かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 138

2023-10-30 10:43:37 | 短歌の鑑賞
 2023年版 渡辺松男研究 16  2014年6月
     【Ⅱ 宙宇のきのこ】『寒気氾濫』(1997年)60頁~
      参加者:曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放、鈴木良明(紙上参加)
      レポーター:曽我 亮子   司会と記録:鹿取 未放
               

138 うむっうむっと孟宗竹の子が伸びる鬱から皮のむけてゆくなり

      (レポート)
 孟宗竹の筍が地上に小さな穂を出すときかなりの抵抗を地中から受ける。又成長する時のまわりの土の抵抗も更に大きい。筍は土の抵抗があればある程やわらかく育つ。(曽我)


      (紙上意見)
 筍が伸びてゆく様は「うむっうむっ」という感じだ。鱗片状の皮は筍の本体を守るためのものだろうが、元気盛んな孟宗竹からすれば、うっとうしい鬱的なもの。ここを脱皮して、伸びてゆくのだ。(鈴木)
 

     (当日発言)
★漫画チックでこの歌は好きです。腕白坊主が伸びていくようで可愛くて、小学生でも
 よく分かる歌だと思う。ただ、「鬱から皮のむけてゆくなり」は面白い発想ですね。
 言われてみればなるほどと思うけど。 (鹿取)
★公開された年譜に出ているので言ってもいいと思うけど、渡辺さんは25歳の時から
 精神科に通院されています。だから鬱状態から快復していく時の陽気な感覚というの
 が体感としてあるんじゃないかなと。うちの子も渡辺さんと病名は違うかもしれない
 けど長く精神科に通院していて、鬱と躁が交互に来るんだけど、鬱から躁への切り替
 わりってものすごく鮮やかですね。パーってハイになる。この歌ではおとなしく地中
 に埋まっていた竹の子が地面の上に顔を出して、陽光めがけて次々と皮を剥ぎながら
 伸びてゆく元気いっぱいのイメージがあります。(鹿取)

コメント
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