Fuji Trip!

水豚先輩の週末旅日記

冬雨の鎌倉江の島散歩 江の島篇

2016-04-03 00:55:23 | とりっぷ!


江の島上陸の前に、今回のメインスポットのひとつともなる新江ノ島水族館へと向かう。
前身は1954年に開館した江ノ島水族館で、2004年に新たに開館した際に新江ノ島水族館となった。

この水族館は毎年春休み期間(1月下旬から3月)には学割キャンペーンを実施していて、今回もこの恩恵にこうむろうという魂胆だ。
通常大人2100円のところ高大生は一律1050円となって、学生には非常にうれしい。

ちなみに、えのすいの入館券は幾通りも用意されていて、印刷されている魚や動物が異なるから、複数人で入館すると楽しい。
私自身も訪れたのは3年半ぶりのことで、入り口に掲げられた「進化するえのすい」の立て看板が期待を煽る。
階段を上がって、2階から入場する。







最初に迎えてくれるのは相模湾大水槽の水面となる部分。
大水槽をぐるっと取り囲むように回廊が用意されていて、高いところから低いところへ、スロープになっている。
この順路は河川や浅瀬の生き物から深海へと移りゆく展示を見事に体現している。

大水槽に至っては2階から見下ろすもよし、1階から見上げるもよし。
舞うように泳ぐイワシの群れや、ゆるくマイペースなエイはいつ見ても美しいなぁ。













色とりどり、多種多様な生き物たちに思わずシャッターを切りすぎてしまうのであるが、写真を撮ろうと凝視するからこそ見えてくる生態もある。
なんて思ったりもするのだが、水族館では本当に時が過ぎるのが早く感じる。

特に、潜水艇から海中を覗きこむような円形の窓が気に入った。
魚たちは私たちに見られていることには気づかない様子で暮らしを続けている。
その無意識を見ることができるのが水族館の醍醐味であろう。







本日の私のお気に入りショットはこちら。
大水槽と、参加者K氏の右手。
触れられそうなくらい近いけれど、触れられないこの感じが好きだ。

私だけの見かたとか、私の感じた美しさとか、そいうったものを量産していく。
そして、帰った後にそれぞれの景色を共有することができるのは情報社会の、そしてこのサークルのよさでもある。

ほかの人にはほかの美しさというか景色が見えているのだろう。
それが知りたくもある。








最下層まで降りてくると待ち構えていたのはタカアシガニ。
ユニットを組んだように決めポーズで動かないのが面白い。

この階にはえのすいが注力している「深海」と「クラゲ」の展示もある。
と、その前に大水槽を下から見上げてみる。








大水槽は他の大型水族館に比べてしまえば若干劣るものの、このサイズが私は好き。
幕の上がった舞台というか、スクリーンのようで印象的である。

特徴は横幅や奥行きよりも高さがあることである。
深いところから、ずっと高いところを泳いでいる魚を見るという構図がいい。







それに加えて、エイがお腹を見せてきたときの姿がとてもかわゆいのである。
ひらひらとヒレを動かしながら泳ぐその姿はエイヒレにして食べてしまいたいくらいの可愛さがある。

参加者のS氏がエイタソと呼ぶのもわかるくらいに、癒し系であるし推していきたい所存である。








えのすいの真髄といえば深海展示である。
JAMSTECとの共同研究を行い、化学合成生態系水槽とやらを展示している。
あまり難しいことはわからないが、人の潜ることのできない深海の生態系を再現しているということらしい。

展示室内も暗く、水槽内も暗いので目を凝らさないといけないが、生き物を発見した時の興奮はひとしお。
しかしながら、先ほどまでの生き物とは異なり個性派ぞろいなので若干苦手なひとも多そうだ。

みんなのアイドル:メンダコの展示は終了してしまったが、水族館界のダークホース:グソクムシの展示は見ることができる。

深海生物はその特性ゆえあまり動かないのであるが、飽きないほどに未知なる魅力を放っているのだ。

1階にある深海展示は「深海Ⅰ」となっていて、潜水艇「しんかい2000」を展示する「深海Ⅱ」の展示もあるらしいが時間の都合上訪れることが叶わなかった。







もうひとつ、忘れてはならないのがクラゲの展示。その名もクラゲファンタジーホール。
毎回訪れるごとに新しくなっているようにも思う。

幻想的な照明演出の中、多種のクラゲが展示されている。
特に中央にある球型水槽「クラゲプラネット」は美しく、思わず触りたくなってしまうほどだ。

ふよふよと泳ぐクラゲが美しいと思うようになったのはいつの頃からであろうか。
たぶん15年前には水族館でクラゲがもてはやされようとは思ってもいなかったはずだ。








そしてこのクラゲファンタジーホールでは毎日クラゲのショーが行われているという。
クラゲをしつけるでもあるまいし、ショーとはなんだろうと興味本位で待っていると、多くの人がホールへと集まり始めてあっという間に埋まってしまった。
「海月の宇宙(そら)」と銘打たれたこのショーは3Dプロジェクションマッピングによるショーであるという。

クラゲ水槽とその壁面に映像が映し出されて、より印象的にクラゲを紹介していた。
約10分のショーではクラゲの生態や種類の紹介、またえのすいのクラゲ研究の軌跡などが説明された。









ブラックシーネットルやアカクラゲの怪しくも美しい姿にはほれぼれしてしまいます。
美しいものほど持っている毒…











続いては太平洋の展示。
優しげなトラフザメや色鮮やかなカクレクマノミ、臆病なチンアナゴなど他の水族館での人気者がそろっている。
特にここのチンアナゴは飼育数も少なく、臆病なのであまり出てきませんが、そこがまた可愛いくもあります。

その隣にはまたもクラゲの展示。
先ほどのクラゲファンタジックホールが雰囲気で魅せる展示であったのならこちらは内容で見せる展示といった感じ。
30種ものクラゲが陳列され、中にはポリプと呼ばれる幼体の展示など先ほどとは異なったクラゲたちを目にすることができる。
正直、クラゲという生き物の未知さゆえ、クラゲそのものがゲシュタルト崩壊しかけるほどの濃密な展示内容なっている。







エスカレーターでふたたび2階へと上がれば、ペンギンとアザラシの展示。
ここのフンボルトペンギンは大家族のようで、展示解説に家系図が載っている。

こんな大家族の家系図を見ると、すぐに遺産をめぐる血なまぐさい事件の匂いがしてしまうのは推理小説の読みすぎであろう。
それにしてもメスが多い。

さてさて、このようにじっくりと見学をしていたらいつの間にやら閉館時間。
深海Ⅱやウミガメの浜辺の展示は見ることができなかったのである。

時刻は17時。
えのすいの出口でいったん解散して、最後に有志で江の島散策をするとしよう。
 
 



時は夕刻。
夏には海の家が軒を連ね関東のウェイ達が熱い太陽の下で狂喜乱舞する片瀬海岸も重機が乗り入れてどことなく場末的な情景になっている。
そう、冷たい風が吹き、海水浴もできず、花も咲かない湘南と鎌倉は冬はオフシーズンなのだ。
えのすいが春休みに学割を行うのも、そういう影響があったり?とか考えてみる。

重機が動く片瀬海岸の先に見えるは江の島である。
もともとは離島であったが、関東大震災による隆起のため陸繋島になったという。

その名のいわれは「絵島」であり、絵になる島であったからと聞く。
確かに、江戸時代の名所絵にも多数描かれているところを見ると、格好の画題だったのかもしれない。
本日は曇天であるが、晴れた日には富士山も望め、それは風光明美な場所である。

江の島へは歩行者専用の江の島弁天橋を渡るか、日中であれば弁天丸という船が島の最奥になる稚児が淵まで運行している。




江の島は弁天信仰の聖地。
島には江島神社が鎮座して参道が主な散策ルートとなる。
まず、島へと上陸すればうねる坂道に連なる商店たち。
土産物屋あり、飲食店あり、旅館ありと門前街?といった趣である。

特に岩本楼と呼ばれる旅館は江戸時代から続く由緒ある旅館で、ローマ風呂とか弁天洞窟風呂なんていうものがあるという。
弁天洞窟風呂に至っては、往時宿坊だった際に地下牢として利用されていたとかされてないとか。

いろいろと語る前に、少しだけ江の島の歴史を話しておかなければならなそうだ。
この島は『吾妻鏡』にもみえるように、頼朝の昔から弁財天を祀っており、鎌倉幕府歴代将軍をはじめ武家から厚い信仰を受けていた。
以前にも述べたように、弁財天という神様は初期は腕の8つある八臂弁財天と呼ばれる武神として信仰されていた。
一般庶民による弁天信仰が流行するのは江戸時代であり、杉山検校が岩屋で断食をし、満願の日に針術を授かったことでも有名であった。
それからというものは、諸芸上達の神として多く人々の参詣する地となった。

神仏分離後は江島神社となったが、本来は神仏習合の地であり、江の島弁天や江の島明神と呼ばれることが多く、別当は鶴岡八幡宮が務めていた時期もあった。
江戸時代には上之坊・岩本坊・下之坊が各別当になり、そのなかでも勢力を持った岩本坊の宿坊が、現在の岩本楼であるという。








由緒ある門前町や城下町の夜は早く、江の島も例外ではない。
若者の集客が見込める長期休みには頂上のサムエル・コッキング園と灯台が夜間営業しているものの、ほかは日没とともに営業を終了する。

本日はひっそりとした夜の江の島を楽しむことにしよう。

参道商店街の途中で、右手に細い路地があり、ちょっとだけ進むと海岸に出ることができる。
あまり観光情報誌にも載っていないので、人気の少なく落ち着く場所である。








夜ともなれば対岸の片瀬浜の夜景が一望でき、その海岸は辻堂、茅ヶ崎、そして平塚へと続いている。
よくどのあたりまでが湘南であるか、という議論が起こるが、私的には大磯や二宮までは準湘南であり、小田原や真鶴は異なる印象である。
でも、どうやらナンバープレート区分は藤沢以西の海岸沿いの市区町村は湘南に当たるという。

そもそも湘南というのは、現在の中国湖南省にあった湘南県がルーツである。
鎌倉時代に禅宗が入ってきたことによって、名付けられたと聞く。









参道商店街へと戻って、坂を登りつめるといよいよ神社の入り口となる。
鳥居の下は十字路となっており、島の道路はここで3手に分かれる。

正面階段は江島神社辺津宮へと至る参道階段である。
左手は辺津宮へと経由せず頂上へと向かう階段と、エスカーこと有料エスカレーターの入場口がある。
右手は裏参道ともいうべき特に何もない道で、頂上へも至らずに奥津宮や稚児が淵へと至る。

今回は正統派、正面の参道を選ぼう。
急峻な階段で一気に辺津宮まで駆け上がる。
途中、振り返れば木々の合間から対岸の夜景を目にすることもできる。

階段の途中に手水舎があるのがおもしろい。









江島神社は島内に3つあり、手前から辺津宮、中津宮、奥津宮となっている。
宗方三女神がそれぞれに祀られている。

ここ辺津宮がもっとも規模の大きな社であり、拝殿の左手の奉安殿には武器を持つ「八臂弁財天」像と琵琶を持つ「妙音弁財天」像が安置されている。
妙音弁財天は通称、裸弁財天とも呼ばれ、全裸で琵琶を奏でていらっしゃる。
なぜ裸なのかはわからないが、同じような形式の弁財天像が鎌倉の鶴岡八幡宮にも伝わっていて、そちらは着物を着ていらっしゃることからも、
現代風に言えば、着せ替え人形的なスペックを持っていたとも考えられなくもない。

中学時代の思春期に初めて訪れた私には、裸という文字がどうにも艶めかしくて、でも見ることができなくて記憶にだけは強く残った記憶がある。
ちなみに2015年の1月に私が行った企画では皆でこの弁天様を参拝した。









辺津宮の参拝が済むと、次は中津宮へ。
途中、北東の方向に視界が開ける場所は昼間も美しいが、夜景は特に美しい。
写真は以前のものであるが、照らす月明かりと、ヨットハーバー、灯台がいかにも湘南らしい。

ちなみにヨットハーバーのある江の島東部は1964年の東京五輪の際に埋め立てられた場所であり、もともとは海であった。
江の島にはこうして新旧二つの歴史が共存している。

階段を上って中津宮に詣で、また階段を上るといよいよ頂上だ。









頂上は思いのほか現代風で、海を眺めることのできる飲食店やデッキ、それに加えて夜間ライトアップした公園もある。
無料なので入ってみたはいいものの、芝生いっぱいに広がったLED電球がまぶしくて目がちかちかする。
綺麗ではあるが、私には少し刺激が強すぎるようだ。



また、反対側には有料のサムエル・コッキング園および江の島シーキャンドル(展望灯台)の入口がある。
サムエル・コッキング園は1882年にイギリス人貿易商のサムエル・コッキングによって開設された庭園で、よく手入れされているので散策は楽しい。
藤沢市と姉妹都市であるマイアミビーチ市、松本市、崑明市などにまつわる施設や広場もある。










その園内に立つ、江の島シーキャンドルは2002年に完成した灯台兼展望塔で、円錐を逆さにしたようなフォルムは印象的である。
今回は上らなかったが、展望塔は2層になっていて、屋外にも出ることができるのがうれしい。
いつの日にか訪れた時のパノラマ写真を載せておく。

高台から感じる海風もまた心地よい。
また、灯台にはエレベーターが付いているが、下りは外の螺旋階段も利用することができて冒険心がそそられる。
高所好きにはたまらないだろう。

しかし、夕刻以降は周囲にカップルしかいないことはあらかじめ覚悟しておかねばならない。








江の島といえば、猫。
夜になれば、人は減って、猫が増える。
家先や路地、神社の境内など島内のいたるところで、見かけることになる。

夜まで営業しているお店の前でおいでませしているのは、このお店の看板猫だろうか、それとも違うのだろうか。
猫は何も語らない。









江の島の猫との出会いは一期一会。
出会ったら逃げられないように、こっそりと写真を撮っている。

今までもいろいろな猫に出会った。
こう見ると、江の島はいつも平和だなぁなんて思ったりもする。

最後に奥津宮に詣でて、参道を折り返す。
その先の急な階段を下れば稚児が淵と呼ばれる岩場と海蝕洞窟の江の島岩屋があるが、暗くなりすぎてしまったので断念。
日中に行けば磯遊びができるのでおすすめだ。

復路は裏参道を通って、商店街まで戻る。
街灯はあるが人家はないので、薄暗い夜道は妖怪でも出そうな雰囲気がある。
聴こえるのは崖下の波音だけ。

江の島は漁師がいるから、昔から海にまつわる伝説は多かったと聞く。
波高く、雨降る悪天候の日には死者の声が聴こえるとか、船幽霊が出て柄杓を貸せというらしい。

自然と隣り合わせだからこそ、現実味を持って語り継がれてきた伝説であろう。









本土へ戻って、小田急線の片瀬江ノ島駅から帰路へつく。
闇夜に浮かぶ駅舎は竜宮城のようで現実離れしている。

様々な意味で非日常を歩いた一日もこれで終わり。
小田急線のシートに座って身を任せれば、行き先にはいつもと同じ現実が待っている。


でもきっと、私にとっては一番身近な非日常。
変わらないようで変わっていく光景にこれからも無常を感じ、変わっていくようで変わらないものに安堵し続けよう。
次に会うときは、そう遠くないだろう。

その時まで、さようなら鎌倉・江の島。

 

「完」

 

 

 

 

※この記事は武蔵大学文化研究会Blogむさぽけっとに投稿した
「これが最後だ!!えのかまTOUR 1」~「これが最後だ!!えのかまTOUR 5」を加筆・訂正したものです。

 

 

 



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