晴耕雨読ときどき・・・

超初心者のガーデニング。北海道の山野草の庭。

太陽は気を失う The sun also falls into a faint 乙川優三郎

2024-12-15 09:46:35 | 図書室

「ロゴスの市」に続いて、乙川優三郎の現代物。

図書館の棚で見かけて、短編なので読みやすいかなと。

14のそれぞれの人生。

太陽は気を失う

震災で被害を受けた常磐線のふるさとの町。亡くなった同級生は障害を持っていた。私は、夫と離婚し、介護が必要な母と暮らし始めた。あの日の午後、太陽は気を失ったような気がする・・・・

海にたどりつけない川

死病を得て、かつて結ばれなかった恋人のその後を訪ねる。場末のバーを娘と営んでいたが、持っていった小切手は破り捨てた・・・

がらくたを整理して

旅行会社を夫と営んでいたが、夫は不誠実な男で・・・がらくたとして整理して新しい人と始めることにする。

坂道はおしまい

夫は亡くなり、苦労して夫の家業のハゼ釣りの浮子づくりを継いできた。2回の離婚歴がある同級生が寄ってきて・・・・

考えるのもつらいことだけど

翻訳で細々と生活している。友だちはアメリカ人と結婚してUSAに暮らしているが、乳癌と闘っている。そして、私にも乳癌が見つかった。帰国した友だちと温泉へ行くが・・・・

日曜に戻るから

定年し田舎暮らしを始めた。奥さんはそれを嫌って着いてこなかった。散歩では詩を書くご婦人と言葉を交わすが・・・・

悲しみがたくさん

売れない絵描き。妻と暮らす高齢者向け住宅で舞台女優と出会い、肖像を描くようになるが、彼女の人生を知り最期を見送ることになり、自分たち夫婦は海外へ向かうことを決める。

髪の中の宝石

新橋芸者の生き残り。パトロンの旦那は家だけを残してこの世を去り、友人も病に倒れ、それでも・・・・

誰にも分からない理由で

帰国して出た叔父の法事。作業場でもあった古い家も訪れる。家業は木釘づくりであった。叔父の息子は叔父に似ていない。美しい叔母は木釘づくりを跡継いでいるが・・・・

まだ夜は長い

退職して仕事に替わる生きがいを探す男。友人の画家の個展を訪ねる。自分には何もない。バーで酔い潰れるが妻が迎えに来てくれる。

ろくに味わいもしないで

地方を廻るジャズシンガー。音楽学校時代からの友人は離婚し、その資産で一緒に店をやることになる。

さいげつ

旅行会社に勤めて働いてきた。恋人にプロポーズされたが、実家の事情で一緒にメキシコへ行くことなどできなかった。彼のこどもを産み、また旅行業界で働く。新しい人にプロポーズされアメリカで暮らすことになり、ビザ申請に大使館を訪れるときかつての恋人に遭遇する。

単なる人生の素人

官僚として生きてきた男、天下りで巨額の資産を得た。上司の紹介で得た美しい妻とは意思の疎通はない。愛人も彼から離れていく。それに腹を立てているとき、妻も海外での慈善事業のために去っていく。

人生の意味を失い、どこで間違えたかもわからない。これからの日々が侘しく、恐ろしい。

夕暮れから

料亭に嫁ぎ女将として働いているが、時勢は料亭や芸者の需要はなくなっている。父の葬儀からもトンボ返りする。夕暮れから気合いを入れてお座敷にまた集中する。

           ー

幸せな結婚生活も、充実した職業人生も、小説の題材にはなりにくいのだろう。

分かれた男と女。うまく行かない仕事。それでも人生は続いていく。残り少なくても。

           ー

それぞれに心を揺すられる話だが、短編集の弱み。

ひとつひとつの話は記憶に残りにくい。

で、記憶のよすがに書き留めてみた。

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