三年前に伊豆長岡に行ったとき、町営の足湯で出会った地元のおじさんに、
次に来るときは三養荘に泊まったらいいよ。あそこは別格だよ。
天皇もお泊まりになったところだからね。
と、自慢げに話してくれたのを思い出し、
じゃぁ行ってみようかと予約を入れました。
出発したのは金曜日の朝。
到着したのは午後の3時。
場所は狩野川に面した温泉街の入口で、
いかにも高そうな数寄屋造の旅館です。
もともとは旧三菱財閥の創業者・岩崎弥太郎の長男・久弥氏の元別邸で、
そこに15棟の建物を建てて旅館「三養荘」として昭和22年に営業。
それからさらに33年に本館「みゆき」、42年に離れ「高砂」「花月」
「きぬた」を増築し、今日に至っているとか。
経営はプリンスホテル。敷地面積は42000坪。
あまりに広大な庭園に、思わず興奮してしまいました。
ちなみに三養荘の名の由来は、岩崎家の家訓、蘇東坡(そとうば)の「三養訓」
安分以養神 (分をわきまえて、精神を安定させること)
寛胃以養気 (胃を楽にして、心身の元気を養うこと)
省費以養財 (無駄遣いをやめて、財産を作ること)
から取ったもの。なるほど哲学を感じます!
というわけで、まずはチェックインからご紹介。
事前に到着時刻を告げていたからか、玄関前で番頭さん、仲居さんが出迎えてくれました。
中に入ると美しい飾り雛と庭園が目に飛び込んできます。
素晴らしい!
そして仲居さんの案内で、畳敷きの廊下を歩いて奥へ奥へと進んでいくと、
絨毯敷きのゆるいスロープの廊下、さらに奥へと進むと別棟につながる階段があり、
それを上ると平屋造りの離れが3棟ほどありました。
写真は飾り雛 畳敷きの廊下 絨毯のスロープ とにかく広い旅館です
ちなみに本日泊まった部屋は、本間、次の間、化粧の間に、庭園に面した広縁と、
プラス、源泉掛け流しの温泉と仲居さん用の台所部屋もついた贅沢な広さの離れです。
どの部屋も結構な広さだそうですが、なんとこの部屋、
天皇陛下や皇太子ご夫妻もお泊まりになった離れとか。(びっくり!)
もうここまでくると古くても文句は言えません。
むしろ文化財級の建物や庭に、いまどきの高級旅館じゃ味わえないスケールの大きさを感じます。
あっぱれ! あっぱれ!
ただ、ちょっと気になってしまったのが従業員の年齢。
ほとんどの仲居さんが70歳以上かなぁ~に見えるお年寄りで、
部屋食ではないこと(プランによってはあるようです)。
また、経営がプリンスということで、以前泊まった箱根の龍宮殿を思い出し、
食事に不安を感じてしまいました。
嫌な予感です。
とくにこの歳になると張りぼての高級旅館や懐石料理はもう沢山って感じ。
残りの人生短いので常々ホンモノに触れたくなります。
なので企業的な観光会社やホテルチェーンにありがちな、
コストパフォーマンスはせっかくのハレの気分を台無しにすることが往々にして起こります。
前回の龍宮殿もそうでしたし、今井荘もそう。はたして三養荘はどうなのか・・・・
今回もまた不安な気持ちがよぎります。
まぁ、これだけ立派な建物や庭園を残しているのだから、
きっと老舗のプライドはあるのだろうと思っていました。
が、現実は期待とは正反対の内容で、すべてが裏切られたという感じです。
食事処での夕食は仕方がないとしても、事前に注文した正雪が出てきません。
仲居さんが伝えなかったのか、担当のおばちゃんが忘れてしまったのか、
注文したお酒はまだですか? と尋ねてみたら、
眠そうな顔でちょっとお待ちくださいと300mlの瓶をポンとテーブルに置きました。
フツーこの手の旅館なら容器に入れ替えるとか、
あるいはクラッシュアイスに入れてくるとか、
もっと客をもてなす演出があるもの。
まるで食堂って感じの合理的な対応に、それから先の懐石の内容もすべて読めてしまい、
白け気分でさっさと食事処を後にしました。
あまりにひどかったので、料理の写真は載せません。
代わりに朝食の写真で感じ取ってください。
サービス業という職業柄、何度気も経営者の目で物事を見てしまいます。
もうちろんこうした反面教師もいい勉強にはなりますが、
いい店、いいサービス、いい商品の鉄則は「客の期待を裏切らない」努力があるものです。
景気が悪くなったからコストを下げなければない。
人件費を抑えなくてはならない。
当然質は落ちますが、それを感じさせないぐらいの創意工夫があるか否か。
努力しているか。
厳しい言い方ですが、成功している店には必ず想像力があります。
来週は1年ぶりにハワイへ行きます。
今度の宿泊はハレクラニです。
ハワイを代表するホテルとして常にトップの座をキープしています。
その秘訣はどこにあるのか。
どんな創意工夫があるのか。
一週間、じっくり観察してこようと思います。
ではまた