2021.04.27撮影
学名 Galium odoratum
和名 クルマバソウ(車葉草)
英名 Sweet woodruff
アカネ科(Rubiaceae)ヤエムグラ属(Galium)
クルマバソウ(Galium odoratum)です。和名があるので、ホッとしました。
和名がないような植物を紹介するときには、困るんです。そんな時は、学名や英名をカタカナにしたり(例:イヌラ・フッケリ)、できれば、説明的に訳したり(例:「モモバギキョウ」)、してみます。
真夏に涼やかな、キク科のイヌラ・フッケリ
モモバギキョウ、と呼んでいい?
クルマバソウ(車葉草)の葉は、葉が軸の周りに放射状に出ます。和名は、これを「車の葉」と捉えたものです。葉はやや光沢があります。冒頭の画像は、まだ葉が若い時で、緑と言っても、黄緑色にやや傾いています。この「車」が軸に段々につきます。
画像中、右上の赤いものは、原種のチューリップ(Tulipa)のツボミです。クルマバソウが20センチ(せいぜい、30センチ)ぐらいにしかならないので、原種チューリップの小ささがうかがえます。
それでは、次の画像で、花の詳細をご覧ください。ひとつひとつは、2〜5ミリ程度の小さな花です。花弁は4枚。
2022.05.09撮影
学名 Galium odoratum を見てみます。属名 Galium は、ギリシャ語の galion「ベッド用のわら」から来た新ラテン語で、galion は、多分、ヤエムグラ属(Galium)の一定の植物が gala「乳」をチーズとして固めるのに使われたため、であろう、とされます。
Galium(英英辞典)
種小名の odoratum は、「匂う」という意味です。英語の odor「匂い」と同語源です。ラテン語の方も、英語の方も、いい匂いと悪臭の両方を指します。
クルマバソウは、そのままではそれほど匂いませんが、つぶすといい匂いがします。その特性を活かし、中世ヨーロッパでは、土間や床にまき散らしました。その上を歩くと、いい匂いがするのです。
これは、体や住居の悪臭を隠蔽するためのものです。多くの種類の植物が使われました。その中には、虫よけなどの役に立つものもあります。おもしろいのは、干し草のような匂いがするものが好まれたことです。牧畜文化だなあ、と思いました。
花の固まって咲いているのを、どうぞ(次の画像)。
2021.05.11撮影
上の画像中、左にかたまって出ている葉はスノードロップ(Galanthus)の葉です。スノードロップの学名 Galanthus の Gala も「乳」です。花はずいぶん前に終わっているのですが、このように、葉を、「見苦しい」からと切り取らずに、残して、自然光に当てておくのが、球根を健康に保つために大切です。
画像右側には、1枚だけ、「秋ざきクロッカス」イヌサフラン(Colchicum autumnale)の大きな葉が写っています。この後、夏には葉が枯れ、秋に花が咲きます。
秋咲きクロッカスの色が・・・
英名の Sweet woodruff は、sweet は「甘い=いい匂い」、wood は「木(のように立っている)」、ruff はヨーロッパ人が首の周りにつけていた「襞襟(ひだえり)」です。これらを合わせ、Sweet woodruff は「いい匂いのする襞襟のようなものをつけて木のように立っている草」という意味でしょう。
襞襟
2022.05.25撮影
クルマバソウは、日陰でどんどん増えます。ですから、と言うとひどい言い方ですが、葉っぱの傷んだものは、どんどん取り去っていけばいいです。
また、上を歩いても、だいじょうぶ。倒れますけど、起き上がってきますから。踏みつけたところは、顔を近づけば、少しいい匂いがしますよ。芳香が漂ってくる、ほどではありません。
クルマバソウの茎、というか、軸というか、は、あれは、引っ張ってもすっぱりとは切れません。茎の外側は折り取れるんですが、茎の中を走っている、あれは、植物学的にはどういう名前なんでしょう、丈夫な太めの糸のようなものが残るんです。
上の画像で見えているハート型の葉は、ドクダミ(Houttuynia cordata)です。これもグランドカバーになりますが、歩く場所には作れません。
クルマバソウも、歩く場所よりも、木などの下に植えるといいです。また、春の球根植物が咲いた後に残る葉っぱの目隠しにも使えます。
2022.09.10撮影
上の画像は、秋口のクルマバソウです。葉っぱの緑が濃くなり、硬さも増しています。花は終わり、小さいタネがついています。タネは次のように拡大すると、見やすいですか。下の画像の左下が一番わかりやすいと思います。
あれ? 画像の真ん中より左手、なんだ、これは? 毛虫がいる? 他の植物のタネが引っかかっている?
2022.09.10撮影
では、セイヨウジュウニヒトエ(Ranunculus repens)とのツーショットをどうぞ。あ、クルマバソウさん、焦点、合ってないわね。ごめんなさい。
2022.05.29撮影
クルマバソウ今年四国で初めて出会いました
どんな香りなのかつぶしてみればよかった
この次出会ったときは香りを確かめてみます
匂いは、ほのか、程度ですから、ご期待に添えないかもしれません。でも、匂いは、確かにします。部屋をいい匂いにするには、多分、大量に集めたんでしょう。そして、乾かすと、匂いが強くなるそうです。