2024年版 渡辺松男研究22(2014年12月)
【非常口】『寒気氾濫』(1997年)75頁~
参加者:S・I、泉真帆、崎尾廣子、鈴木良明、
曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
レポーター:S・I 司会と記録:鹿取 未放
176 闇は隅から来るものなりて校庭の鉄棒も子も見えなくなりぬ
(レポート)
校庭に立っていると、周りは薄闇なのに、隅はもう真闇に覆われ、鉄棒も子も等しく見えなくなった。この歌をこどもを主格として、物語風にも解釈できるが、渡辺氏は物を語る作家ではない。時空を超え、時には因果律さえ凌駕して、詩的真実を紡ぎだす作家である。テーマは闇である。物の形が見えなくなる黄昏時の、異界に入っていくかのような景を巧みに捉えている。現代人は照明器具の発達により、ほとんど闇を意識しなくなったが、氏は灯りの乏しかった時代の人々と同じ思いで、闇の本質を見つめているのかも知れない。(S・I)
(当日意見)(2014年11月)
★黒の中にも濃淡があるような感じがうまく表現されている。現代人はほとんど闇を意
識しなくなったというレポーターの解釈は、作者はそこまでは言っていないかなと思
う。(真帆)
★単純に実感としてわかる歌。立ち位置がよく分からないけど、周辺から闇が迫ってく
る感じ。だからレポーターの言うように「異界に入っていく」ほどの感じではないと
思う。(鈴木)
★闇が隅から来るという捉え方は的確だと思う。〈われ〉はどこかから子どもを見守っ
ているという設定なんでしょうね、何か闇の怖さとか子どもがどこかへ連れ去られる
ような不安感とか、女性だとそういうところに繋がっていくんだけど、この歌はそう
いう具体的な不安とは違うのかな。 やっぱり、もっと闇の持つ本質みたいなものに迫
ろうとしているのかなと思います。(鹿取)
【非常口】『寒気氾濫』(1997年)75頁~
参加者:S・I、泉真帆、崎尾廣子、鈴木良明、
曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
レポーター:S・I 司会と記録:鹿取 未放
176 闇は隅から来るものなりて校庭の鉄棒も子も見えなくなりぬ
(レポート)
校庭に立っていると、周りは薄闇なのに、隅はもう真闇に覆われ、鉄棒も子も等しく見えなくなった。この歌をこどもを主格として、物語風にも解釈できるが、渡辺氏は物を語る作家ではない。時空を超え、時には因果律さえ凌駕して、詩的真実を紡ぎだす作家である。テーマは闇である。物の形が見えなくなる黄昏時の、異界に入っていくかのような景を巧みに捉えている。現代人は照明器具の発達により、ほとんど闇を意識しなくなったが、氏は灯りの乏しかった時代の人々と同じ思いで、闇の本質を見つめているのかも知れない。(S・I)
(当日意見)(2014年11月)
★黒の中にも濃淡があるような感じがうまく表現されている。現代人はほとんど闇を意
識しなくなったというレポーターの解釈は、作者はそこまでは言っていないかなと思
う。(真帆)
★単純に実感としてわかる歌。立ち位置がよく分からないけど、周辺から闇が迫ってく
る感じ。だからレポーターの言うように「異界に入っていく」ほどの感じではないと
思う。(鈴木)
★闇が隅から来るという捉え方は的確だと思う。〈われ〉はどこかから子どもを見守っ
ているという設定なんでしょうね、何か闇の怖さとか子どもがどこかへ連れ去られる
ような不安感とか、女性だとそういうところに繋がっていくんだけど、この歌はそう
いう具体的な不安とは違うのかな。 やっぱり、もっと闇の持つ本質みたいなものに迫
ろうとしているのかなと思います。(鹿取)
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