリレーはインターハイ最終種目であり、日大豊山高校は大逆転の末に男子総合優勝を決定しました。
2つのリレーは生涯忘れえぬ記憶として私の思い出となることでしょう。
一つの目標に向かって一丸になれるというのは大変素晴らしいことです。
小説では個人種目でいまいち成績の振るわなかったメンバーが、最後のメドレーリレーにかけて引き継ぎ練習を行います。
”熱い気持ち”を見失っている人には、『水を打つ』を読むことをお勧めします。
竹村知洋