ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「柳屋商店開店中」

2016年10月17日 | 書籍関連

2001年、小説黄金の灰」で文壇デビューを果たした柳広司氏。近年では著した作品が、各種ミステリー・ランキングの上位に選出されるのが常となっている。そんな彼が15年間の作家生活の中で著し、結果として“単行本収録”となった作品を集めたのが、今回読んだ「柳屋商店開店中」だ。

 

有名作品のパロディー、柳氏の代表作「D機関シリーズ」の短編エッセー文庫本後書き等、多種多様な作品が詰め込まれている。中でも面白かったのは司馬遷の「史記」を原典とした「策士二人」と、太宰治氏の「走れメロス」を“パロった”「走れメロス」という作品。

 

前者は「中国戦国時代の国で策士として働いた孫臏を扱っているのだが、有名な逸話を“柳風”に味付けして在って、とても面白い。人間の持つ“暗部”や、経験や環境によって変化して行く人間という物が、上手く描かれている。其の能力を高く評価し、其れに「自身を“滅ぼす”事になる存在。」として恐れ、“葬り去った”弟子が、軈ては恐れていた通り、自身を滅ぼす相手となった。死の間際脳裏過ったで在ろう事を想像すると、感慨深い物が在る。

 

そして後者は、多くの人が知る有名な作品「走れメロス」を、別の角度から描いている。麗しい友情物語”が、柳氏の手に掛かると、“リアリスティックな物語”に変わるのだから面白い。

 

エッセーからは、作家で在る“柳広司”が、どういう経緯を経て“作り上げられて来た”か?窺い知れ、実に興味深い。「本を読むにしても漫然と読むのでは無く、人とは違った角度から読み、空想も強い。」、そんなタイプでないと、少なくとも売れっ子作家にはなれない様な気がする。

 

総合評価は、星3つとする。


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