江戸の妖怪、怪奇、怪談、奇談

江戸時代を中心とした、面白い話を、探して、紹介します。

安倍晴明、呪詛を破る事  「古事談」

2021-04-04 19:24:31 | 安倍晴明、役行者

安倍晴明、呪詛を破る事

古事談より

人道殿は、法成寺を建立した時、毎日、出仕した。その頃、赤い犬を愛でて、お飼いになった。
御堂へも毎日御供をしていった。
或る日、寺の門に入ろうとした時に、件の犬も御供していた。
しかし、御前に進んで、走り回って吠えた。
それで、しばらく立ち止まって、見渡したが、何も変わったことが無かったので、門に入ろうとした。
すると、犬は、御直衣(おのうし)をくわえて、引き留めようとした。

何かわけがあるのであろうと、睛明の朝臣(せいめいのあそん)を召しよせた。
そして、その理由(わけ)をたずねた。
睛明は、目を瞑(つぶ)ってしばらく考えてから答えた。
「あなた様を呪詛しようとしている者が、道に呪詛の物を埋めて、上を通るのを、待ちかまえています。
今、あなた様は運が強く、御犬が吠えて、事が露見しました。
犬は、もとより少し神通のある生き物です。」
と言いながら、その場所を指し示し、地面を掘らせた。

すると、土器ニつを打ち合せて、黄色い紙をねじって十文字にしたものが堀り出された。
睛明は、
「この術は、極めて秘密の呪詛の秘儀です。
睛明の他に、当世では、知っているはいないでしょう。
但し、道摩法師のしわざである可能性があります。
確かめてみましょう。」と申し上げた。

そして、懐紙を取り出し、鳥の形に彫った。
呪文を唱えてから、それを投げ上げると、白鷺になり、南を指して飛んで行った。
この鳥の落ちた所が、呪詛した者の住みかです、と申し上げた。

下の者達が、白い鳥を追いかけて行くと、六條坊門の萬里小路(までのこうじ)川原院の古師の織戸の内に落ちて止まった。
そこで、踏み込んで捜した所、一人の僧(道摩)がいた。

すぐに捕らえて、訳を問いただした。
道摩は、堀川左府の言葉によって、術を行ったことを白状した。

しかし、実際には害を与えなかったので、本国(播磨)に追放された。
但し、今後は、呪咀のようなことをしない、との誓約書を書かせた・・・。云々。



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