知床遊覧船の社長が記者会見で、繰り返す土下座の姿を映像で見た人は多いと思います。
私が受けた感じは、、、
土下座している時に近寄り、頭を踏みつけても心が痛まない図太い人間を見た気がしました。
この種の人間は周りを見渡せば少なからず存在します。
特に中小企業の経営者で、その業界の中心から外れてはいるが、結果的にはわりと堅実に経営を続けている人に多い。
同調性に欠けるので同業者には嫌われますが、その業界の中で独自に居場所を確保して、社会的には問題なくて外部からは判断できません。
独特の考えから独特の営業方法を思い浮かべる。そこに、一見は頭の回転が良さそうな人が味方に付くと、独特の考えを装飾して受け入れられやすくアレンジします。 良いように言えば改革です。
それが「あの社長と船長」です。
事故のニュースが流れた当初から異様でした。
命が危ぶまれている状態なのに、同業者から聞こえてくるのはこの2人の批判ばかり。
普通は日頃から快く思っていなくても、船長が亡くなっている可能性が高い状態での批判は控えます。
それが出るわ出るわで、証言する人全員と言って良いほどです。
この2人の考え方を一番よく表しているのが「条件付き運航」です。
この条件とは、「安全か危険か」の判断を示している様に聞こえますが、それはすでに運航している状態での話で、運航を開始する前では「利益か安全か」のいずれをとるかの判断になっています。
そもそも営業期間自体が利益を優先して、他社がやっていない時に営業を始めています。
何故、他社が営業しないのか、その理由を軽視している証拠でもあります。
飛行機・鉄道・船舶などでの営業は、利益と安全を天秤にかけると絶対に安全が重くなければなりません。
個人で釣りをする為に安全を軽視して沖に出るのも避けるべきですが、それならば自己責任と言う事である程度は理解できます(責任は取れない)
商売で安全より利益を優先する仕事は多々ありますが、他人に被害が及ぶ恐れがある場合は許されない。
例えば高所での作業だと自分には命綱、落下物で他人に危険が無いように一定の範囲に柵をするとか、落下防止のネットを張るとかします。 命綱は自己の利益の為で、それ以外は他人の安全の為。優先するのは後者で、命綱をしなくて落下しても自己責任です。
知床半島を巡る遊覧船は船が沈没しなくても、客が海に落ちるだけで命に係わる場所だと言う認識が余りにも甘い。
波の少ない瀬戸内海とか、海水の高い沖縄の海とは違う事が、どれだけ危険な事なのかが解っていない。
私は徳島で生まれ育ったので、今でこそ本四架橋があり車での行き来になったが、それまでは船に乗る事も多かった。
南の海に台風があり、この便で最後という船に何度も乗ったことが有ります。
客船・フェリー・高速船の全てで運休直前の船に何度か乗りました。
ある程度慣れていても恐怖を感じます。
客船・出航して30分すぎると船が傾き真横に海面が見える状態になり、その状態のまま前後に大きく揺れます。
泣き出す子供、口を押えてトイレに駆け込む人、うつむいたまま座席で動かない人、不安そうに周りをキョロキョロ見渡す人、船員に大丈夫かと何度も聞く人、そんな船内が1時間以上続きます。
フェリー・港の光が見え荒れた海から解放されると安心していたら、港の入り口まで来ているのに入港しないんです。
港を注意してみると、船が付く場所が有りませんでした。他のフェリーなどが避難して、私が乗っている船が接岸できない状態になっていた。結局は港の外で待機する事になったのですが、進まない船は異様な揺れ方をします。木の葉のように揺れながら潮に流され、暫くすると元の位置に戻る為に動きます。それの繰り返しを荒れた海で一時間半ほどやられると、客室は不安そうな人や吐く人が続出で、さすがに私も船酔いしそうになりました。
高速船・最初から海が荒れていたので客は定員の1/3しか乗せませんでした。その客も船の安定の為に船の後部に乗せられた。それで乗船を止める人もいたのですが、私は乗る事にした。船酔いはしないだろうし、安全は船長が正しく判断しているだろうと。 結果、もう二度と乗らないと感じました。
高速船自体が元々波には弱い作りで、横に揺れると復元力は弱い。船の前は何度も海面から浮き上がり、次に海面を叩くように落ちてきます。縦に揺れている場合は大丈夫だろうと・・・・言い聞かせていました。
浮き上がった船が落ちてきた時は、ものすごい衝撃で船が割れてしまうのではと不安になったり。その瞬間はまるで海中に居るような感じになり、窓は海水(波)で覆われます。
他にも船でスリル満点の事は何度も有ったが、
そんな時に心を落ち着かす事が出来るのは船員の平気な顔だけです。
プロにとってこの状況は心配ない状況なんだと
船に乗る私たち一般の客は海のプロを信頼し頼り切っています。
私たちには乗船する前に、この船は安全かどうか、海の状態は安全なのかなどの判断を正しくするのは無理です。
大袈裟ではなくて、本当に命を預けているのです。
安全と利益を天秤に賭けたら安全が重いなんて言う話ではなくて、、、
安全を他の事と天秤にかける事をやってはならないと強く認識して欲しい。