南野島男のGood Times

日常感じたことを面白おかしくエッセイ風に書きつづります。
これぞ笑いと勇気の玉手箱!

長崎カステラ事情

2006-09-08 22:43:23 | Weblog
長崎に旅行に来た人は決まって長崎ちゃんぽんを食べたがる。
東京に住んでいる友人が遊びに来た時も「おいしい店に連れて行って」と言うものだから何も考えずリンガーハットに連れて行ってあげた。
「エーッリンガーハットかよ!」というリアクションから察して、おそらく友人は中華門くぐって魔法の鍋でもあるような新地の店を期待していたのかもしれない。しかし意外と僕みたいな長崎人は新地の中華街の店にはあんまり行ったことがなく、どこの何てお店がどうおいしいのかはっきり言ってよく知らない。
本当は究極のちゃんぽんの味がそこにはあるのだろうが、地元の人間ほど日頃食べてるのは安くておいしいリンガーハットだったりする。
ガイドブックを読み込んだ観光客の方がよっぽど詳しいのである。

 カステラにしたってそうだ。
修学旅行生をはじめとする観光客は、長崎に来たならば親の遺言にでもあるかの如く必ずカステラを買って帰る。
じゃあ長崎の人間はしょっちゅうカステラを食べてるかというとそうでもない。
信州の人が朝昼晩そばばっかり食べてはいないように長崎人で毎日朝はコーヒーにカステラという人はめったにいないはずだし、腹減ったからコンビニでカステラでも買って食べようかなんて少なくとも僕は考えたりしない。
僕らがカステラを口にする時よく考えてみるとそれは「いただきもの」である場合がほとんどだ。
長崎では自己消費分としてのカステラの購入が条例で禁止されている。というのは真っ赤な嘘であるが、要するに長崎人にとってカステラは食べ物ではなく「気持ち」と見なすのが正しいかもしれない。
よく「カステラの一つでも持って頭下げてこんば」と人生の諸先輩方のご指導ご鞭撻を耳にする。
いわゆる誠意を見せたか見せないかは、長崎の常識としては福砂屋のカステラをさげて来たかどうかで決まる。
文明堂や松翁軒ではダメというわけではないのだろうが、詫びる気持ちを表すことに関しては歴史と実績が全然違うらしく、おそらく今まで何万件のもめ事を平穏に治めたり、何万人の頭がその上で下げられたのかは計り知れない。
そんな意味合いがカステラには含まれているせいか、よその人が思っているより長崎人は本当はカステラを食べていない。

 もっと食べていないのがカラスミである。
僕もカラスミがぼらの卵からできていることくらいは知ってはいるけど、どん味かと聞かれるとあんまり自信がない食べ物である。
このカラスミにしたって長崎では日常的に食卓に上っているという認識がよその人にはあるようで、朝飯には必ず食べると思っているらしい。
同じ海産物でも博多の辛子明太子とはちとばかし違うのである。
その証拠に、コンビにのおにぎりに「辛子明太子入り」はあっても「カラスミ入り」はない。