「学校単位で参加する大会などの見直し」の改革の進め方に関して、次のような回答がスポーツ庁のHPに掲載されています。
「学校教育目線での体育の良さを伝えることは重要であるが、部活動はこれまでの延長線での運営が難しいことを示すことが必要ではないか」
部活動に関する今回の改革は、少子化によるスポーツ人口の減少や教員の働き方改革に対応するにはこれまでの部活動のあり方では難しい時代がきたので、「運動部活動の地域移行」を図ろうというものです。
この改革により教員の負担が大幅に減少することは間違いありません。
しかし改革の実施後に予想できることは、学校から運動部が大幅に減少するということです。
特に水泳部(競泳)は全国的に激減し、水泳部に所属する生徒も減少することでしょう。
その理由は、全国大会に出場するほとんどの選手はスイミングクラブで練習をしており、全国中学やインターハイにスイミングクラブ所属で出場できるということになれば、学校の水泳部に所属する必要がなくなるからです。
学校も大会に出たければスイミングクラブに行くことを生徒に勧めるようになるかも知れません。
学校の先生が大会の申し込みをしたり、大会の引率をするという負担もなくなるからです。
そしておそらく2023年の全国中学校では、ほぼすべての出場選手がスイミングクラブ所属で出場することになるでしょう。
またリレーもスイミングクラブで編成することになれば、大会参加の制限タイムがJO並に大幅に上がることになると思われます。
文部科学省やスポーツ庁は民間クラブから大会に参加できることを推進することでスポーツ人口を広げたいということですが、水泳(競泳)に関してはその限りではありません。
なぜなら競泳は現在でも1人の選手が2つの選手登録をすることができるので、大抵の選手は学校とスイミングクラブの両方で選手登録をしているからです。
学校の大会は学校名で、スイミングクラブの大会はスイミングクラブ名で大会に出場しており、最近は両方の登録を併記するという制度もできました。
もともとスイミングクラブで練習している選手が全国中学校に出場していますので、大会に参加する選手が増加することは考えられません。
それどころか学校から水泳部がなくなることで、都道府県大会などの地方大会の出場者はむしろ減少することが予想されます。
学校の水泳部にはスイミングクラブに通っておらず、春から夏にかけて部活動として学校のプールで練習している生徒もいますが、水泳部自体がなくなってしまえばそういう生徒の居場所がなくなります。
地方大会の場合、出場制限タイムはかなり低く設定されており、練習をする環境が整っていなくてもそれなりの泳力であれば参加できるという利点がありますが、いつかスイミングクラブに通わなければ水泳大会に出られないという事態になるかもしれません。
泳ぐことが速くなくても水泳が好きな生徒はたくさんおり、日大豊山水泳部にも泳げないから泳げるようになりたいという動機で入部してくる生徒もいます。
学校の水泳部であればそれほどの金銭的な負担もなく、生徒も時間のゆとりをもって水泳を楽しむことができるはずです。
部活動がなくなることで教員の負担は減るかもしれませんが、保護者や生徒の負担は増加することも予想されます。
スイミングクラブに通うとなれば月謝が必要になりますし、生徒が選手コースで練習する時間は大抵18:00以降になるはずです。
学校であれば放課後すぐに練習ができますので、その頃には練習が終わっています。
日大豊山水泳部の練習時間は、Aチームでも月~金は18:00~18:30、土は17:00、日曜日は休みです。
平日でも家族と夕食を共にし、日曜日はしっかりと休むことができ、学習時間も確保されています。
保護者のなかには学校のクラブ活動に期待をされているという方も多いのではないでしょうか。
水泳に当てはめて考えると、今回の改革はメリットよりもデメリットの方が多いのではないかと感じています。
「これまでの延長戦」での部活動運営が難しいということは事実だと思いますが、結果的にスポーツ人口が減り、保護者や生徒の負担が増すような改革になってしまうかもしれません。
何とか知恵を絞り、学校の部活動とスイミングクラブが両立できる良い方策はないものでしょうか。
懐かしい旧校舎です。
竹村知洋