91番 法金剛院
京都市右京区花園扇野町49
山号 五位山
宗派 律宗
本尊 阿弥陀如来
開基 待賢門院
京都のお寺が大好きだ。おすすめ一番はここだ。
JR花園駅のすぐ前、妙心寺三門の西南へ数分のところにある。
待賢門院はこのブログの主役と言っても良い。第74代鳥羽天皇の中宮でありながら、第72代白河天皇の子を宿し第75代崇徳天皇の母となり、さらに鳥羽天皇との間に第77代後白河天皇を産み国母と呼ばれた歴史上稀な女性である。法金剛院はその待賢門院の創建となっているが、平安初期の高級貴族清原夏野の別荘を文徳天皇の発願により天安寺としたものを、待賢門院がさらに法金剛院としたものだ。
国の特別名勝庭園には蓮の花が咲き、日本最古の人口滝の跡である「青女の滝」がある。現在は奥の五位山からの水脈は尽きていて滝とは言えない。さらに浄土式庭園は見事なものだが、池の背景にはマンションが建設されていてややガッカリする。
しかし、見事なのは本尊の阿弥陀如来坐像である。丈六仏(立てば5m以上)なので座像でも存在感があり、慈悲深く眼差しを向けてくれる。平等院の国宝阿弥陀如来坐像と同様典型的な定朝様仏像である。直系弟子の仏師院覚作である。この阿弥陀様の前で晩年の待賢門院が、どのような気持ちで過ごしたのか。まだ女性としての兆しが訪れる前から白河天皇と同衾し、白河の孫の鳥羽天皇に差し渡された後も白河と逢瀬を繰り返し、月経の周期まで調べて後の崇徳天皇をはらんだ。その間、鳥羽天皇には添い寝はしても交合は許さなかった。小説「天上紅蓮」にはその間の描写が生々しい。手淫により処理された鳥羽天皇はどんな気持ちであっただろうか。本堂から庭園など一周しても20分ほどの境内なので、椅子に腰かけて異常な宮廷事情を想像して見た。なんだかそれも良いか、と思えた。