昨日、空手の突き、と蹴り、の事を少し書いたが、もう少し書いておこう。空手の突き、や蹴りは、曲げた膝や肘を伸ばす動作なのである。ではなぜ、それが出来ないか。人間は誰しも日常生活に必要な動作は出来る。これを当たり前と思ってしまっていて、そんなのはスポーツでも何でもなく、運動神経など必要のない、誰にだって出来る動作だと思っている人もいる。しかし、それは誤りである。幼児から成長するにつれ、訓練して身につけた動作なのである。例などいくらでもある。日本人にとって箸を使う事は誰にでも出来るが、アメリカ人は箸は使えないから、使えるようになるためには大人になってから練習しなくてはならない。また誰にでも利き手があるから、利き手で、書いたり、箸を使ったりする事は出来るが、利き手でない方の手で字を書くことは極めて困難であり、相当の練習をしなくては出来るようにならない。運動にも難度の高いのと簡単なのがある。これは差別なんて低次元の話ではなく、区別である。車の運転は簡単である。老人でも運転できる。なぜ車の運転が簡単かというと、車というものは人間の日常の動作だけで操作できるように配慮して作られているからである。では空手の突き、や、蹴りの場合。人間は肘や膝を伸ばすという運動は日常生活の中でいくらでもある。むしろ、肘や膝を伸ばさなかったら一日たりとも生活できない。しかしである。日常で肘を伸ばす運動(つまり手を動かす運動)というのはそのほとんどが物を目で見ながら何か物をつかむ、という動作なのである。そのためには、たとえ早くつかむにせよ、目的物に的確に手を伸ばすという調節された手の運動が必要なのである。そのため、目的物にまで手が届かなかったり、目的物を越えて遠くに手が行き過ぎたりしないように、絶えず伸筋と屈筋の両方が働いている動作をしているのである。だから人間はスポーツでも目的物に向かって手を伸ばす、伸筋と屈筋の両方を働かす運動は出来やすいのである。これは足の運動でも同じである。しかし空手の突き、や、蹴りの場合、突く時は伸筋だけを働かせているのであるから、空突き、や、空蹴りでは、反復練習によって、肘や膝を伸ばす時に同時に働いてしまっている屈筋を働かせないようにする、という訓練をしているのである。
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