以上が『あんハピ♪』はなこの壮絶な不幸エピソードであるが、そんな彼女さえも上回る不幸な二次元キャラは検証するまでもなくいくらでも存在する。不憫な環境に曝すことで読者や視聴者は全力で応援したい気持ちになり、作品の人気に繋がるのかもしれない。今回はその中から2人の女性を紹介する。不幸の先には涙無しには語れないドラマがあった。
<佐倉慈(さくら めぐみ)>
学校で共同生活する“学園生活部”の日常を描いた平和な学園ものかと思いきや、実態は街中に溢れるゾンビから身を守る為に学校で生活せざるを得ない不幸な女子高生たちのサバイバル漫画だった衝撃作『がっこうぐらし!』。アニメ化された際には、この部活の顧問である佐倉先生(通称めぐねえ)が原作以上にフィーチャーされ話題に。特にゾンビ発生当日の出来事は3話でアニメオリジナルとして詳しく描かれた。
「教師に向いていないとまでは言いません。しかし、生徒との距離感を間違えてはいけませんよ。友達感覚といえば聞こえは良いかもしれませんが」
上司から叱責される佐倉。優しい性格が故に生徒との距離が近すぎることが問題になっていた。
放課後は丈槍由紀(たけや ゆき)とワンツーマンでの補修。
「テストは好きじゃない。でも、めぐねえと一緒に居るのは、そんなに嫌いじゃないよ」
由紀の一言で、佐倉にようやく笑顔が戻る。
「めぐねえぐらいにしか、相談できる相手居なくて」
今度は恵飛寿沢胡桃(えびすざわ くるみ)の恋愛相談に乗る佐倉。上司に怒られてはいるが、多くの生徒に信頼される立派な教師でもあった。
(私、向いてないのかもしれない、先生。でも……)
間もなくして、街の多くの人々がゾンビに感染されている事実を知る。
『あの時、屋上にいたのは、由紀さん、悠里さんと、もう一人女子生徒。(中略)最初に気づいたのは由紀さんで、校庭を指さした。何か暴動のようなものが起きているのがわかったが、現実味がわかなかった。それから胡桃さんが息を切らして駆け上がってきて、そしてドアの外にいた無数の生徒たち。悲鳴』(原作4巻掲載の佐倉著『部活動日誌』より)
学校で非難ではなく“部活をしている”ことにしよう。若狭悠里(わかさ ゆうり)との話し合いで誕生した“学園生活部”。皆が前向きに生きることで当初泣いてばかりだった由紀も次第に明るくなり、その笑顔は佐倉たちにも力をくれた。しかし、
『これはたぶん遺書だ。私は罪を犯した。(中略)丈槍由紀の時間が止まったのは私のせいだ。由紀さんの笑顔を望んだのは私だ。学校生活の幻想を作り上げたのも。彼女が退行した時に、それを好ましいと思った私がいた』(同)
由紀はゾンビの居ない学校を幻想していた。彼女の中では何も起きていない。加えて精神状態の幼児退行。彼女の笑顔を望むあまり取り返しのつかないことをしてしまい、自分を責める佐倉。
この日誌を書いて何日後だろうか。佐倉は命を失い、ゾンビになった。
(つづく)(#6:1200字)
<佐倉慈(さくら めぐみ)>
学校で共同生活する“学園生活部”の日常を描いた平和な学園ものかと思いきや、実態は街中に溢れるゾンビから身を守る為に学校で生活せざるを得ない不幸な女子高生たちのサバイバル漫画だった衝撃作『がっこうぐらし!』。アニメ化された際には、この部活の顧問である佐倉先生(通称めぐねえ)が原作以上にフィーチャーされ話題に。特にゾンビ発生当日の出来事は3話でアニメオリジナルとして詳しく描かれた。
「教師に向いていないとまでは言いません。しかし、生徒との距離感を間違えてはいけませんよ。友達感覚といえば聞こえは良いかもしれませんが」
上司から叱責される佐倉。優しい性格が故に生徒との距離が近すぎることが問題になっていた。
放課後は丈槍由紀(たけや ゆき)とワンツーマンでの補修。
「テストは好きじゃない。でも、めぐねえと一緒に居るのは、そんなに嫌いじゃないよ」
由紀の一言で、佐倉にようやく笑顔が戻る。
「めぐねえぐらいにしか、相談できる相手居なくて」
今度は恵飛寿沢胡桃(えびすざわ くるみ)の恋愛相談に乗る佐倉。上司に怒られてはいるが、多くの生徒に信頼される立派な教師でもあった。
(私、向いてないのかもしれない、先生。でも……)
間もなくして、街の多くの人々がゾンビに感染されている事実を知る。
『あの時、屋上にいたのは、由紀さん、悠里さんと、もう一人女子生徒。(中略)最初に気づいたのは由紀さんで、校庭を指さした。何か暴動のようなものが起きているのがわかったが、現実味がわかなかった。それから胡桃さんが息を切らして駆け上がってきて、そしてドアの外にいた無数の生徒たち。悲鳴』(原作4巻掲載の佐倉著『部活動日誌』より)
学校で非難ではなく“部活をしている”ことにしよう。若狭悠里(わかさ ゆうり)との話し合いで誕生した“学園生活部”。皆が前向きに生きることで当初泣いてばかりだった由紀も次第に明るくなり、その笑顔は佐倉たちにも力をくれた。しかし、
『これはたぶん遺書だ。私は罪を犯した。(中略)丈槍由紀の時間が止まったのは私のせいだ。由紀さんの笑顔を望んだのは私だ。学校生活の幻想を作り上げたのも。彼女が退行した時に、それを好ましいと思った私がいた』(同)
由紀はゾンビの居ない学校を幻想していた。彼女の中では何も起きていない。加えて精神状態の幼児退行。彼女の笑顔を望むあまり取り返しのつかないことをしてしまい、自分を責める佐倉。
この日誌を書いて何日後だろうか。佐倉は命を失い、ゾンビになった。
(つづく)(#6:1200字)