かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 344

2024-11-11 16:44:46 | 短歌の鑑賞
  2024年度版 渡辺松男研究41(2016年8月実施)
    『寒気氾濫』(1997年)【明快なる樹々】P139
     参加者:泉真帆、M・S、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:渡部 慧子    司会と記録:鹿取 未放


344 群れざるを矜恃のごとく帰る道ヘッドライトに晒さるる道

      (レポート)
 大勢のなかで仕事か何かを済ませ帰路をたどる。群れないことを矜恃として帰って行く道、どんな道かといえばヘッドライトに晒さるる道だ。また、矜恃にしても折にはかげったりゆれたりしてつねにはりつめている状態ではないだろう。その微妙なところを照らさるるではなく、晒さるるとの語を選んでいる。(慧子)


    (後日意見)
 「矜恃のごとく帰る道」と「ヘッドライトに晒さるる道」は対句になっている。「ヘッドライトに晒さるる」のは〈われ〉だろう。独り帰ろうとしている〈われ〉の車は、いつも群で行動している人たちの車のヘッドライトに晒されている、ということか。いや、ヘッドライトは一台分しか届かないか。まあ、理詰めで考えなくても、「ヘッドライトに晒さ」れているような気分なのだろう。あるいは、「群れ」の仲間から抜けて、知らない車ばかりが走っている道に出ても、見知らぬ車からさえ自分の矜持を晒されているような気がするのかもしれない。(鹿取)


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