立憲民主党の小西洋之参院議員が、衆院憲法審査会の毎週開催を「サルがやることだ」と侮辱した。与野党の反発を受け、立民は小西氏を憲法審の野党筆頭幹事から更迭し、追加処分で「幹事長による注意」とした。党規約が定める4段階で最も軽い処分だ。
便宜上「サル発言」問題と表記しているが、より大きな問題は、その後の小西氏の言動だと思っている。発言を報じたメディアに関し、ツイッターに恫喝(どうかつ)めいた投稿を連投したうえ、記者会見で「名誉毀損(きそん)に該当する」などと主張し、法的措置もちらつかせて報道を批判した。
ところが立民は、こうした言動をさほど問題視していないように見える。岡田克也幹事長は「記者にいろいろ聞かれて、言わなくてもいいようなことを言った」と述べたが、記者が挑発したせいだと言わんばかりだ。小西氏自身も、サル発言は謝罪したものの、会見での発言やツイッター投稿は取り消していない。
小西氏の報道機関に対する言動を、あまり大ごとと捉えていないのは立民だけではない。与野党全体にそんな雰囲気が感じられる。
「サル発言」には大いに問題があるが、あれだけ与野党の反発を招いたのは、当の議員が侮辱の対象だったからだ。一方で、恫喝めいた言動の対象は報道機関だ。
大仰な言い方だが、報道機関は国民の「知る権利」を代表している。少なくとも国民の一部である読者や視聴者に代わり、取材対象に向き合っている。国会議員はもちろん国民の代表だが、自分たち議員への侮辱には敏感でも、報道機関の向こうにいる国民に向けられた恫喝には鈍感だということにならないか。
「事実に基づかない記事、バランスを欠いた報道があったとき、政治家が指摘したり訂正を求めること、名誉毀損として裁判で争うことは権利として認められている」
岡田氏は会見でそう述べた。それはその通りだが、程度の問題がある。自身の考え方を一方的に押し付け、法的措置をちらつかせて報道の「修正」を迫るのは、一線を越えているのではないか。
小西氏は、放送法の解釈をめぐる総務省文書について、安倍晋三政権が報道機関に政治的圧力をかけたと追及してきた。今回の一件は、批判が自らに跳ね返る「ブーメラン」の最たるものだ。立民がきちんとけじめをつけられないようでは、今後の追及に何の説得力もなくなる。
産経新聞