緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

Stewart-Treves 症候群

2012年04月08日 | 医療

リンパ浮腫に続発する悪性腫瘍があることをご存知でしょうか。

脈管肉腫(Lymphangiosarcoma)で、
1948年に初めて報告された
Stewart-Treves Syndrome (STS)

乳がん、婦人科がんの術後のリンパ浮腫に続発して
発生するリスクがある肉腫病名です。

高タンパクなリンパ液が滞留すると
免疫環境が変化しはじめ、
その局所で脈管新生が促進され、
側副路を作ろうと体は反応します。
その結果、免疫的に脆弱な環境を作ってしまうこととなり
悪性腫瘍の発生につながると記されています。
また、多因子によって惹起されるため、
かならずしも、この機序に留まりません。


他文献によると1年未満で発症した報告もあるようですが、
多くは5~10年という経過の後に発症し、
脈管肉腫の中でも血管肉腫の5%がSTSであると報告されています。

海外論文では90%くらいが上肢発生(つまり乳がん治療後の続発性)で
乳がん広範囲な切除術後10年以上経過後の0.03%に発生するとされています。

国内の症例報告を見ると下肢の報告も多く、
海外のものが国内を反映させているわけではないと思われます。

また、皮膚・軟部組織の悪性間葉系腫瘍の1%以下(石原,2001)というものもあり、
前述の5%に比較しても、国内では少ないのかもしれません。




初発症状は紫斑です。

緩和ケア領域で、リンパ浮腫マッサージに携わっている方は多いと思います。
マッサージをするときに、必ず皮膚の状態を確認していると思います。
この時、感染と紫斑の違いを理解しておくべきです。

感染などで、炎症が起こっているときの発赤は、
血管の拡張、充血ですから
圧迫で皮膚の赤味は消褪します。

紫斑は、赤血球血管外漏出による発赤ですから、
出血斑であるため、
圧迫しても皮膚の赤味は消褪しません。

つまり・・

炎症の発赤は、押せば消える赤味

紫斑の赤味は、押しても消えない赤味

リンパ浮腫の発赤を見たら、
触診、圧迫時の発赤消褪の有無を確認し、
早期診断につなげましょう。
STSの発生頻度は高くはありませんが、
日々、念頭に置きながら診療することは
大変大切なことだと思います。




治療は、化学療法、IL-2投与、放射線治療等です。

本文中に文献を記載していないものの数字は
すべて、以下の文献内のものです。
この文献の引用文献から根拠となる論文が引けます。
DR. McHaffie, et al. Stewart-Treves Syndrome of the Lower Extremity. JCO, 2010,28(21), e351-e352.


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