経済産業省が先端半導体の製造装置の輸出管理を厳格化するのは、中国による軍事転用に警戒を強める米国に配慮したためとみられる。日本の製造装置メーカーは中国向け輸出も多く、業績への影響が懸念される。 「我が国は半導体製造装置の分野で極めて高い競争力がある。技術保有国として国際社会における責任を果たしていきたい」。西村経産相は31日の閣議後の記者会見で、厳格化に踏み切った理由をそう説明した。 経産省は外国為替及び外国貿易法(外為法)の省令を改正し、半導体の性能を高める微細化に必要な露光装置など23品目の輸出を許可制にする。対象は14ナノ・メートル(ナノは10億分の1)以下の先端半導体が製造できるレベルの製品だ。 米中の覇権争いは先端技術でも激化し、米国は先端半導体が軍事転用される恐れがあるとして、中国への人工知能(AI)やスーパーコンピューターの開発につながる半導体技術や装置などの輸出を事実上禁じる措置を導入。有力な製造装置メーカーのある日本やオランダにも同調を呼びかけた。 日本はこれまで輸出管理について、通常兵器に転用される危険性がある先端品や技術の輸出を管理する国際的な枠組み「ワッセナー・アレンジメント」での合意に従って対応してきた。だが、この枠組みにはロシアも参加し、合意形成が難しい状況となっていた。 西村氏は輸出管理の強化について「米国やオランダを含む同志国との意見交換を踏まえ、我が国として必要と考えた」としつつ、「特定の国を念頭に置いたものではない」と強調した。ただ、簡略化措置の対象とならない中国は半導体の製造や開発に影響が出る可能性があり、反発は必至だ。 日本半導体製造装置協会によると、日本製装置の国内外への販売高は3兆4430億円(2021年度)に上る。中国向けは9924億円と3割程度を占め、国・地域別で最も多い。 日本半導体製造装置協会によると、日本製装置の国内外への販売高は3兆4430億円(2021年度)に上る。中国向けは9924億円と3割程度を占め、国・地域別で最も多い。 東京エレクトロンは経産省の発表について「コメントする立場にない。規制内容を確認の上、適切に対応していく」とコメントした。回路を焼き付ける露光装置を製造するニコンの広報担当者は「まずは規制の内容を精査し、規制内容にかかわらずルールにのっとって対応する」と話した。 読売新聞