長年の蓄積という経験は、力となります。
ここでいう力とは、知恵のことです。
それが一人の経験だけではなく複数の経験者の力となることで、その知恵はより強固なものとなります。
日大豊山の伝統を支えている教えの数々は、経験から導かれています。
経験は歴史によって磨かれた知恵であるともいえます。
そのため物事に取り組む際は、経験されたことを土台としてはじめることで間違いは少なくなります。
その土台は長年にわたる先人たちの試行錯誤の結果であるからです。
私たち個人個人の思考は限られています。
どれほど勉強し、考えたことであっても所詮は個人の思考にすぎません。
先人の経験は様々な風雨に耐えてきた石垣のようなものであって、その強固さは一個の石とは比べ物になりません。
何かを変化させようという場合は、築かれたその土台の上で行うべきであると考えています。
土台そのものをすべて取り換え、変更しようということは大変危険なことです。
なぜなら一からすべてを築こうとするほど困難なものはなく、また不安定なものはないからです。
私が経験から導かれた伝統や歴史を大切にし、それをもとに水泳部を存続させようと考えているのはこのような理由からです。
歴史や伝統の重要性を主張した人物に、18世紀のイギリスの哲学者で政治家でもあるエドマンド・バークがあげられます。
エドマンド・バークの哲学については別の機会にゆずりますが、安定した国家や組織を築く上で重要な原理を示しました。
1人1人の人間は不完全であり不安定なものになりやすいわけですが、時間によって磨かれてきた先人の経験は、物事の平衡を保とうとする知恵であるとしています。
これらの教えは、その先人の知恵を探ろうという試みから生まれています。
私たちはこれらの教えを理解し、今後も受け継ぐことで安定した水泳部という組織を築くことができるはずです。
竹村知洋