チカン

　お客のKさんが少し酔って店に来た。

　私　「赤い顔をして…、ちょっと酔うてるなあ」
　お客「ミナミで飲んで来てん」
　私　「Kさんは好きモンやから、おさわりバーに行ってきたんと違うの？」
　お客「そんなとこは行ってへんで」
　私　「Kさんにしたら珍しいなあ」
　お客「まあ、スキを見て女の子に触ったけどな」
　私　「電車の中でやろ」
　お客「店の女の子や。電車の中やったら痴漢になるやん」
　私　「店の子を触ってもそう問題にならんけど、話を電車の中に変えた方がネタになるやろ」
　お客「そうか、ブログのネタにしょう思てんねんやろ」
　私　「そうや、ネタの為に話を置き換える。これが本当のチカン(置換)行為や」
　お客「しょーもな、気が抜けるわ。気持ちがチカン(弛緩)するわ」

　一句：ネタの為　痴漢の話に　置換する

運転とは

　お客さんの知り合いが飲酒運転で捕まったとか。

　私　「飲酒検問で捕まったんか？」
　お客「いや違う、パトカーや」
　私　「飲酒運転は蛇行運転で分かるからなあ。その点、電車は蛇行運転せーへんなあ」
　お客「ホンマや、レールの上に乗ってるから絶対に蛇行はせーへんわなあ」
　私　「飲酒はアカンけど、みんな結構交通違反してるで。捕まったのは運が悪いだけや」
　お客「いや、交通違反は犯罪や、運が悪いでは済まされへんで」
　私　「そやけど、車は運で走ってるみたいなもんやで」
　お客「どういう事や？」
　私　「運を転がしてるから運転て言うんや」
　お客「なる程。妙に納得させられるなあ」
　私　「因みに自転車はペダルを踏んで転がすから“ふんころがし”や」
　お客「なんや、虫みたいやなあ」

　一句：運転は　自己の注意で　事故回避

寒のもどり

　この間まで暖かかったのに昨日あたりから寒さがぶり返した。雨のせいか今朝は少し冷え込むが、春の到来が感じられる今日この頃。

　私「この間まで暖かかったのに、また寒なってきたなあ」
　妻「寒のもどりやなあ」
　私「えっ、菅野みどり？菅野みほの母親？」
　妻「誰が、菅野みどりて言うたん。寒のもどりや」
　私「ああ、寒のもどりかいな。聞き違えたら、あかんのう」
　妻「せっかく部屋が暖房で暖かなった言うのに、しょうもないギャグでまた寒なってきたわ」

　一句：じじギャグと　寒のもどりで　寒い部屋

小籔千豊君来訪

　今日は雨の中、昼過ぎにABC『今ちゃんの実は…』の新企画のイベント用の収録に吉本新喜劇の小籔千豊君がスタッフ4人を引き連れて店に来た。
　私はスナック芸を披露してから、「以前、『今ちゃんの実は…』に出演してからの反応は？」等のインタビューを受けた。
　そして最後にタキシード姿の小藪君が改まった顔つきになり白い封書を私に手渡した。私は封を開けて書面に目を通した。
　「これまでの皆様のご活躍に感謝の意を表し心ばかりのイベントをご用意させて頂きました。ご多様中誠に恐縮ではございますが、ぜひ、ご出席下さいますようお願い申し上げます・・・『今ちゃんの実は…』一同」と印刷した招待状だった。
　どちらかというと目立ちたがり屋の私、「うん、いいねいいね」と招待状を読み進みながら心を躍らせた。そして、最後の行で目が点になった。
　「やること　ローション・プロレス」と書いてあった。裸になりローションを塗ってプロレスをするらしい。
　「ローション・プレイやったら、したいけど…」「いえ、それは実費で(ファッションマッサージへ)行って下さい」「裸になるんやろ。抵抗を感じるなあ」「来てくれますか、どうしますか？」「ろーしょんか、(どうしようか)迷ってんねん」
　出演したい気持ちは五分五分、今ここでは詳しくは書けませんが後日放送日をお知らせします。

　一句：目立ちたい　でも恥ずかしい　アラ還の春

自殺未遂

　女性客のAさんが腕に包帯を巻いていたので尋ねたら、以前、落ち込んでいた時にリストカットをしたとか。お連れの男性Bさんと自殺未遂の話になった。

　私 「現代はストレス社会やから、精神的に病んでる人が増えて自殺する人も多いなあ」
　客A「私もあの頃は鬱(ウツ)で落ち込んでたから…」
　客B「そうそう、年間、3万人以上も自殺する人がいてるんやてなあ」
　客A「昔、中森明菜が近藤真彦の部屋でカミソリで腕を切って自殺未遂した事があったね」
　私 「マッチ(近藤真彦)の部屋やから、マッチガイを犯したのかな」
　客B「自殺未遂は服薬とかカミソリで手首を切るのが多いなあ」
　私 「俺も自殺未遂になるんかなあ。この前、カミソリで…」
　客B「えっ、カミソリで？」
　私 「ヒゲを剃った」
　客B「なんのこっちゃ」

　一句：追い詰められ　社会の犠牲で　自殺未遂

電話番号

　女性を見るとやたら電話番号を聞きたがる輩がいる。当店に始めて来たのに、居合わせた女性客ににじり寄り電話番号を聞いた。

　男性客「お姉ちゃん、可愛いなあ。この近く？」
　私　　「家を聞いてどないするのん？」
　男性客「いや、何処かで見たような気がして…」
　私　　「うまい事言うて近づこ思て」
　女性客「私、住んでんのんは遠い所やから、会う事は無いと思うよ」
　男性客「そんなん言わんと電話番号を教えてーや」
　女性客「しゃーないなあ。イチイチマルや～、いつでもかけてきて～」
　私　　「１１０番かいな、こらオモロイわ。ストーカーで捕まえてくれるわ」

　一句：ストーカーを　気がきく機転で　撃退や

ストリップ

　慰安旅行の話からストリップの話になった。

　私 「昔、会社の慰安旅行に行った時、旅館の宴会でストリップ・ショーがあってん」
　客A「へえ、それで踊り子さん、よかったか？」
　私 「それがやなあ、おばちゃんやったから面白なかったわ」
　客A「なんや、おばちゃんかいな。そら、残念やったね」
　私 「宴会が終わってから、先輩に口直しやと近くのストリップ小屋に連れて行かれてん」
　客A「そうかいな、エエ先輩やなあ。エエはからいをしてくれて、良かったやん」
　私 「さっきと違(チゴ)て照明設備が違う！妖しくセクシーな振り付けで踊り子が登場や！」
　客A「ほう、エエやんエエやん。そら目の保養になったやろな」
　私 「それが、目の保養になるかいな」
　客A「なんでや、別のストリップ小屋に行ったんやろ？」
　私 「なんでもくそも、その踊り子、さっきの宴会場のおばちゃんやってん」
　客A「そら、面白い話やけど、(行った人は)面白ないなあ」
　客B「俺、田舎のストリップに行ったら、さっき入り口で券を切ってたおばちゃんやったわ」
　客A「なんや、人手不足かいな」
　客B「それも次の日、朝市に行ったら野菜売ってたで」
　私 「その踊り子、野菜を売ってただけに大根役者やなあ」

　一句：はがされる　ローカル・ストリップの　裏事情

しあわせになろうよ

　女性のお客さんが長渕剛の“しあわせになろうよ”を唄った。

　私　「エエ歌やね」
　お客「私、以前にこの曲を唄った時に、女の人に泣きながら抱きつかれてん」
　私　「俺、その光景見た見た。そやから俺もそれをねろて、この間唄(ウト)うたんや」
　お客「どうやった？」
　私　「男の客が『エエ歌やねえ』言うてハグしてきたわ」
　お客「きしょー！！(気持ち悪い)」
　私　「嫁はんに白い目で見られるし、“しあわせになろうよ”を唄(ウト)うて、不しあわせになったわ」

　一句：好きな曲　唄ってしあわせ　呼びこみたい

ホット・ウィスキーの温度

　いつもホット・ウィスキーを注文するお客さんが来た。最近、暖かくなってきたのでレンジのタイマーを冬場より少なめに設定し温めて提供した。

　私 「ホットの温度、丁度やろ?」
　客A「そうやなあ」
　私 「外気の温度とかお客さんの調子を見て、レンジをこの間より20秒、少なしてん」
　客A「エエ恰好言うて。電気代、節約しただけやろ」
　私 「素直じゃないなあ。この間は熱いてヤカラ言うし今日は配慮したら電気代節約て…」
　客A「まあ、そんな気ぃ悪しなや」
　私 「気ぃ悪しなて、ヒトの好意にケチつけられたら誰でも気ぃ悪するで」
　客A「そこまで怒る事か？」
　私 「痛いとこ突くからや」
　客A「ほんだら、やっぱり電気代節約してんねんやん！」

　一句：温度設定　ホットな論戦　春の陣

ショック！

　月曜日の朝、ジムに行くと会員さんが「太極拳、無くなったなあ」と声をかけてきた。
　壁に貼ってあるプログラム表を見ると、3月から新しいプログラムが組まれていて太極拳の教室が消滅していた。
　私は腰の不調で今年は一度も太極拳教室に参加していなかったので辞めたのを知らなかった。
　1月中旬に太極拳1級の検定を受けたが体調不良と練習不足が重なり残念ながらスベった。
　8月には万全の態勢で再度チャレンジするために今月から受けようと思っていた矢先だけに戸惑いと共にショックを受けた。

　一句：目標の　足元すくわれ　ショック受け