かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 2の218

2019-11-09 17:38:56 | 短歌の鑑賞
   ブログ用渡辺松男研究2の28(2019年10月実施)
     Ⅳ〈水〉『泡宇宙の蛙』(1999年)P138~
     参加者:泉真帆、岡東和子、A・K、菅原あつ子(紙上参加)、鹿取未放
     レポーター:岡東和子    司会と記録:鹿取未放


218 しずかなる地雨なれども無縁坂あちらこちらゆ水の手が伸ぶ

      (レポート)
 無縁坂は静かな所で、雨降りだけれどあちらこちらから水の手が伸びる。作者は雨の中、無縁坂を歩いている。あちらこちらから水の手が伸びてくるというのは人生の岐路にあることの比喩だろうか。初句の「しずかなる」が効果的である。(岡東)


      (紙上参加意見)
 しとしと雨が、じわじわと沁みてあたりを濡らしてゆく。それだけなのだが、「無縁坂」によって、魔物のように水の手がうごめきだし読者を異界へ誘い出す。(菅原)


          (当日発言)
★地雨は、ずっと降り続く雨のこと。(真帆)
★無縁坂は不忍池から岩崎邸に沿って登る道で東京大学に突き当たるそうです。沿道に無
 縁寺というのがあったそうです。(岡東)
★毎日雨が降り続いているので、あちらこちらから坂道に水が筋のように流れ出て来るの
 ですね。情景はよく見えますね。無縁坂なんだけど水があちらこちらから手を差し伸べ
 てくる。(鹿取)
★どこにあるかとか何も知らなくても、無縁坂って字面でも分かりますね。(A・K)
★「無縁坂」ってさだまさしの歌ですね。「忍ぶ不忍無縁坂かみしめる様なささやかな僕
 の母の人生」。道行文みたいに不忍池から無縁坂と地名を折り込んでいるんですね。松
 男さん、若く亡くなったお母さんに対して特別の思いがあるみたいだから、水が手を差
 し伸べているのはそういう人たちに対する優しい救いのイメージかもしれませんね。ず
 いぶん人情的な解釈になりますが。(鹿取)

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