かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 90

2023-08-11 09:28:10 | 短歌の鑑賞
 2023年版渡辺松男研究⑪(2014年1月)
    【精神現象学】『寒気氾濫』(1997年)40頁~
     参加者:崎尾廣子、鈴木良明、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:鈴木良明 司会と記録:鹿取 未放
       

90 むかし疎外ということばあり今もあるような感じに吹けるビル風

      (レポート)
 「疎外」という言葉は、ヘーゲルが「自己を否定して自己にとってよそよそしい他者になること」の意で用いたが、後にこれを継承したマルクスが「人間が自己の作りだしたものによって支配される状況」の意で用いている。ビル風は、自然の風ではなく、人間がわざわざビルを建てたことによって発生した。そのようなことを思い、感じながら作者は、ビル風に吹かれつつ「みなとみらい」地区を歩いたのである。(鈴木)


       (発言) 
★われわれの世代には疎外ということがすごくよく分かる。若い時代にはやった言葉
 で。(鹿取)
★疎外はマルクスが言ったような意味で使ってましたよね。(鈴木)
★ええ、自己疎外とか言ってね。あれ、マルクスの概念なんだ。(鹿取)
★ヘーゲルの方は抽象的過ぎるからぴんと来ないけど。マルクスの方は直接的で。
  (鈴木)
★「疎外」を広辞苑で引いたらどう出ているのでしょう?(慧子)
★では、引いて見ましょう。前半は鈴木さんのレポートと同じです。マルクスの項
 で、自己の創り出したものは(生産物・制度など)と括弧書きの注がついていま
 す。次に「さらに資本主義社会において人間関係が主として利害打算の関係と化
 し、人間性を喪失しつつある状況を表す語として用いた」とあります。あの頃、
 この最後の方の意味でしきりに「人間疎外」って言葉を使っていましたよね。
 立て看なんかにもよく使われていた気がする。高層ビルが建ち並んで、お陰で凄
 まじいビル風が吹く。そんなビル風に吹かれながら歩いていると、人間性を失っ
 た都会の殺伐さをいやおうなく感じてしまう。(鹿取)

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