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クリエイト速読スクールブログ
なおしのお薦め本(80)『山とお化けと自然界』
クリエイト速読スクール文演第1期生の小川なおしさんから、お薦め本が届いています。
軽いエッセイを集めた文庫本です。まず、文庫版あとがきから一部を引用します。
「九月で私は六十七歳になった。内容は以前とちっとも変っていないつもりなのだが、この数字は私に恐怖に近いものを押しつけてくる。私の父、兄(島崎敏樹のほう)、愛情こめて見ていてくれた石垣純二さんなどよりも年輩の域に入ってしまっている。
この年齢あたりになると、うら若いころがますますなつかしくなるものらしく、すべての段階でのクラス会に集まってくる人が多くなり、私もなんとかやりくりをして出席しようと努める。
ただしどこか何となく違和感があって、無心にワーッと騒げない部分が何割かを占め続ける。全面的に友人の会話にとけ込めないのだ。
どうしても自分の生存の場、状況を土台にして語りあうことになるので、孫の話、病気、入れ歯を落っことした、老眼鏡がどうだ、なんてことが主な話題となり、私が口をさしはさむスキなどほとんどない。
子供を否定してしまった私には孫などいるはずもなく、どこといって痛いところもなく、歯はずいぶん欠け落ちたが入れ歯はなく、視力は道具の助けをかりずに今のところソコソコに見えているし、という具合。
そんな場で、どこの探検登山をやったの、これからやるだの、言えたものじゃない。バカにされるかひがまれるか、とにかく浮き上がってしまうにちがいない。
今までもずっとそうだったが、もうこれからはイヤなことはできるだけやらないようにし、やりたいことだけを集中してやり終えてしまおうと心に決めている。知りたいこと、勉強したいことはトコトンの最後までやって、死ぬ直前になんだって勉強なんかするんだ? ムダじゃないかと言われたって、やりたいからするんだ、でいいじゃないか。
私のやりたいこと、それは今までやりたくてやってきたことと何らちがうところはないようだ。
探検、探検登山、人類初滑降コース山岳スキー、湿原と池塘さがし、野生動植物と原始人とのつき合い、作曲、指揮、重唱、油絵かき、ファンタスティックSF書き、気分のいい人と楽しくつき合う、妙なものがありそうだったら、それがなんであろうと首をつっこむ。
エッセイスト、モノ書きはどうした? それは好きの部類じゃないから入れない。惰性で、頼まれて、仕方がないから書くというていどのものだ。ナンダ、といわれてもそうなんだからしようがない。」
こういう人が書いた、山の話、お化け(今どきで言えばスピリチュアルな)話、生き物の話です。お化け話が面白いのですが、今の時期には向いていないので、生き物の話を紹介します。クモマツマキチョウという題名のエッセイからどうぞ。
「私にとっての久恋ともいえるチョウはクモマツマキチョウであった。この日本では、間もなく絶滅しかねない宿命的な弱さを持っているために、その姿のひよわな美しさがより頼りないものとなる。
絶滅の前に、このチョウが日本の山を背景にして飛ぶさまをひと目でいいから見たいものだと思いながら、生息地といわれる地に発生時期に合わせて何回も足を向けたけれども、なぜか出会う機会がいちどもなかった。
もう十年以上も前だったか、虫がきらい故に虫には目ざとい妻をつれて五月の上高地に、クモマツマキチョウを求める旅をした。
日本山岳会の山荘を守る老爺は、むかし使ったヨレヨレの捕虫網を奥からひっぱり出して、柄もなしで何十匹となくこれで捕ったものだと語った。
このじじいが絶滅を一歩早める努力に加担したなと思えば、今は好々爺に見えるその顔も、恋人を苦しめた悪魔のなれのはてと感じられてきて、すぎ去ったこととして許す気にはなかなかなれそうもない。
ちかごろはとんと見かけないなあ、という言葉尻には、見つけたら天然記念物であろうと無意識に手が動いてしまうだろうことを白状するものがあった。」
こんな表現の仕方があるのか、と読んで舌を巻いた次第です。 なおし
―なおしのメール―
松田さん、こんばんは。
久しぶりのオススメ本です。
「41歳寿命説」で有名な人なのですが、今までノーマークでした。
軽いエッセイばかりですが、なにか覚悟のようなものをあちこちで感じさせてくれます。文章もとてもうまいと思うのですが、どこがどううまいのか、私には説明できません。とにかく、こんなふうに書けたらさぞかし楽しかろうと思いました。
それではまた。
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の部分、詳しく知りたいです……
それと、そのくらいの年齢になるとクラス会に集まってくる人が多くなるというのは興味津々です。
(全体的に観点が違いますね)
明日から心機一転です。
これまでありがとうございました。
あ、待ってください。まだ去りませんので。
今後のペースはわかりませんが、これからも読み続けたいと思いますので、今後もどうぞよろしくお願いいたします。