2024年度版 渡辺松男研究43(2016年10月実施)
『寒気氾濫』(1997年)【半眼】P146~
参加者:泉真帆、M・S、鈴木良明、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
レポーター:泉 真帆 司会と記録:鹿取 未放
360 再会の山毛欅の樹幹を抱くときその悦びのぐぐぐぐと春
(レポート)
渡辺松男歌の魅力は、情動を歪めず一首に気分をのせられるところだと思う。読者はそこをたのしめる。「ぐぐぐぐ」というオノマトペで、悦びがだんだんと実感として迫ってくる様が表現されている。視角的にも「ぐ」を重ねてたのしい。「再会」に心情が込められている。(真帆)
(当日意見)
★別に山毛欅でいいけど、まあ恋人との二重写しになっているんで
しょうね。作者は山毛欅だけととってほしいのかしら。山毛欅
だけでなく「樹冠」と指定していて、いかにも太い幹の重量感と
かリアルに想像させるし、それを抱く悦びも身体的に伝わってき
ますね。(鹿取)
★あくまで山毛欅に再会できた喜びじゃないですか。違う?
(真帆)
★真帆さんの解釈はいいと思いますよ。(鹿取)
★一連を読んでいくと人との再会だから、ダブって読んでもいいと思
います。誰かを抱きたきとかも出てきましたから。ただ、松男さ
んは木が好きだから、うまく言葉が斡旋されている。あんまり人を
前面に出してもあれだし、批評を書くのが難しいですね。(鈴木)
★私はどちらかというと、この歌は山毛欅のことだけと採りたい気分
なのですが、素肌、白蓮の下で待つ、うつそみを恋うの後に置かれ
た歌だと思うと、どうしても恋人に会えた喜びを重ねて読むこ
とになってしまいます。「悦び」という字も「悦」だし。(鹿取)
★でも、「ぐぐぐぐ」って松男さんしか使えないですね。(鈴木)
★素敵ですね、気分が出ていますよね。(鹿取)
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