かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 1の28

2020-05-22 17:45:29 | 短歌の鑑賞
    改訂版渡辺松男研究3【地下に還せり】
      『寒気氾濫』(1997年)12~
      参加者:崎尾廣子、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
       司会と記録:鹿取 未放(再構成版)


28 魔女狩りを支持せしフランシス・ベーコン魔女狩りは今の何に当たるや

★日本にあまり魔女狩り的なものは無いのでは。(曽我)
★血祭りにはあげなくても黙らせられることはけっこうある。新聞など読んでいる
 と。職場でいじめられて死んでいく人もけっこういる。(崎尾)
★魔女というのはちょっと違って普通の人じゃないでしょ。(曽我)
★まあ、建前はそうだが実は邪魔者を魔女と称して火あぶりなどにしていたわけで、
 本当の魔女なんっていないんじゃないの。(鹿取)
★魔女狩りは十四世紀から十八世紀にかけて行われた。魔女狩りの起源については、
 キリスト教の指導者が異端者をみせしめにして協会内の結束をはかったという見
 方もあるし、いや民衆の間から自然発生的に出てきたのだという見方もあり様々。
 フランシス・ベーコンは十六世紀から十七世紀の人、哲学者であって政治にも関
 与し、出世して魔女狩りを支持したことはあったのだろう。哲学者にしてそうい
 う陰謀を支持した人がいたことに震撼させられるが、今ならこの魔女狩りは何に
 あたるんだろうねえと疑問の形で歌は終わっている。しかし、似たようなことは
 今でもたくさん行われていて、周囲でも、政治の世界でも見聞きして作者はっそ
 れらに密かに憤っているのかもしれない。それにしても、潤いある心地よい月光
 や樹の瞑想の後に、いきなりこの異質な魔女狩りの歌が出てきてびっくりさせら
 れる。この歌から遡って読むと、風切り羽をつくろう鳥も、倒されるまで瞑想し
 ている樹も、凍天に鑿を打つ杉も、あるいは何か寓意があると読むことも可能か
 もしれない。(鹿取)

コメント
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