向精神薬
研修病院のはじめの頃、私は向精神薬を数回、飲んで見た事がある。患者に出していた薬である。大学の時、「メジャーは、よう飲めないが、マイナーは何種類か飲んでみた」と言った医者の言葉がカンにさわっていた。人に飲ませてる薬を手前は飲まない、というのは、嫌だったからだ。また、メジャーを飲んだら、どんな感じになるのか、体験してみたかった。メジャーを飲んだからといって別に後遺症はのこらない。なのに、試しに飲んでみる精神科医はまずいないのである。それで、ちょうど患者が拒薬して飲まなかった薬を帰りがけに飲んだ。その時、私は自転車で病院に通っていたが、薬が効き出して、激しい脱力状態になってきた。ハンドルをしっかり握る事ができないのである。全身の力が抜けて、とうとう倒れてしまった。メジャーがこんな強い薬だと、その時わかった。のちにもう一度、飲んでみた。仕事の日では、危ないので、翌日が休日の夜に飲んでみた。翌日になって、昼近く目が覚めたが、起き上がれないのである。ウンと踏ん張ってもビクとも体が動かないのである。ボクシングでK.O.された人以上であろう。
こんなものを飲まされたんじゃ、たまったもんじゃない、と思った。
人に飲ませられないものを飲ませているのは、エゴだとか矛盾だとか、思われそうだが、そうではないのである。妄想の激しい患者は脳の中でドーパミンという物質が多量に分泌されているのである。普通の人は、普通の量のドーパミンである。向精神薬は、ドーパミンの分泌を抑える薬である。そのため、患者に薬を出すのは、過剰なドーパミンを抑えるためであり、また、患者も力が抑えられるが、起き上がれないほどにはならないのである。普通の人に、向精神薬を飲ませると、過剰にドーパミンが抑えられてしまうため、起き上がれないほどになってしまうのである。
また、そういう点で精神科の患者は、治療診断も出来るのである。診断が難しい患者がいたとする。その患者に精神薬を飲ませて、起き上がれたら、統合失調症であり、起き上がれなかったら統合失調症ではない、と薬によって診断することも出来るのである。
研修病院のはじめの頃、私は向精神薬を数回、飲んで見た事がある。患者に出していた薬である。大学の時、「メジャーは、よう飲めないが、マイナーは何種類か飲んでみた」と言った医者の言葉がカンにさわっていた。人に飲ませてる薬を手前は飲まない、というのは、嫌だったからだ。また、メジャーを飲んだら、どんな感じになるのか、体験してみたかった。メジャーを飲んだからといって別に後遺症はのこらない。なのに、試しに飲んでみる精神科医はまずいないのである。それで、ちょうど患者が拒薬して飲まなかった薬を帰りがけに飲んだ。その時、私は自転車で病院に通っていたが、薬が効き出して、激しい脱力状態になってきた。ハンドルをしっかり握る事ができないのである。全身の力が抜けて、とうとう倒れてしまった。メジャーがこんな強い薬だと、その時わかった。のちにもう一度、飲んでみた。仕事の日では、危ないので、翌日が休日の夜に飲んでみた。翌日になって、昼近く目が覚めたが、起き上がれないのである。ウンと踏ん張ってもビクとも体が動かないのである。ボクシングでK.O.された人以上であろう。
こんなものを飲まされたんじゃ、たまったもんじゃない、と思った。
人に飲ませられないものを飲ませているのは、エゴだとか矛盾だとか、思われそうだが、そうではないのである。妄想の激しい患者は脳の中でドーパミンという物質が多量に分泌されているのである。普通の人は、普通の量のドーパミンである。向精神薬は、ドーパミンの分泌を抑える薬である。そのため、患者に薬を出すのは、過剰なドーパミンを抑えるためであり、また、患者も力が抑えられるが、起き上がれないほどにはならないのである。普通の人に、向精神薬を飲ませると、過剰にドーパミンが抑えられてしまうため、起き上がれないほどになってしまうのである。
また、そういう点で精神科の患者は、治療診断も出来るのである。診断が難しい患者がいたとする。その患者に精神薬を飲ませて、起き上がれたら、統合失調症であり、起き上がれなかったら統合失調症ではない、と薬によって診断することも出来るのである。