かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

清見糺の一首鑑賞 7

2020-05-24 19:04:39 | 短歌の鑑賞
ブログ版清見糺鑑賞 2  ゆるふん  
                かりん鎌倉支部  鹿取未放     


7 古き塔は夕かげを吸う新しき塔は夕日をはじく薬師寺 
              かりん」94年3月

 薬師寺の新旧ふたつの塔を見ての感想を直感的に述べている。古い東塔は奈良天平年間に造られた国宝。「凍れる音楽」という哲学的な呼称がある。新塔である西塔は 一九八一年に再建された。その新塔に違和感を覚えている歌である。「夕かげ」の「かげ」は古語では「光」のことで、ここでの「夕かげ」はイコール「夕日」。古い塔は夕日を吸っているように見えるが、新しい塔は夕日をはじき返しているようで、どうもなじめないなあというのだろう。
 ちなみに佐佐木信綱の有名な〈ゆく秋の大和の国の薬師寺の塔の上なる一ひとひらの雲〉は旧塔を詠ったもの。一九一二(大正元)年発行の歌集『新月』に載る。

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