番外
3月15日中心に、京都各地で釈迦涅槃図を公開する涅槃会を訪ねて来た。
京都五山 第5位 東福寺
まず、東福寺。画僧明兆作の大涅槃図は、とにかく大きいのである。
本堂外から、涅槃図を撮影
通常は非公開の本堂に入ると、縦12m横6mの大きな涅槃図が目に飛び込む。釈迦が入滅されたのが旧暦2月15日、今はその前日の(新暦)3月14日から3日間、釈迦臨終の図である涅槃図を公開して供養する。
ここの涅槃図の特徴は、魔よけの猫が描かれている事だ。明兆が涅槃図を書いている時、傍らに一匹の猫が度々やって来る。『猫は由来罪業深重にて仏の慈悲にも浴し兼ねたるものなるが今仏涅槃の絵具をもち来たりし功徳に依り罪業消滅魔性退散し速やかに仏果を成ぜり』として、画中に加えたという。
はなくそ?
本堂横では、「花供御(はなくそ)」が売られている。真如堂などでは、「花供曽」と書く。やはりお釈迦様の「はなくそ(鼻糞)」らしい。涅槃図にお供えした大きな御鏡餅を砕き霰にしたものだ。涅槃会の日にそれを頂いて供養するのである。
また、天井に目を向けると、堂本印象作の迫力ある「双龍図」が見える。
隣の休憩所で、ハナクソと共に甘酒の接待を頂いて、即宗院と竜吟庵を見て帰ることにする。
偃月橋の棟上げの記録 慶長年間となっている偃月橋
東福寺には、三つの有名な橋がある。西から、臥龍橋、有名な国宝通天橋そして偃月橋。その東端の偃月橋を渡り、まず、即宗院へ行く。今年の大河ドラマ西郷どんゆかりのお寺だ。薩摩島津家の菩提寺である。西郷ゆかりの品もあり、庭園が美しく落ち着いた名園だ。
法然の所縁の庭園
国宝「法然上人絵伝」(知恩院所蔵)には、この庭園の池の橋において説諭を行う上人が描かれている。相手は九条家の祖、兼実とされる。頭上には「頭光」という光の輪が輝いている。寺名は、島津家6代目当主氏久の院号から、即宗院となった。ガイドの若者が武士の戒名から寺名が付くのは珍しいと解説していたが、等持院は足利尊氏、金閣寺(鹿苑院)義満、阿弥陀寺(総見院)は信長と、例は幾らでもある。
バケツと柄杓の置き場か?
龍吟庵は、国宝の方丈と重森美玲の庭が良い。
東庭「不離の庭」は、無関普門(東福寺3世住持で、南禅寺開山)が、幼少の頃の話に由来する。中央の石を、両側の2つの石が守り、周辺に5つの石が配されている。
普門は、小さいころ疱瘡を患った、今の天然痘は不治の病である。感染の防止もあったであろう昔の習わしとして遠くに捨てられることになった。しかし瀕死の子供普門の傍らには、2匹の犬が守るように寄り添う。周辺の狼の襲撃にも耐えて、3日後両親がなお生きている子の姿を発見し、只ならぬ運命の子と知る。その逸話を重森美玲が庭に表現した。敷石の赤身は、生命力を表現していると思う。朝からの雨に湿った庭石は、一層物語のイメージを引き立たせる。
久し振りに、重森美玲の世界に浸った。
現実社会の不条理から逃れた瞬間だった。
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