第9番 貴船神社
京都府京都市左京区鞍馬貴船町180
主祭神 高龗神
家内安全、商売繁盛、心願成就、厄祓い
参道
左京区は北に広い。比叡山電鉄(叡電)貴船川口駅から徒歩20分以上歩く。周辺は料理旅館が多くあり夏には「流しそうめん」をやっている。貴船川(鴨川)の源流に近いこのあたりでは真夏でも水はかなり冷たい。流れてくるソーメンを奪い合うこのような趣向はコロナ禍で絶滅する料理(?)の一つかも知れない。
周辺は、鞍馬寺の境内である鞍馬山の裏手口でもあり、健脚は鞍馬寺、由岐神社、そして貴船神社の奥宮へと歩いて踏破するようだ。筆者は、間際まで車でお伺いした。冷たい雨の中、たずねる人も少ない頃にお参りした。
昼間でも暗い石段を登り、さらに奥宮に行く。
黄船?
反正天皇の時代の創建だが、初代神武天皇の母である玉依姫が、黄色い船に乗って淀川をさかのぼり当地に至ったと言う伝説がその由来なので誠に古い。黄船が貴船。さらにすべての根源を表わす「気生根」とも言う。従って発音は、「きふね」である。奥宮にはその黄船が苔むして石船(いわぶね)になったものが現存する。従って、水の神様で、全国に約450社ある貴船神社の総本社である。
神木
歴史が古い為もあり、神社のあらゆるものの起源とも言われる。まずは、「絵馬発祥の地」。水の神様なので「祈雨の神」として雨乞いには「黒馬」、止雨には「白馬」を奉納し祈願した。後に生き馬から「立板馬」(馬の形に着色した板)を使うようになり「絵馬」の原型となる。さらに、「丑の年の丑の月の丑の日の丑の刻」に貴船明神が貴船山に降臨したとの伝説から、「丑の刻参り」の原点もこちらのようだ。平安の昔には深夜にここにお参りするのが習わしだったようだ。今、境内に佇み思う。筆者は深夜に一人お参りする勇気はない。昨今は、「良縁・縁結び」などの御利益もうたっている。
大吉
有名な「水占い」をやって見た。枠だけ印刷されてほぼ真っ白な紙を500円でいただく。境内の清水につけると吉凶が現れる。中吉と出た。恋愛運大いに吉と。(もう遅い。)
このように霊験あらたかな当社だが、占いする人の年齢までは分からないようだ。さらに、明治以前まで上賀茂神社の摂社であったことは意外だ。途中、社殿が焼失した為とも言われている。
また、和泉式部の歌碑も有名でぜひ見ておきたい。男(夫の藤原保昌)に疎んじられている頃、貴船神社に参拝し、川に蛍が飛んでいるのを見て詠んだ短歌として、
「ものおもへば 沢の蛍も わが身より あくがれいづる 魂たまかとぞみる」
という歌である。後拾遺和歌集に収録されている。その頃か、和泉式部は巫女に縁結びの祭を行わせた。巫女は、和泉式部の着物の裾をめくって陰部を露出させる作法をすることを迫った。和泉式部はそれを拒否した。その様子を見た夫の保昌がその態度に感じ入って、その後は夫婦の寄りが戻ったという話も伝わる。セクシーな格好で男の気を引くのは今も昔も不変の手口なのか。また、鎌倉初期の源義経や弁慶の時代も実感する為にも、鞍馬寺とあわせて周遊するコースをお勧めする。天気の良い日に。