かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

馬場あき子の外国詠 358 中欧①

2023-10-06 11:14:01 | 短歌の鑑賞
 2023年度版 馬場あき子の外国詠50(2012年3月実施)
   【中欧を行く 秋天】『世紀』(2001年刊)91頁
   参加者:N・I、K・I、崎尾廣子、曽我亮子、藤本満須子、
       T・H、渡部慧子、鹿取未放
   レポーター:崎尾廣子 司会とまとめ:鹿取未放
   

358 ただ白き雲の平を見るのみにウラル越えボルガ越え行く天の秋

         (当日発言)
★「天の秋」は、秋天の和語的な言い方でしょう。「ウラル越えボルガ越え」は、飛行
 機が越えたのを機内の地図か旅の本で確認したのであって、ウラルやボルガを作者の
 目で見ている訳ではない。ウラル山脈やボルガ川の上には「ただ白き雲の平」が広が
 っていたから見えなかった。(鹿取)
★想像では難しいのではないか。ウラルは見えたのではないか。ボルガもちらちらと見
 えたかもしれない。(藤本)
★見えた根拠は何ですか?どこにも見えたとは書いてないけど。見えなかったから「た
 だ白き雲の平を見るのみに」と表現したんでしょう?この歌のねらいも面白さも、ウ
 ラルやボルガを越えたんだけど、何も見えなくて私は白い雲を見ていただけだった、
 というところにあると思います。見えたら、雲の切れ間からウラルやボルガがちらり
 と見えたと詠うでしょう。飛行機の前方画面に今どこを飛んでいるか表示されますよ
 ね。それを見れば今ウラルの上、ボルガの上を飛んでいることは分かる。私がロシア
 へ行った時、歌集にも載せなかった下手な歌だけど、〈うたたねの間にいくつの川を
 越えたのかエニセイ、オビと聞けばゆかしき〉と歌った。もちろん眠っていたので、
 エニセイ川もオビ川も見ていない。エニセイとオビはものすごく離れていますけれ
 ど。(鹿取)


           (まとめ)
 飛行機の下は白い雲が広がっていて、ウラルもボルガも下界は見えなかったのであろう。その白い雲が平らに一面にどこまでも広がっている様子を「天の秋」と季語ふうにとらえている。ウラル山脈やボルガ川をしっかりと見たかったのに、とやや惜しむ気持ちもあるのだろう。ちなみに、シベリアという呼称は、狭義にはレナ川より東を、広義にはウラル山脈より東をいうらしいので、広義のシベリアともこの辺りでお別れである。(鹿取)

コメント
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