緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

危機の意味と心的外傷後成長:セミナーでの学びを通して

2015年06月14日 | 医療

先週11日、「子どもたちへのケアを考える」で
3人の講師の方にお話を頂きました。

その中で、言葉ってすごいなって感じたこと



英語で Crisis。
意味は、危機

ギリシャ語では、カイロスと読み、
意味は、チャンス





危は、リスク⇒不安、危険を伴うもの

機は、機会⇒ 好機、機が熟し飛躍するとき



良い方向に向かうか、
悪い方向に向かうかの
分岐点が、「危機」



つまり、危機とは、

ピンチはチャンスであると!





Crisisは、ギリシャ語のカイロスが語源
カイロスとは、「機会(チャンス)」を意味し、
ギリシャの男性神でゼウスの末子だそうです。

カイロスの風貌は、有名ですが、
前髪は長いが後頭部が禿げた美少年で、
「チャンスの神は前髪しかない」
つまり、「好機はすぐに捉えなければ後から捉えることは出来ない」
ということを意味しています。
(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%82%A4%E3%83%AD%E3%82%B9)








それに伴い、PTSDならぬ PTGについて、
始めて知ることができました。
(2004年に提唱されていたのですね・・・)


PTSDとは、
Posttraumatic stress disorderの略で、
心的外傷後ストレス障害

命の安全が脅かすような出来事、天災、事故、犯罪、虐待などによって
強い精神的衝撃を受けることが原因で、
著しい苦痛や、生活機能の障害をもたらしているストレス障害である。
(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BF%83%E7%9A%84%E5%A4%96%E5%82%B7%E5%BE%8C%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%AC%E3%82%B9%E9%9A%9C%E5%AE%B3)





PTGとは、
Posttraumatic growthの略で、
心的外傷後成長

「危機的な出来事や困難な経験との精神的なもがき・闘いの結果生ずる、ポジティブな心理的変容の体験」
Positive psychological change experienced as result of 
the struggle with highly challenging life circumstances

( Tedeschi & Calhoun, 2004)

トラウマだけではなく、
人生を変えてしまうようなつらい出来事
がんなどの疾病や事故や怪我など、
心の傷にはならないけれども
高いストレスを伴う体験も含まれると言われています。






強い苦痛や衝撃を受けた後、
それが負になることもあれば、
正になることもある・・

確かに、一般的にも
雨降って地固まるというような言葉もあります。




患者さんとの別離の後、
特に、辛い思いを解決してあげられなかったり、
患者さんに謝りたくなるような感覚に至ったりした時、
申し訳なくて、申し訳なくて、
それでも医療現場から逃げられないから、
それをどう次の患者さんの活かしていくべきか、
何度も何度も反芻して、今に繋がってきたことも少なくなく、
思えば、これは、私にとってのPTGに他ならなかったのだと感じます。






今回のセミナー・・
「子どもたちへのケアを考える」

子どもたちが、
親のがんを知ったり、
死別を体験したり、
自分自身ががんであることがわかったり・・

そんな中にあっても、
Growthにつながるサポートを行っていくこと
それが、我々の役割なのだと
改めて、心に感じることができました。




そして、医療者が辛い現場にいても、
そこで医療に携わり続けたり、
仕事を誇りに思えたりすることは、
そこに、Growthが存在することを
無意識に感じているからなのだろうとも気づくことができました。


私を育ててくれた多くの患者さんやご家族、
サポートグループを通じて様々な感情を体験させてくれた子どもたち、
そして、今回のセミナーの講師の先生方や
開催に尽力してくれたスタッフの一人一人に
感謝で一杯です・・・・


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6 コメント

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Unknown (ケイ)
2015-07-18 23:51:45
ダギーセンターやPTGという単語は暴力からのケアに関する領域の用語だと思っていました
まさか緩和ケアのブログで拝見するとは思ってもいませんでした

逃げることなくその場に居続けようとする医師にとってPTGは大切なのでしょう
一方そこにとどまり続けることを許されない患者にとってのPTGとはなんなのでしょう?

別の何かを見つけること?
あきらめること?
とどまっていられない虚無感をどううめていったらいいのでしょうか。。。
返信する
ケイさん (aruga)
2015-07-20 23:08:37
頂いた言葉に、悲しみを感じます。
そこに心が届き切れず、申し訳ない気持ちです。
返信する
Unknown (ケイ)
2015-07-22 11:46:39
Aruga先生
心を寄せていただきありがとうございます。

Crisisの意味をどう受け止めるかは
その人の意思次第でしょうか。

医師の方々がPTGという単語を使うということは、
(心理的に)被暴力下と同じくらいにぎりぎりのストレスフルな環境下で仕事をされているということでしょうか。

私の想像をはるかに超える環境なのでしょう。

患者としては、もっと照れずにもっと言葉を惜しまずに、素直にお礼を言わないといけないですね。
ても、、つい、照れてしまうんですよね、、、。
いちいち言わなくてもわかってよ、みたいな、、、。

少しボキャブラリーを増やして、練習してみようと思います。
返信する
ケイさん (aruga)
2015-07-24 22:34:03
医師がPTGを使うことが、(心理的に)被暴力下にあることと等しいこととは限りません。

むしろ、治療をしていた患者さんが亡くなられたり、治療に困難さが生じたりしたような、無力を感じたり、悲しみの中にあるような時が大半だろうと思います。
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Unknown (ケイ)
2015-07-25 01:02:51
失礼しました

もちろん、医師の方々が暴力にさらされている、という意味ではありません。

心理的にとてもとても強い傷つき体験を重ねられておられるのかなと、勝手に推察してしまいました。
そしてそのなかでPTGを得て激務を続けていらっしゃるのかな、と勝手に考えてしまいました。

もし、失礼な解釈でしたら、お許しの上、投稿を削除くださいませ
返信する
ケイさん (aruga)
2015-07-26 23:41:28
医療者に思いを寄せてくださり、ありがとうございます。
そうした患者さんがいらっしゃるので、がんばれるんだと思います。
返信する

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