夏の訪れとともに脳裏によみがえる遠い日の思い出は
子供の頃、中庭に面した縁側で兄と冷えたスイカを食べた事
母がカットしたスイカの真っ赤な果肉は、目にも鮮やかだった
甘くてジューシーで、一口食べるたびに心が満たされた
「種を飲み込むと盲腸になる」の言葉を信じて
口の中をもごもごさせて、ぎこちなく赤い実と種を分けた
「種を遠く飛ばすと、来年は庭に芽が出てくるよ」を信じて
大きく息を吸い込み頬を膨らませては「ピュッ」と庭に飛ばした
どちらが遠くまで飛ばせるか、兄と競争しながら食べたひと時
冷えたスイカの味は最高で、兄弟で競うようにむしゃぶりついた
種にまつわる話は、大きくなって初めて都市伝説だと知った
刻む想いは時を超え、娘と実家に帰省した時にその話をした
陽だまりの縁側で、心を通わせるきっかけをつくって笑い合った
耳を傾けながら、美味しそうにスイカをほおばる娘の笑顔
スイカの香りに心が揺れて、この上もない幸せを感じた
※慕嬢詩(ボジョウシ)=亡くした娘を慕う気持を綴った詩・文。私の創作語。
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