小説家、精神科医、空手家、浅野浩二のブログ

小説家、精神科医、空手家の浅野浩二が小説、医療、病気、文学論、日常の雑感について書きます。

協力出版物語(小説)(下)

2024-09-24 11:00:16 | 小説
(2)

由美子は目を覚ました。
見知らぬ、どこかの部屋の一室だった。
見知らぬ大勢の男たちが、由美子を取り囲んでタバコを吹かしながら、ニヤニヤ由美子に視線を向けていた。
「ここはどこ?あなた達は一体、誰なのですか?」
由美子は回りの男たちを見まわしながら、おびえながら言った。
「何処だと思う?」
一人の男が、薄ら笑いを浮かべながら由美子をからかうように聞いた。
「わ、わかりません。教えて下さい」
由美子は高まってくる心臓の鼓動を感じながら聞いた。
「ふふふ。教えてやろう。ここは東京の文興社の本社の社長室さ」
男はふてぶてしい口調で言った。
「な、なぜ私が東京の文興社の本社に居るのですか?」
由美子の不安は募っていき、得体の知れない恐怖から、その声は震えていた。
由美子には、さっぱり訳が分からなかった。
由美子の記憶にあるのは、北海道の自宅にいた時、給湯器が故障して修理の人が来てくれて給湯器を交換してくれた時のことが、記憶している直近のことだった。
心の優しい由美子は、修理人に、「お疲れでしょう。お茶とお菓子を召し上がって下さい」と言って、盆の茶と和菓子を載せて、修理人の前に置いたのである。
修理人は、「これはこれは、どうも有難うございます」と言って、由美子の差し出した茶を飲んだ。修理人は茶を飲み終わると、素早い手つきで、サッと懐からタオルを取り出して由美子の口に当てた。「な、何をするんですか?」庭師の、いきなりの訳の分からない行為に対して大声を出したのが、由美子が覚えている最後の記憶だった。その後、由美子は気を失ってしまったのである。
それが、どうして今、自分が東京の新宿の文興社の本社に居るのか、由美子には、さっぱりわからなかった。
「ふふふ。教えてやろう。確かにあの給湯器は20年前に設置された物だが、まだ使えたんだ。しかし、わざと故障させて使えなくしたんだよ。そして、あの給湯器の修理人に100万円と引き換えに、ある仕事を頼んだのさ。給湯器の取り付けの、合間に、お前の口をタオルで塞げと。あのタオルにはクロロホルムがたっぷり沁み込んでいたのさ。我が社の社員が3人、車でお前の家の近くに、ひかえていたのさ。眠ってしまったお前を、車に乗せ、北海道から青函トンネルを抜け、東北自動車道を走らせて、お前をここまで連れてきたってわけさ」
男は勝ち誇ったように言った。
「な、何でそんなことをしたのですか。これは犯罪ですよ。私は警察に訴えます」
由美子は男たちをにらみつけて激しい口調で言った。
「何でそんなことをするのですか、だとよ。トロい女だな。そんなこともわからないのか?」
男が言うと、皆が、わっははは、と嘲るように笑った。
「本当にお前を拉致した理由が分からないのか?」
男が念を押して確かめるように聞いた。
「わ、わかりません」
由美子は堂々と言った。
「トロい女だな。じゃあ教えてやるぜ。お前は我が社に何をした?」
男は余裕の口調で、口元を歪めながら言った。
「な、何って何でしょうか、私は何も違法なことはしていません」
由美子はキッパリと言った。
「ふざけるんじゃないよ。お前はブログやJANJAN記事で、さんざん、我が社の信用を落としてきたじゃねえか」
男は怒鳴りつけるように言った。
男は続けて言った。
「お前が2007年にブログを始めて、我が社を批判する記事を書くようになってから、我が社に送られて来る原稿が、それまでの1/3までに減ってしまったんだ。全部お前のせいだ。お前は自分のしたことが、とんでもない営業妨害の名誉棄損だということが、わからないのか?」
男は怒鳴りつけるように言った。
それは違います、と由美子は言った。
「た、確かに私は、2007年にブログを始めて、文興社に対して批判的な記事を書いてきました。しかし私は、事実を調べて事実を書いてきただけです。公共の福祉に反していませんから、私の書いてきた記事は、営業妨害でも名誉棄損でもありません」
由美子はキッパリと言った。
「ふざけんじゃねえ」
窓際に居た別の男が怒鳴りつけた。
「何が営業妨害でも名誉棄損ないだ。これは立派な営業妨害だ」
男は口角泡を飛ばして言った。
「そうだ。そうだ。これは営業妨害、名誉棄損いがいの何物でもないぞ」
男はドスの効いた声で恫喝的に言った。
その場に居合わせた、みな、男と同じことを唱和した。
由美子は文興社の無法な態度に驚いた。
「と、ところで、なぜ私にクロロホルムを嗅がせたり、意識のない私を車で輸送したりしたのですか。これこそ完全な犯罪ですよ」
由美子は理路整然とした態度で言った。
「その理由がわからねーか?」
男が由美子を小ばかにするような口調で言った。
「わかりません」
由美子はキッパリと言った。
「やれやれ。トロい女だな。わからねーなら教えてやるよ。我が社に対する、お前の営業妨害、名誉棄損のオトシマエをつけさせるためさ。俺たちに詫びを入れさせるためさ」
ここに至って、由美子は文興社のアクドサに気づいた。
「あなた達は卑劣です。あなた達のしていることは犯罪です」
由美子はキッパリと言った。
「わかってねーな。俺たちは法を守ろう、なんて気持ちはカケラも持ち合わせていないんだぜ」
男は堂々と言った。
「卑劣です。あなた達は卑劣です」
由美子は腹から声を振り絞って立て続けに叫んだ。
しかし、文興社の社員たちは、由美子の訴えなど、どこ吹く風といった様子だった。
「おい。この女の詫び、まず何からする?」
男が皆を見回して言った。
「決まってんだろ。今まで散々、煮え湯を飲まされてきたんだ。まず素っ裸になって、オレ達の前で裸踊りをしてもらおうじゃねえか」
一人の男が言うと他の男たちも、おう、そうだそうだ、と言い囃した。
裸踊りと聞いて、咄嗟にそのイメージが由美子の頭に映って、由美子はぞっとして全身に鳥肌が立った。
「おう。由美子。まず着ている服を全部、脱いで、素っ裸になりな」
男が恫喝的な口調で言った。
「ほら。早く脱げ」
皆が囃し立てた。
「嫌です。そんなこと。あなた達は人間としての良心というものは無いのですか」
由美子は目を吊り上げて言った。
「強情な女だ。自分で脱ぐのが嫌というのならオレ達が脱がすまでだぞ」
一人の男が言った。
「それが嫌ならオレ達でお前を素っ裸にして浣腸するぞ」
別の男が言った。
一人の男が大きな、1000mlのガラス製浣腸器と、ぬるま湯で満たされた大きな洗面器を由美子の前に置いた。
「ふふふ。この洗面器には1リットルのグリセリンが入っているぜ。お前が自分で服を脱がない、というのなら、お前を俺たちが脱がせ、後ろ手に縛り、四つん這いのポーズにして、こいつを全部、お前の尻の穴に注ぎ込んでやる」
「ふふふ。1リットル全部、注ぎ込んでやる。そしてトイレには行かせないぜ。お前は便を排泄したい苦しい欲求に耐えるか、オレ達の前で、クソを大量にぶちまける、かのどっちかだ。お前が苦しみ、のたうち回る姿、そしてクソをぶちまける姿、をしっかりビデオに撮ってやる」
男たちが由美子に、そんな脅しをした。
由美子は、なかなか決断がつかなかった。
悪魔たちは実際、それをやるだろう。
由美子は、ぞっとしてすくんでしまった。
由美子は眉を寄せて、渋面で悩んでいた。
由美子は今まで、夫いがいの男に体を見られたことは一度もない。
その由美子が迷う姿を見るのも、悪魔たちにとっては、この上ない楽しみだった。
健全で自然や動物を愛する由美子にとってSМプレイなどというものは、訳の分からない、頭のおかしな人間のする行為としか思えなかった。
由美子も子供の頃、便秘になったことがあり、自分で浣腸した経験はあった。
誰に見られているわけでもなく、イチジク浣腸、1本だったが、尻の穴に、プスッとイチジク浣腸の茎を差し込む恥ずかしさ、そして液体を注ぎ込む恥ずかしさ、そして苦しい便意が起こってきた経験はしているので、浣腸の苦しさは知っている。衆人環視の中、四つん這いにされ、大きな浣腸器で浣腸され、悶え苦しんだ挙句、一気に便を排泄するのを見られ、さらに、それをビデオで撮影される恥ずかしさには、とても耐えられなかった。
しかも文興社の悪質商法をブログ記事で批判してきた、その社員たちの前で裸になることなど屈辱の極みだった。
「ふふふ。脱がないというのなら浣腸だな」
そう言って、決断できず迷っている由美子に男たちが近づいてきた。
「ま、待って」
由美子が制した。
男たちの足がピタリと止まった。
「どうした?」
男たちは、せせら笑って立ち止まった。
「ぬ、脱ぎます」
由美子は、とうとう観念して、顔を真っ赤にして、小さな声で言った。
由美子は今まで手厳しく文興社批判のブログ記事を書いてきた。
社長の瓜谷綱延にまで公開質問状を送りもした。
当然、由美子は、文興社は自分のことを快く思っていなく、目障り極まりない存在と思っていることは容易に推測できた。文興社と由美子は敵対関係だった。
由美子は、文興社に騙されて、法外な金を払って、文興社から著者として本を出版した被害者ではない。なので文興社に恨みはない。協力出版と銘打って、著者を心地の良い言葉でおだて、本の制作費用といって儲けるアクドイ商法の犠牲者を無くしたいという、正義感から文興社批判の記事を書いてきたのである。版権が文興社にあるから、契約を交わして金を受けとったら、もう文興社は、著者の本を裁断処分しようが、どうしようが一向に構わないのである。
むしろ、文興社は月に500冊も協力出版本を出版するので、倉庫代がかさみ、そしてそもそもプロ作家でない無名の一般人の本など、売れないのである。なので、宣伝など全くせず、宣伝は自分でやれ、それで、友人、親戚、知人なと数人は買うだろう。あとは、倉庫代がかさむから、裁断処分にする、というのが、文興社商法なのである。由美子は文興社に騙されそうになった時、真っ先に考えたのは、この悪質商法での被害者を無くさなくては、という強い正義感であり、悪質商法に騙されて泣いている著者たちに対する憐憫、慈愛の念であり、これ以上、文興社の悪質商法に騙される被害者を出してはならない、という強い正義感だった。
しかし由美子は、天使のように心が優しいので、悪を憎んで人を憎まず、であり、文興社を憎んではいなかった。しかし文興社の社員たちは、良心のカケラも持ち合わせていない外道の集まりだったのである。そのため、由美子のブログには、文興社からの嫌がらせのコメントが、多く書き込まれた。さらに柴田晴郎などという、実名の人間を使って由美子に、散々な嫌がらせ、をしたのである。
由美子は膨大な時間と手間をかけて、それらの嫌がらせに対応した。
そういう辛抱強さも由美子は持っていた。
しかし由美子は人間を信じていた。
どんなに文興社が自分を嫌っていても、文興社も言論には言論で対応してくるだろうと確信していたのである。
しかし現実は違った。ことを由美子は今、思い知らされた。
文興社は犯罪をも何とも思わない、無法者の集団だったのである。
「ほら。由美子。脱ぐ、と言っただろう。早くとっとと服を脱げ」
男が吐き捨てるように言った。
「ほら。早く脱ぎな。脱がないと、オレ達が強引に脱がして、浣腸するぞ」
グリセリン液のたっぷり入った浣腸器を持っていた男が、立ち上がって由美子に近づいてきた。
「わ、わかりました。ぬ、脱ぎます」
由美子は声を震わせながら言った。
由美子は横座りしたまま、着ていたジャケットを、手をブルブル震わせながら、取った。
これで由美子は、ロングスカートに、白いシャツという姿となった。
シャツの下には、豊満な乳房を納めたブラジャーの輪郭が、クッキリと見えた。
二つの大きな果実を納めたブラジャーは内側から白いシャツを力強く押し上げて、シャツに二つの仲良く並んだ、こんもりとした盛り上がりを形作っていた。
「おおー。すげー、おっぱいじゃねえか」
男たちは、思わずゴクリと唾を呑み込んだ。
中には、もうすでに、股間がテントを張っている者もいた。
「おい。シャツも脱いで、スカートも脱ぐんだ」
男が言った。
由美子は、ワナワナと手を震わせながら、シャツのボタンを上から外していった。
シャツの内側からは、胸の上に仲良く並んで、張りついている二つの乳房を、窮屈そうに納めて、形よく盛り上がっている、白いブラジャーの二つの膨らみが、顕わになった。
「おい。由美子。シャツをとれ。そしてスカートも降ろせ」
男が言った。
由美子は今にも泣き出しそうな、哀愁のある憂いの表情で、シャツを腕から抜きとって外した。そして、中腰になり、スカートのホックを外し、スカート下げて、足から抜きとった。
悪魔どもの命令には逆らえないと覚悟が出来ていたのである。
スカートを降ろしたことによって、ムッチリとした、大きな尻の肉を納めて、股間に貼りついている、由美子の白いパンティーが露わになった。
由美子はスカートを抜きとると、必死で両手で胸の膨らみを押さえながら、ペタンと座り込んでしまった。
由美子は今にも泣き出しそうな感じだった。
無理もない。
今まで、散々、強気にブログ記事で批判してきた文興社の男たちに、乳房と尻の肉を覆い隠すだけの下着姿で取り囲まれているのである。
どうして、こんな屈辱にか弱い女の精神が耐えられよう。
しかし、男たちは、そんな由美子の心を見透かしているかの如く、ことさら意地悪く、ニヤニヤと、ピッチリと閉じ合わせた由美子の体に、いやらしい視線を向けている。
「ふふふ。どうだ。由美子。今の気持ちは?」
ポタリ。
由美子の目から、キラリと光る一筋の涙が頬を伝わって流れた。
「おい。由美子。こんなことで泣くくらいなら、女の分際で、オレ達に戦いを挑もうなんて考えるんじゃねーよ」
「お前もバカなヤツだぜ。女のクセにオレ達をコケにしよう、なんて大それた事をするから、こんなザマになるんだぜ」
悪魔たちは、由美子を徹底的に貶めるような言葉を吐きかけた。
由美子は、太腿をピッチリと閉じ、両手で胸の膨らみをヒシッと覆うことによって、狂せんばかりの屈辱に耐えた。
普通の女なら、とっくに泣き崩れていただろう。
人並みはずれた強靭な精神の由美子だから、こんな屈辱にも、かろうじて耐えれたのである。
しばしの時間が流れた。
由美子は、この屈辱的な姿を見られることで、悪魔たちの、復讐の炎が消え、彼らの溜飲が下がることを、祈るように期待した。
しかし事態はそうは動かなかった。
「おい。由美子。座ってじっとしていないで、立ち上がれ。お前の下着の立ち姿を見せろ」
男の一人が言った。
「由美子。さあ。立ちな。下着を着ているから恥ずかしくはないだろう」
「お前の立ち姿を見たら、予定していた、裸踊りは勘弁してやるぜ」
最後の発言が由美子の心を動かした。
下着姿を見ることで、彼らの溜飲が下がるのなら・・・
自分の下着姿を見ることで彼らが満足するのなら・・・
そう思って、由美子は、横座りから、ゆっくりと立ち上がった。
ヒシッと胸の二つの膨らみを覆っている白いブラジャーを覆い隠していた両手の一方を、パンティーの谷間に当てた。
それでも恥肉を納めて盛り上がっている女の部分であるビーナスの丘は隠しきれなかったが。
由美子は片手で胸の膨らみを覆い、片手で恥部を覆った。
それは、ボッティチェリのビーナスの誕生の図だった。
由美子の白いパンティーと白いブラジャーだけの下着姿は美しかった。
華奢な肩、細い腕、見事にくびれた腰。その割には、豊満な胸の膨らみと、大きな尻、それに続く大きな太腿。まさに理想のプロポーションであり、グラビアアイドルとして、週刊誌の表紙を飾っても何ら不思議ではなかった。
下着姿を見られることは恥ずかしかったが、下着姿はビキニと同じように、女の恥ずかしい所を隠している。
由美子は、彼らが自分の下着姿を見ることで、彼らの溜飲が下がって、解放されるのなら、それに甘んじよう、と思った。
彼らの視線は女の恥肉を納めて、こんもりと盛り上がっている、ビーナスの丘に集中していた。
「おお。何て美しい体つきだ」
「何て大きな尻なんだ」
「何て大きな太腿なんだ。しがみついて頬ずりしたいな」
男たちの発言は、由美子をおとしめ、嘲笑するものから、由美子の肉体美を賛美するものに変わっていた。
無理もない。
由美子は大学1年の夏、友達に誘われて、海水浴場に行ったことがあるが、その時、由美子は友達が選んでくれた、ビキニを着て、浜辺の出た経験があるのだが、由美子は海水浴場にいる男たち全員の激しい、食い入るように向けられた視線を痛いほど感じたのである。
「おー。ハクイ女」
「女優かグラビアアイドルじゃねーか」
という声も聞こえてきた。
由美子は恥ずかしくなって、友人の手をヒシッと掴んで、友人に頼んで、ビーチの端の方の、人があまりいない所にビニールシートを敷いてもらって、日光浴をした経験があるのだが、海水浴場の男たち全員の視線は由美子に集まっていた。
由美子がビキニを着て、衆人の前に、ビキニに覆われているとはいえ裸同然の体を晒すのは、恥ずかしいくはあったが、自分の肉体が、海水浴場の男たちを惹きつけていることに、ほの甘い、心地よい快感が起こっていたことも事実だった。
今、由美子はそれと同じ気分だった。
男たちに取り囲まれて、下着姿をまじまじと見られているのは屈辱とはいえ、それで彼らが満足して、それで放免されるのなら、それもよかろう、という気持ちに由美子は変わっていたのである。
しばしの沈黙の時間が経った。
(さあ。私の下着姿を見ることで満足できるのなら、見るがいいわ)
由美子は、そんな優越感に浸っていた。
しかし、この後のストーリーは、由美子の予想していた展開にはならなかった。
由美子の背後にいた文興社の社員が二人、由美子に気づかれないよう、抜き足差し足で由美子に近づいてきたのである。
由美子はそれに気づいていない。
男の一人が、素早く由美子のブラジャーのホックをプチンと外してしまったのである。
豊満な由美子の乳房を包んでいた、ブラジャーがその弾力を失って、一気に収縮した。
そして男はブラジャーの肩紐を肩から外してしまった。
肩紐はブラジャーを由美子の体に取りつけている機能を失って、肘の辺りに、だらしなく、引っ掛かっているだけの状態になった。
「ああっ。な、何をするの?」
由美子は思わず、大声で叫んだ。
由美子は、何とかブラジャーが落ちてしまわないように、必死で両手でブラジャーを押さえた。
と、その時。
由美子の背後に居た、もう一人の男が、素早く、由美子のパンティーを掴んで、一気に、サーと引き下げてしまったのである。
「ああっ」
由美子は、こういう時には女は誰でもするように、反射的に両手でアソコを隠した。
男の一人は、由美子の肘が伸びたのをいいことに、由美子のブラジャーの肩紐を由美子の腕から抜きとってしまった。
もう一人の男は、由美子のパンティーを足首まで引き下げ、足首を持ち上げて、足から抜きとってしまった。
一瞬のことだった。
これで由美子はブラジャーもパンティーもむしり取られて、一糸まとわぬ丸裸になってしまった。
由美子は乳房とアソコを手で隠しながら、クナクナと座り込んでしまった。
「あっははは」
部屋にいる男たち全員が嘲笑した。
「卑劣だわ。あなた達は卑劣だわ」
由美子は涙まじりに言った。
「ふふふ。由美子。セクシーな下着姿をオレ達に見せつけて、いい気になっていたようだが、残念だったな」
男が言った。
「ふふふ。由美子。たかが下着の立ち姿を見ただけで、お前のしてきた営業妨害をチャラにしてやろう、なんてオレ達が思うわけがねえんだよ」
「ふふふ。最初っから、こういうふうに、お前に期待をもたせて、いい気持ちにさせておいて、そして、貶めてやろう、という計画を立てていたのさ」
悪魔たちは、そう言って、あっははは、と哄笑した。
由美子は文興社の社員たちの、卑劣さを、あらためて実感した。
もう由美子は文興社の社員たちの言う事を絶対、信じない確信をもった。
由美子からブラジャーとパンティーをとった男は、由美子のパンティーを調べ出した。
パンティーを裏返して、体に触れている面を出した。
パンティーのクロッチ部分には、うっすらと黄色がかった一条の線の跡が見えた。
男は由美子のパンティーを、突きつけるように差し出して、
「おい。由美子。この染みは何だ?」
と聞いた。
由美子は、それを見ると真っ赤になった。
「おい。由美子。この染みは何だ、と聞いているんだ」
由美子が答えないので男は再度、恫喝的な口調で聞いた。
しかし由美子は答えられない。当然である。花も恥じらう乙女の由美子に、そんなことを答えられるはずがない。答えられないことを知った上で、悪魔どもは由美子に意地の悪い質問をしているのである。
由美子は顔を真っ赤にして俯いている。
「やれやれ。オレ達に戦いを挑もうという、のなら、パンティーにオシッコの跡なんて、つけちゃいけねーぜ。子供じゃねーんだから」
男はそんな揶揄をした。
由美子は真っ赤になった。
「どれ、匂いを嗅いでみるか。勇ましい女戦士のパンティーの匂いを」
そう言って男は由美子のパンティーの染みのついたクロッチ部分に鼻先を近づけた。
「や、やめてー」
黙っていた由美子が、羞恥心に耐えきれず、叫んだ。
しかし悪魔たちは、由美子の叫びなど、どこ吹く風と聞く耳など持たない。
悪魔たちは、ニヤニヤ笑いながら、裏返した由美子のパンティーの染みのついたクロッチ部分に鼻先を当てた。
そしてクンクンと鼻をヒクつかせた。
「おおー。スルメに酢を混ぜたようなニオイがするぜ」
男はことさら由美子を貶めるように、大きな声で言った。
「女はマンコの中までは洗わないんだよ。何故だか知っているか?」
隣にいた文興社の社員が聞いた。
「知らなかった。なぜ洗わないんだ?」
悪魔男が聞き返した。
「女の膣内にはデーデルライン桿菌という菌があってな。それがグリコーゲンから乳酸を作っているんだよ。そのため膣内がpHが5.0くらいに保たれていて、それが雑菌の侵入を防いでいるんだよ。それが膣や子宮を雑菌から守っているんだよ。だから女は膣の中までは決して洗わないんだよ」
男が説明した。
「ふーん。そうだったのか。知らなかったぜ。男は、毎日、包皮を剝いて亀頭についた恥垢をちゃんと洗って清潔にしているというのにな。女って不潔なんだな」
悪魔たちは感心したように言った。
そして、なぜ由美子がパンティーを嗅がれそうになった時、声に出して嫌がったかを理解した。
「おい。オレにもパンティーの匂いを嗅がせてくれよ」
「オレにも」
「オレにも」
男たちが騒めき始めた。
「おい。由美子。パンティーを返してほしいか?」
男が聞いた。
「か、返して下さい」
由美子は泣きじゃくりながら言った。
「だったら、ここまで取りに来な」
そう言って男は由美子のパンティーをつまんだ手を由美子の方に伸ばした。
パンティーは男の手から、物憂げにダランと垂れていた。
由美子は、乳房とアソコを手で隠しながら、ゆっくりと立ち上がり、ヨロヨロと覚束ない足取りで、男の方に歩み寄った。
その時、反対側にいた男が、「おい。オレにも由美子のパンティーの匂いを嗅がせてくれよ」と言った。
由美子は男の持っている自分のパンティーをとろうと手を伸ばした。
すると男はサッと手を引っ込めた。
「ああっ」
由美子はパンティーを取れず困惑した。
「ふふふ。あいつがお前のパンティーの匂いを嗅ぎたいと言っているんだ。残念だったな」
と男はふてぶてしい口調で言った。
男は由美子のパンティーをクシャクシャと丸め、ほーらよ、と言って、反対側の男に投げた。
小さく丸まった由美子のパンティーは部屋の中の宙を飛び、反対側の男の手にキャッチされた。
パンティーを受けとった男は、由美子のパンティーの染みのついたクロッチ部分に鼻先を当てた。
そしてクンクンと鼻をヒクつかせた。
「おおー。本当だ。スルメに酢を混ぜたようなニオイがするぜ」
男はことさら由美子を貶めるように、大きな声で言った。
そしてパンティーを投げた男と同様に、
「おい。由美子。パンティーを返してやるぜ。オレはウソは言わない。だから、ここまで取りに来な」
そう言って、男は由美子のパンティーをつまんだ手を由美子の方に伸ばした。
由美子は頭の中がグチャグチャになってしまっていて、もう正常な判断力が無くなっていた。
そのため、「返して下さい」と言ってヨロヨロと覚束ない足取りで、男の方に歩み寄った。
その時、別の所にいた男が、「おい。オレにも由美子のパンティーの匂いを嗅がせてくれよ」と言った。
男は由美子のパンティーをクシャクシャと丸め、ほーらよ、と言って、反対側の男に投げた。
小さく丸まった由美子のパンティーは部屋の中の宙を飛び、反対側の男の手にキャッチされた。
パンティーを受けとった男は、由美子のパンティーの染みのついたクロッチ部分に鼻先を当てた。
ここに至って由美子は悪魔たちは、パンティーを返す気などないのだ、ということを100%確信した。
「うわーん」
由美子は泣きながら、床の上に座り込んでしまった。
由美子のパンティーのパス回しが部屋にいる文興社の社員たち全員に行われた。
男たちは、パンティーを受けとると、
「うわー。本当だ。オシッコの跡がついているよ」
と言ったり、クロッチ部分に鼻を当てて、パンティーの匂いを嗅いで、
「うわー。本当だ。スルメに酢を混ぜたようなニオイがするぜ」
と言ったりした。
由美子にとってこれ以上の屈辱はなかった。
毅然とした態度で堂々と文興社を批判するブログ記事を書いてきた由美子。
文興社の反論や嫌がらせは覚悟していた、由美子だっだが、まさか、こんな非道な犯罪までするとは思っていなかったのである。
しかし悪魔どもは人間なら必ず持っているはずの良心というものを、完全に捨て去っていたのである。
「おい。由美子。お前は、こんな臭いパンティーを履きながら、オレたちを批難していたのか。恥ずかしくないのか」
などと、由美子を揶揄した。
「ふふふ。裸になったくらいで、オトシマエがついたなどと、甘ったれたことを思うなよ。お前の記事のおかげで、投稿者が1/3に減ってしまったんだ。年間の損失額は低く見積もってみても、10億だ」
「おい。由美子。オレ達をコケにした詫びを言え」
男たちは恫喝的な口調で言った。
しかし由美子に答えられるはずがない。
由美子は正当な批判記事を書いてきただけであって、悪いのは詐欺的商法をしている文興社の方なのだから。
しかし無法者どもに、そんなことは通用しない。
黙っている由美子に、男の一人が一枚の紙を放り投げた。
「おい。由美子。どうしても詫びを言わないというのなら、ここに書いてある文を読め。土下座してな」
男は恫喝的な口調で言った。
由美子はおそるおそる、その紙を開いてみた。
それは全身の毛穴から血が噴き出るかと思うほど、の屈辱的な文章だったからだ。
・・・・・・・・・・・・・
それには、こう書かれてあった。
「私、松田ゆみこは女の分際で違法なことは全くしていない文興社様をさんざん、誹謗中傷、営業妨害してきました。しかし、それが全くの誤りだと気づきました。私は自分の浅はかなワガママから文興社様に10億円の損害を出してしまいました。これは死んでも許されることではありません。私はこれから文興社様の奴隷として、文興社様の命じることには全て従います。まずは文興社の方々に私の裸踊りを見せることで、私の償いの始まりにしたいと思います。どうぞ、たっぷり私の裸踊りをご覧ください」
紙には、こう書かれてあった。
何という強悪な人間たちだろうと由美子は思った。
文興社の悪魔たちはクロロホルムを嗅がせて、車に乗せて拉致して文興社本社に連れ込み、その上、由美子を一糸まとわぬ丸裸にして、その姿で、屈辱的な詫びを言わせようというのだ。
由美子は一瞬、舌を噛んで死のうかと思った。
その思いは、どんとん募っていき、由美子は舌を歯で挟んで死ぬ用意をした。
もう由美子には死ぬ覚悟が出来ていた。
しかし人間が死ぬ間際には、これまで生きてきた中の様々なことが、一瞬の内に頭に浮かんでくるものである。
死を覚悟した由美子にも、それが起こっていた。
学生時代の楽しかった思い出。
文興社に父の原稿を送って騙されたこと。
ブログを始め、文興社と戦おうと思い決めて、文興社批判の記事を書き出した時のこと。
それらが走馬灯のように、由美子の頭をよぎっていった。
それらの思い出の中で、由美子の父親の姿が一際、明瞭に浮かび上がった。
由美子が物心がついた時から優しく、時には、厳しく、由美子を可愛がり、色々なことを教えてくれた父。由美子の苦手な数学を何時間もかけて教えてくれた父。
自然の美しさ、そして人の命の尊さを教えてくれた父。
由美子は父を世界一尊敬していた。
その父が末期ガンになって入院し死ぬ間際に言った言葉が明瞭に思い出されてきたのである。
余命、一カ月と告げられて以来、由美子は病院に泊まり込みで父を看病した。
「お父さん。死なないで」
病院のベッドに酸素マスクと点滴をつけられ、血圧が低下してきた父は、遺言として、由美子にこう言ったのである。
「ゆ、由美子。世の中で一番、大切なものが二つある。それが何だかわかるか?」
由美子は即座には答えられなかった。
なので父親がすぐに、その答えを言った。
「由美子。それは人の命だ。そして正義だ。この二つが人間にとって一番、大切なものだ。この二つは決して捨ててはならない。由美子。お前はこの二つを決して捨ててはならない。他人の命を大切にし、そして自分の命も大切にしろ。たとえ、どんなに苦しい過酷な目にあっても、決して死んではならない。わかったな」
「わかったわ。お父さん」
その言葉を最期に父は死んだのである。
由美子は、うわーん、と洪水のように溢れ出る涙を流して泣きながら、いつまでも死んだ父にすがりついて泣いた。
その言葉が明瞭に浮かんできたのである。
そして由美子は、今、その意味に隠された真意を理解させられた思いがした。
正義感の強い、由美子の父は、由美子がブログで文興社を批判する記事を書き出したのを止めなかった。由美子の正義感の強さも父親ゆずりなのである。
由美子は今、はっきりと悟った。
世間そして人間というものを知っていた父。
人間の善も悪も知っていた父。
一人の人間が巨大な悪の組織に戦いを挑めば、こういう事になることを父は予見していたのだ。
由美子は文興社批判の記事を書いている由美子を黙って、止めなかった父の言葉の真意を理解した。
由美子に父と交わした約束を守らねば、という思いが込み上げてきた。
死を覚悟したことで、かえって、生きることへの、ゆるぎない決意が由美子に起こった。
どんな生き恥を晒しても生きねば。
どんな屈辱にも耐えなくては。
(お父さん。私、負けないわ)
由美子は心の中で、そう呟いた。
由美子は四つん這いになった。
そして、頭を床につけて土下座した。
そして紙に書いてある文を読んだ。
「私、松田ゆみこは女の分際で違法なことは全くしていない文興社様をさんざん、誹謗中傷、営業妨害してきました。しかし、それが全くの誤りだと気づきました。私は自分の浅はかなワガママから文興社様に10億円の損害を出してしまいました。これは死んでも許されることではありません。私はこれから文興社様の奴隷として、文興社様の命じることには全て従います。まずは文興社の方々に私の裸踊りを見せることで、私の償いの始まりにしたいと思います。どうぞ、たっぷり私の裸踊りをご覧ください」
あっははは、と文興社の悪魔たちは哄笑した。
何という人間たちなのだろう。
自分は文興社に騙された被害者ではないのに、文興社の詐欺商法を知ったことで、これ以上、文興社に騙される被害者をなくそう、という正義感からブログ記事で実名で文興社を批判する記事を書いてきた由美子。その由美子にクロロホルムを嗅がせて、眠らせ、車に乗せて、北海道から文興社本部に連れ込んで、丸裸にして、その上、社員みなの前で、土下座させて、詫びを言わせるとは。
しかし良心を持ち合わせていない悪魔たちには、それは通用しないことだった。
「おい。由美子。裸踊りをすると言ったんだ。立って裸踊りをしろ」
男が言った。
由美子は立ち上がった。
そしてフラダンスを踊り始めた。
由美子の関心は、自然や生物、蜘蛛、社会問題などであって、おおよそ由美子は子供の頃から運動やスポーツは苦手で興味なかった。
しかし由美子は、日本蜘蛛学会の会員であり、そこで吉田順子という会員と親しくなった。
吉田順子はフラダンスをしていて、由美子にフラダンスをやってみない、と誘ったのである。
運動神経のニブい由美子にフラダンスなど興味なかったが、友達のよしみで一度、フラダンス教室に出てみたのである。
吉田順子に勧められてフラダンスを踊ってみると、これが結構、腰を使った全身運動になることがわかって、健康にも良く、由美子はフラダンス教室に通い続けることになったのである。運動神経はニブいが何事にも熱心な由美子の性格のため、由美子はフラダンスの基本をマスターしてしまった。
フラダンスは、ハワイの伝統的な歌舞音曲で、最初は男が踊っていたのだが、いつの間にか女の踊りとなった。ゆったりとした足の運び、繊細な手の動き、腰を振る踊りであり、ラフィアスカートを履いていても、腰の動きが男を悩殺するほど、美しく、男を魅惑する踊りだった。
もちろんフラダンスはブラジャーとラフィアスカートを履いて踊るものだが、今の由美子は、一糸まとわぬ丸裸である。
顕わになった豊満な由美子の乳房が揺れ、腰のくねりが悪魔たちを悩殺した。
悪魔たちは、
「ははは。どうだ。由美子。オレ達に逆らうヤツはこういう羽目になるのさ」
「もっと色っぽく腰を振れ」
などと由美子をおとしめる揶揄の言葉を吐いた。
(お父さん。私、負けないわ)
由美子は、どんなに苦しい逆境におちいっても生き抜くと、父の今際の時に誓った約束を心の中で唱えながら、一心にフラダンスを踊った。
約1時間くらい踊り続けた。
由美子は、汗だくになって、息もハアハアと荒くなって、とうとう倒れ伏してしまった。
「おい。由美子。これで放免と思ったら大間違いだからな」
悪魔たちは、そう言って、由美子の前にノートパソコンを置いた。
「おい。由美子。さぽろぐのブログと、ここログのブログに出している、148の文興社批判のブログ記事を全部、削除しろ。それと24のJANJAN記事もだ。それと、excieブログに作った共同出版・自費出版の被害をなくす会もだ」
ああ。何ということをする人間たちなのだろう。
文興社に騙されてはおらず金銭的被害は受けてはいないのに、文興社の悪質な詐欺まがいの商法を知り、これ以上、泣き寝入りする著者が出ないよう、そして文興社と著者との間でトラブルが起こらないようにと、貴重な時間を割いて、ブログ記事によって世間に文興社の行っている商法を正確に述べているだけだというのに。
悪魔どもは、それらのブログ記事を全部、消せ、というのだ。
ブログのログインパスワードは由美子しか知らないから、これは由美子にしか出来ない。
由美子はノートパソコンの電源を入れ、ログインIDとログインパスワードでさぽろぐブログにログインした。
そして、涙をハラハラと流しながら、今まで書いてきた、148もの文興社批判のブログ記事を削除していった。
由美子にとっては耐えがたいことだっだが「嫌です」と言っても、悪魔たちは暴力を振るって由美子を拷問にかけ、パスワードを聞き出すことは明白だったからだ。
さぽろぐの148の文興社批判の記事を全部、削除すると、次は、ここログの148の文興社批判のブログ記事を削除した。そして次は、JANJAN記事を削除し、次に、excieブログの「共同出版・自費出版の被害をなくす会」のブログも消した。
これによって、由美子が書いてきた、文興社批判の記事は完全に無くなってしまった。
由美子の目からは涙がとめどなく流れ続けた。
しかし悪魔たちは、もっと酷いことしか考えていなかった。
「おい。由美子。ブログに新しい記事を書け。記事のタイトルと文はここに書いてある」
そう言って文興社の悪魔たちは、由美子に紙切れを渡した。
タイトルは「文興社に対するお詫び」だった。
それにはこう書かれてあった。
「私、松田由美子は浅はかな勘違いから、見当違いの文興社批判の記事を148も書いてきました。しかし文興社は違法なことはしていません。企業が利益を追求することは当たり前のことです。私は、今まで、そんなことも分からないで文興社を批判してきました。私は今、心より自分のしてきた間違った、文興社に対する名誉棄損、営業妨害を後悔しています。私は今後、一切、文興社に対する記事は書きません」
ああ。何ということだろう。
文興社の悪魔たちは、由美子の文興社批判の記事を削除させるだけではなく、詫びの文章まで書かせようというのだ。
由美子は切れ長の美しい目から、ハラハラと涙を流しながら、渡されたメモに書いてある文章を入力していった。
「文興社に対するお詫び」というタイトルで。
「私、松田由美子は浅はかな勘違いから、見当違いの文興社批判の記事を148も書いてきました。しかし文興社は違法なことはしていません。企業が利益を追求することは当たり前のことです。私は、今まで、そんなことも分からないで文興社を批判してきました。私は今、心より自分のしてきた間違った、文興社に対する名誉棄損、営業妨害を後悔しています。私は今後、一切、文興社に対する記事は書きません」
と書いた。
「ふふふ。ざまあみろ。これで我が社は安全だ。お前のように我が社を本気で批判してくるヤツはもういないだろう。これで我が社は永遠に安全だ」
あっははは、と悪魔たちは笑った。
「ふふふ。由美子。これで済んだと思うなよ。お前のおかげで、我が社は10億の損失をこうむったんだ。それに、記事を削除したとはいえ、多くの人がお前の記事を読んで、我が社を疑うようになったからな。お前の我が社に対する批判記事をワードにコピペして保存しているヤツもいるだろう。それに、ネットで我が社を批判するヤツを説得する役の柴田晴郎も使えなくなってしまったからな」
「おい。由美子。お前はさっき(私はこれから文興社様の奴隷として、文興社様の命じることには全て従います。まずは文興社の方々に私の裸踊りを見せることで、私の償いの始まりにしたいと思います。どうぞ、たっぷり私の裸踊りをご覧ください)と言ったな。じゃあ、さっそくもう一度、裸踊りをしろ」
男が恫喝的な口調で言った。
何という極悪非道の集団なのだろう。
卑劣にも、自分を拉致監禁して、北海道の家から東京の文興社の本部に連れてきて、丸裸にして、詫びを言わせ、148の文興社批判のブログ記事、および、JANJAN記事を削除させ、(私が間違っていました)という文興社に対する謝罪記事をブログに書かせた、憎みても余りある文興社。
それでも、まだ気が済まず、由美子をとことん嬲ろうというのだ。
通常の人間なら精神がおかしくなってしまうだろう。
しかし、由美子の強靭な精神力が、由美子を発狂から守っていた。
しかし、由美子はどうしても裸踊りをする気にはなれなかった。
なので、乳房とアソコをヒッシと手で隠して、微動だにせず、じっとしていた。
由美子の気持ちを察してか、男が由美子に、ある発言をした。
「おい。由美子。お前も一糸まとわぬ丸裸の裸踊りはつらいだろう。オレ達にも人の情けはある。パンティーとブラジャーは返してやるから、それを身につけて、さっきのようにフラダンスをしろ」
そう言って男が由美子の前に、純白のブラジャーとパンティーを放り投げた。
由美子は堅苦しいほど誠実な性格なので、たとえ相手に力づくで言わされたとはいえ、相手の暴力に屈してしまったのは、自分の意志であり、自分の意志で言った以上、約束は守らなければいけない、という健気な信念も由美子の心の中にはあった。
(パンティーとブラジャーを着けていれば地獄の屈辱にも何とか耐えられるわ)
由美子は急いで立ち上がり、まずは右足にパンティーを通し、そして次に左足にパンティーを通した。そしてスルスルとパンティーを腰の位置まで引き上げていきパンティーを完全に履いた。
これでアソコと尻は隠された。
次に由美子はブラジャーに両腕を通して、手を背中に回して背中のホックをした。
これで二つの乳房はブラジャーの中に納まった。
その滑稽な仕草に、男たちは、あっはは、と腹をかかえて笑った。
由美子は、たとえ力づくでも、自分が約束したことは守らねば、という健気な信念から、立ち上がった。
「おい。由美子。情けで下着を身につけることを許してやったんだ。これで恥ずかしくないだろう。さあ。とっとと色っぽく腰を振って踊れ」
口惜しいが確かに彼らの言う通り、一糸まとわぬ丸裸での裸踊りは屈辱だったが、女の恥ずかしい所をしっかり隠している下着を身につけているのなら、まだ何とか耐えられた。
由美子は、またフラダンスを踊り出した。
由美子は腰をくねらせ、全身をゆったりとくねらせながら、フラダンスを踊った。
その、ゆったりとした動きは、この世のものとは思えないほど美しかった。
(パンティーとブラジャーがしっかりと私の体を覆い隠してくれている)
さっきの一糸まとわぬ丸裸の屈辱の裸踊りに比べれば、そして、その屈辱的な裸踊りをしてしまった後では、パンティーとブラジャーをしっかりと身につけて踊るフラダンスでは、屈辱感は軽減されていた。
由美子は精一杯のサービス精神をもって、一心不乱にフラダンスを踊った。
もう由美子は観客を楽しませることだけを考えているフラダンサーになりきっていた。
こうやって彼らを満足させてやれば、彼らも情にほだされて、拉致監禁したことを反省して、自分を文興社本部の部屋から解放してくれることを期待した。
そうすれば北海道の自宅へ戻れる。
(さあ。私のフラダンスをうんと鑑賞するがいいわ)
由美子はそう思いながら一心不乱にフラダンスを踊った。
文興社の社員たちも、みな黙って、誰も、由美子をおとしめる発言をする者はなく、由美子のフラダンスを心地よく鑑賞しているように、由美子には思われた。
実際、文興社の社員たちは、由美子のフラダンスに、ただただ酔い痴れているような態度だった。
由美子の念頭には文興社が自社の悪質商法を反省し、拉致監禁したことを反省し、(由美子さん。すまなかった。私たちが悪かった)と言って、全員が由美子の前に身を投げたしてくることを期待をした。
しばしの時間が経った。
由美子もフラダンスを踊り続けることに酩酊していた。
その一瞬の隙である。
文興社の社員が、一人、優雅にフラダンスを踊っている由美子に、そっと背後から忍び寄った。
彼は優雅に踊っている由美子に気づかれないよう、ハサミで由美子のパンティーの両サイドをプチン、プチンと切ってしまった。
パンティーは、由美子の腰に貼りついている機能を失って、前も後ろもダランとめくれ、そのまま床に落ちてしまった。
そして彼は、間髪を入れず、由美子のブラジャーの背中のホックの所と、両方の肩紐の所も、ハサミで、プチン、プチンと切ってしまった。
ブラジャーも由美子の胸に貼りついている機能を失って、スルリと床に落ちてしまった。
「いや―」
不意のことに、由美子はアソコを両手で隠し、ペタンと座り込んでしまった。
「あっははは」
男たちは、ここぞとばかりに腹をかかえて笑った。
「おい。由美子。お前はオレ達がお前に見とれていて、お前の健気な心情に同情して、踊りが終わったら、お前に謝罪するとでも思っていたのだろう。バカなヤツだ。お前に見とれていた態度は、あらかじめ計画しておいたお芝居だ。お前に少し希望の光を与えておいて、そして、お前を地獄に突き落とすのが最初からの狙いだったのさ」
男の一人がタバコをくゆらせて、せせら笑いながら言った。
由美子の前にある純白のパンティーとブラジャー。
それは、もう体に貼りついておく機能を失って、何の役にも立たない物でしかなくなっていた。
「おい。由美子。踊りを続けろ。もう、踊りは終わりにしてやる、とは言ってないぜ」
悪魔の一人が吐き捨てるように言った。
しかし由美子は立てなかった。
極度の絶望感と、今度は丸裸を晒して、悪魔どもの前で踊らなくてはならないかと思うと、どうしても立てなかった。
「おい。由美子。立て。裸が恥ずかしいというのなら、恥ずかしい所を隠す物をやるぜ」
そう言ってポイ、ポイ、と小さい物を由美子の前に放り投げた。
由美子は、それを見て真っ赤になった。
それはピンク色の小さな♡型のニプレスだった。
3つある。
「おい。由美子。そのニプレスを恥ずかしい所に着けな。そうすれば恥ずかしい所は隠せるぜ」
「おい。由美子。ニプレスの裏にシールが貼ってあるだろう。それを剥がしな。そこには接着剤がついているから、体に貼れば、外れることはないぜ。恥ずかしい所は隠せるぜ」
男たちは吐き捨てるように言った。
そう言われても由美子は、すぐに彼らの言うことを聞くことは出来なかった。
ニプレスは確かに乳首やアソコに貼って、女の恥ずかしい所を隠すものではあるが、それはストリップショーで着けて、女の方から男たちに、挑発的なセックスアピールをするための物である。
小さな、申し訳程度のニプレスをつけたところで、体全体として見れば、裸とほとんど変わりはない。むしろ全裸よりも、男たちの性欲を掻き立てる効果もある。
見れそうだけれど、見れないことがエロティシズムなのである。
そんな恥ずかしい物をつけさせて踊らせようとは。
由美子は悪魔たちの、執拗な嫌がらせに辟易していた。
「おい。由美子。ニプレスをつけるのか、つけないのか、どっちだ?」
男が恫喝的な口調で怒鳴りつけた。
「ニプレスをつけたくないなら、つけなくてもいいぜ。それなら全裸で踊りな」
別の男が吐き捨てるように言った。
そう言われても由美子は、どうしてもニプレスをつける気にはならなかった。
一人の男が、ツカツカと躊躇している由美子の前に歩み寄ってきた。
「そうか。ニプレスはつけたくない、というんだな」
そう言って男は、由美子の前にある、3つのニプレスを取り上げようと手を伸ばした。
その時である。
「ま、待って」
由美子は男にニプレスを取られる前に、3つのニプレスに手を伸ばして、ひったくるように掴みとった。
確かに、ニプレスはストリップショーで女の方から男たちに、挑発的なセックスアピールをするための物である。
しかし女の恥ずかしい所をギリギリに隠せる物でもあるのだ。
「そうか。ニプレスをつけるというんだな。なら早くつけろ」
男が言った。
悪魔たちは、ニプレスをつけるかどうかを由美子の判断に任せて、その決断を由美子にさせることで、由美子の狼狽する様子を楽しもうというのだ。
ここに至って由美子は、悪魔たちのヘビのような執拗さに気づかされた。
しばし迷ったが由美子は決断した。
相手は人間の良心というものを持たない悪魔たちである。
いうことを聞かなければ間違いなく、もっと酷い仕打ちをするだろう。
由美子は小さな♡型のニプレスをアソコと乳首につけた。
確かに、ニプレスの裏のシールを外すと、そこには、ネバネバした接着剤がついていて、両乳首とアソコにつけると、ニプレスは由美子の体にピタリと貼りついた。
由美子は立ち上がって、さっきと同じようにフラダンスを踊った。
両乳首とアソコをギリギリにかろうじて隠しているだけの小さな♡型のニプレスをつけている姿は全裸と変わりなく、いや全裸以上にエロチックだった。
それは悪魔たちの性欲を激しく刺激した。
悪魔たちは、激しい興奮のあまり、ハアハアと息を荒くしながら、勃起した股間をズボンを上からさすって由美子の踊りを見た。
30分くらいした。
もう日が沈んで夜中になっていた。
「よし。今日はこのくらいにしておこう。明日からも、うんと楽しめるからな」
悪魔たちの一人が言った。
「そうだな」
皆が賛同した。
「よし。じゃあ、こいつを地下室に連れていけ」
由美子は文興社の社員二人に腕をつかまれて、エレベーターで文興社のビルの地下室に連れて行かれた。
地下室にはゴリラが飼えるほどの大きな檻があった。
「さあ。入りな」
と言われて由美子は檻の中に入った。
「ふふふ。これはお前を飼うために買った檻さ。お前は死ぬまでこの檻の中で暮らすんだ」
そう言って二人の男は去って行った。
由美子は途方にくれた。
自分は一体どうなってしまうのか?
このまま悪魔たちに弄ばれて殺されてしまうのだろうか?
発狂しそうなほどの激しい不安が由美子に襲いかかった。

(3)

「うわー」
由美子は目を覚ました。
全身が汗びっしょりだった。
呼吸もハアハアと荒かった。
「松田さん。どうしたんですか。給湯器の交換は終わりましたよ。何だかひどくうなされていたようですけれど悪い夢でも見ていたんですか?」
修理人がニコニコ笑いながら聞いた。
由美子は咄嗟にスマートフォンを見た。
2010年7月7日の午後5時だった。
(はあ。夢だったのか。私は恐ろしい夢を見ていたのね。夢でよかったわ)
由美子はほっと一安心した。
「給湯器の交換をして下さって有難うございました」
由美子は修理人に礼を言って代金を払った。
・・・・・・・・・・・・
それからも由美子はブログで文興社の批判記事を書き続けた。
しかし柴田晴郎が文興社の関係者であることがわかり、文興社から柴田晴郎に関する記事を削除するように、さぽろぐが言ってきた。
削除しなければ、さぽろぐでの記事の投稿は禁止する、と言ってきたのである。
文興社が強権的にさぽろぐに圧力をかけてきたのである。
由美子はやむなくこの条件を受け入れた。
由美子にとって文興社だけではなくブログでの世の中の不正批判はもう生きていくうえで欠かせないものになっていたからである。
それで予備のため、@niftyココログにもブログを開設した。
その翌年の2011年に東日本大震災が起こり、その翌年の2012年には第二次安倍政権が発足した。
由美子は文興社批判を続けながらも、由美子は東日本大震災の東電と政府の対応を批判する記事を書き、そして安倍政権の悪政を批判する記事を書いた。
平和を愛する由美子にとって集団的自衛権を認める安保法制は我慢が出来なかったのである。
文興社は相変わらず、版権が文興社にある、著者から受けとる製作費で儲ける悪質商法を続けていたが、由美子の文興社批判のおかげで、文興社が悪質商法で儲けているということが、世間に認知され、文興社も「協力出版」の名前を使わなくなった。
由美子は2011年から、ツイッターを始めた。
2020年から起こったコロナ禍およびコロナワクチンの危険性についての記事を連日書くようになった。
文興社批判どころではない政府がワクチンと称して毒を日本全国民に打つ大変な時代になった。これから世界はどうなるのかと由美子は驚愕した。
2024年の現在でも由美子は実名の松田ゆみこの名前で、ツイッターおよび、さぽろぐ、および@niftyココログで、世の不正を糾弾する記事を書き続けている。


2024年9月16日(月)擱筆


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