かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 136

2023-10-28 11:22:21 | 短歌の鑑賞
 2023年版 渡辺松男研究 16  2014年6月
     【Ⅱ 宙宇のきのこ】『寒気氾濫』(1997年)60頁~
      参加者:曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放、鈴木良明(紙上参加)
      レポーター:曽我 亮子   司会と記録:鹿取 未放
               

136 ヒマラヤ杉月光環をつらぬけり真夜に見る樹は黒のどくどく

      (レポート)
 夜中に地上から見上げると背の高いヒマラヤ杉は月のまわりにほんのり浮かぶ輪を貫いている。 (曽我)。
  ヒマラヤ杉=松科の常緑高木、枝が下向きにたれ円錐状の樹形をなす。葉は針形
     (広辞苑)

     (紙上意見)
 「月光環」(月の周囲に見える光の輪)をヒマラヤ杉が直立して貫いている。真夜に入って見る樹 は、黒々として、まるで生き物のようにどくどくと脈打っている。
  (鈴木)


      (当日発言) 
★黒のどくどくからはおどろおどろしいほどの生命力を感じます。フロイト的に見ると
 環は女性、垂直に貫く杉の木は男性で、とてもエロチックな歌とも読めます。真夜で
 すから神秘的で神々しい美しさも感じますし。(鹿取)


      (まとめ)
 「月光環」は辞書にはなかったがWikipediaには「薄い雲がかかったときに、それらの周りに縁が色づいた青白い光の円盤が見える大気光学現象のこと」と出ている。ひんやりとしてシャープで美しい語である。それを貫くヒマラヤ杉を幾何学的な形状の美しさではなく、「黒のどくどく」と勢いのある動きでとらえ、生きているものの生々しさを出している。(鹿取)
コメント
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