DT200Aの庫 (goo-blg)

石北線゛玉ねぎ臨貨゛の終焉


 はじめて石北臨貨を撮り出した時代はDD51の更新機が少数派(と言うより当時のDD51は鷲別と五稜郭のふたつの機関区に別れて配置されており、更新機は五稜郭機関区しか配置されておらず、石北線玉ねぎ臨貨は鷲別機関区担当であったために更新機は石北線には原則入りませんでしたが…)でしたので石北線は原色DD51の天下でした。しかし晩年はご存知の通り原色のDD51を見かける事も極端に少なくなってしまいました。この日は珍しく原色の重連でしたが次位のコンテナ貨車に財源がなく(鉄ちゃんはコキ車にコンテナが乗っていない状態を゛空コン゛と呼びますが、現場で゛空コン゛と言うと何も積荷がない空のコンテナを指す事になります。)、絵にならないのでこんなアングルから撮影してみました。  04,10,01 瀬戸瀬 8556レ

 一部一般新聞や国営放送でも報道されていますが、石北線の臨時貨物列車がDD51及びコンテナ貨車の老朽化を理由に来年度には廃止され、北見ー旭川間の全面トラック代行に移行する模様です。すでに3往復あったスジは1往復に縮小し、不足分はトラック代行で旭川へ輸送しているとの事です。
 この石北線の臨時貨物列車は北見周辺で収穫される特産の玉ねぎを輸送するための列車で、主に最大の消費地である首都圏へ輸送され、そのシェアは北見産の玉ねぎの95%以上と言われています。逆に言えば首都圏で見かける北見産の玉ねぎはほとんど石北線の臨時貨物列車で運ばれて来たと言っても過言ではなく、この臨時貨物列車をいつしか゛玉ねぎ臨貨゛と言う様になっていました。
 この゛玉ねぎ臨貨゛はその輸送形態から片道輸送となり、旭川から北見へは何も積んでいないコンテナの輸送で、けして効率的な輸送とは言えませんでしたが(一時、旭川から北見へ電池等の産業廃棄物輸送をしていた時期もあった様です。)輸送量は安定していて、また津軽海峡が存在するために将来にわたって鉄橋貨物輸送に頼るしかないので車両の老朽化さえなければ石北線の貨物列車も安泰だったのかもしれません。
 もともと石北線と言えば急勾配の常紋峠を有し、現役蒸機時代は不定期ながら三重連や客レに限られていましたが峠区間での後部補機の走行解放などもみられ、そのために遠軽には大きな機関区を有していました。
 無煙化後貨物列車はDLにより運転されていましたが84年(59年)2月の貨物大合理化改正でいったんは廃止になり、いつしか忘れ去られていました。


 この場所は雑誌で発表されるまで全く気が付かなかった撮影地です。駐車帯から少し入った所で撮影するのですが、その駐車帯には何度か入って休んだ事があるのに、そこがまさか撮影地とは、全く気がつきませんでした。   04,10,02 下白滝 9559レ 

 私が石北線に臨時ながらも貨物列車のスジが存在しているのを気づいたのは復活シロクニ撮影に熱中していた89年頃でした。ダイヤ情報誌に掲載されていたダイヤでその存在に気いた次第です。
 早速、90年春に丸瀬布の雨宮21号にあわせて撮影に向かうと臨貨はまったく運転されておらず、駅で確認すると゛運転期間は限定されており、今は運転していない゛との事でした。
 その後、この臨貨は玉ねぎを輸送するために運転されるもので、運転期間は玉ねぎが収穫される夏から翌年春までとわかりました。
 当時、八高線でDD51の魅力に獲りつかれていた私は石北線のDD51にも大いに興味を持ち、玉ねぎ臨貨の運転日を確かめて91年秋、シロクニ撮影の合間に改めて石北線へ向かいました。
 もともと急勾配で名を馳せた石北線ですからDD51はスーパーチャジャーを高らかに峠を越える事は間違いありません。期待を持って出掛けた事を今もはっきりと覚えています。
 当時、石北線玉ねぎ臨貨を撮影する人はほとんどなく、今は立入禁止となった常紋信号所には林道から容易に入る事が出来ました。しかし、いざ信号所に立つと誰も居ない信号所はとても寂しく、山の稜線を吹き抜ける風の音しか聞こえません。ふと、林道の入口に「熊出没・単独行動自粛」の看板の文字を思い出し気味が悪くなって来ました。周囲を見渡すと、何かがいます!間違いなく何かが動いている気配がします!…熊か?
 とりあえず三脚にセットしたカメラはそのままで、あわてて車に飛び込み様子を伺っていると、林道から軽パトが現れました。
 軽パトに乗った警察官は信号所に入って来ました。軽パトの警官も怪しげにこちらの様子を確認し降りてきました。こちらも車から降り、挨拶を交わし話しをすると何でも、無人になってから一週間に一度ペースで信号所まで見廻りに来ているとの事で、こんな場所まで来る一般人は大変珍しいので強制ではないものの、可能ならばこの場から退去して欲しい。とにかく熊にはくれぐれも注意してください!とアドバイスし、軽パトは山を降りて行きました。
 しかし、そうは言われても撮影をしていないのに、この場を立ち去る訳には行きません。熊の恐怖と闘いながら、列車を待っていると風が山を駆け抜ける音の中に重低音が微かに聞こえて来ました。
 そして現れたのは紛れもなくDD51のコンテナ貨物列車でした。この時はまだ情報が乏しく、重連でなかったので単機牽引と早合点してしまい、先頭のDD51が目の前を通過して気を抜いてしまい、後部にもう1両のDD51が連結されているのに気づかず、撮り逃がしてしまいそうになりました。(この時の写真はレイルマガジンで発表しています)


 一般には無名の金華駅ですが、現役蒸機時代から我々はにとって馴染みの深い駅です。補機の連結もあって活気もあっただろう構内はひっそりしていました。   04,10,03 金華 8557レ

 その後、何度か石北線を訪れましたが、運転形態もプッシュプルから重連にと変わっていました。
 石北線が注目された時点で玉ねぎ臨貨はDD51の重連だったので、晩年にプッシュプル運転になった際に話題にもなりましたが、もともと石北線玉ねぎ臨貨はプッシュプル運転でしたので、昔に戻っただけの話でした。


  一人で撮影していた時代は熊が怖くてほとんど駅構内での撮影で終始していました。後に人気が出て、同行してくれる方が居るような時代になった頃には更新機が幅を効かせている状況で、ほとんど撮影には行きませんでした。この列車は中越で特急と交換で10数分停車します。そのために追っかけ可能でした。  95,10,11 中越 9559レ

 実は北見―旭川間のトラック代行輸送は輸送力の補完として以前から行っていました。特に石北線が輸送障害を起こした時や、本州(北海道流に言うと内地)でなんらかのトラブルが発生した時などは玉ねぎ臨貨が輸送する予定だったコンテナを旭川あるいは場合によっては札幌(東北本線が不通で船代行輸送の際は室蘭港まで)までトラック代行を行った事もあるとトラック運転手に聞いた事があります。そのため、石北線で撮影していると国道39号線でトラックに載せられたコンテナの姿を見ることが出来ました。
 ただ、このトラック代行が荷主にとってどんな存在だったかと言うと、これが私たちの期待に反して好意的に受け取られていたみたいです。
 と言うのも、トラック代行でコンテナを輸送すると北見から列車で輸送するより半日早く、旭川に到着する事が出来、積込のスペースさえあれば所定の列車より1本早く荷物を列車に載せられるので荷主にとっては好都合だと聞いた事があります。
 では、なぜ全面トラック代行輸送にならないかと言うと、列車による輸送は単位が大きな事。また、トラック代行輸送による環境影響とトラック代行輸送で使う道路に障害があった場合、引き返すしかなく、迂回路が保障されない状態ではトラック代行はあくまでも補完輸送と言う域を脱する事は出来ませんでした。
 しかし近年は高速道路とした国道333号-242号が整備された高規格道路が整備され冬季の道路閉鎖がほとんどなくなった事と、温暖化による積雪減少(もちろん今年は例外ですが)している事を受けて国道39号線の迂回路がさ確立れた事を受けて今回の全面トラック代行輸送に踏み切ったと考えられます。


 かつては旭川機関区のDE10(DE15)が補機を務める時代もありました。国鉄解体後ではありましたが、まだまだ機関車に余裕があった時代でした。   91,09,21 東雲 9559レ

 近年、DF200の進出で衰退の一途を辿っていた北海道のDD51ですが、その最後の砦であった石北線の玉ねぎ臨貨の終焉は実質的に北海道でのDD51による貨物列車牽引の幕切れと言って過言ではないと思います。

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コメント一覧

DT200A@P905i
ひだ号様
ご投稿、ありがとうございますm(__)m

 常紋トンネルは現実に人柱が埋められていて、トンネルの改修工事で何体かは掘り出され手厚く葬られたそうです。
 私は経験しませんでしたが、現役蒸機時代は信号所の職員に申し出ると列車間合に照明を点灯させてくれて、トンネルの生田原側に通り抜ける事が出来たそうですが、照明があってもトンネル内は薄気味悪く走って抜けたと聞いています。
 トンネルを職員の許可(黙認?)で通れた事自体がよき国鉄時代だと思います。
ひだ号
一時は3往復もあり、遠軽バカ停で撮影効率もよく、本当に楽しい石北臨貨でしたが、ついに終焉の文字が出てきましたか。。。
しかし、常紋信号場にパトロールがあるなんて…。私が昨年秋に行ったときは、JR北海道の保線係が定期巡回でいました。
8年前に行ったときは、信号場のスノーシェルターの入口に鹿が二頭、轢かれて死んでいるのを見ました。あの場所だけに、ちょっと不気味でした。常紋トンネルは出るって有名ですし
紅葉の峠は、魅力的ですが、熊の恐怖が伴っていますね…。
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