「灯滅せんとして光を増す」という諺が在る。「灯が消え様とする前の本の暫くの間、光が明るさを増す。」という状態を意味し、「人が死ぬ前に一寸容態が良くなったり、物事の滅亡の直前に、一時的に勢いを盛り返したりする事の譬え。」でも在る。もう大昔の話になるが、風邪という“誤診”を受け、1週間程自宅で静養していた父が、元気な姿を見せたと思ったら、翌日に心筋梗塞で急死したのも、「灯滅せんとして光を増す」を思わせる出来事だった。
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<亀井善行(義行)選手の通算成績(10月21日時点)>
安打:1,069
本塁打:101
打点:462
打率:.257
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昨日、ジャイアンツの亀井善行選手が記者会見に臨み、今季限りでの現役引退を明らかにした。今季はチャンスに打てない事が多かったので、「今季限りかも・・・。」という予感は在ったが、実際に現実化すると、本当に寂しい。「プロ入りして以降、引退する迄、同じチームでプレーを続ける。」というのが中々難しくなった現在、「プロ入りから17年間、ジャイアンツ一筋でプレーして来た亀井選手。」というのは、とても貴重な存在だし、「チャンスに強い打撃を見せて来た彼。」は、ジャイアンツ・ファンとして忘れられない選手の1人で在る。
今年の3月26日、東京ドームで行われた対ベイスターズとの開幕戦。9回裏に先頭打者の小林誠司選手の代打で登場した亀井選手は、三嶋一輝投手からサヨナラ本塁打を放った【動画】。「開幕戦での代打サヨナラ本塁打は、NPB史上初の出来事。」という事だったが、今年で39歳を迎えるとは思えない打撃に、「未だ未だ現役を続けられるな。」と確信したっけ。
でも、其れ以降はチャンスに打てない事が増えた。記者会見で亀井選手は「昨年の怪我が完治せず、今季は思う様なプレーがずっと出来なかった。自分の中では5月の時点で、今季限りの引退を決めていた。」と明らかにしていたが、今考えてみると、3月26日のサヨナラ本塁打は「灯滅せんとして光を増す」だったのだろう。
亀井選手と言えば、忘れられないプレーが幾つか在る。上記した今季のサヨナラ本塁打もそうだが、一番忘れられないのは「2017年6月18日に東京ドームで行われた対マリーンズ戦での逆転サヨナラ3ラン。」だ【動画】。セ・パ交流戦として行われた此の試合、延長12回表を終えた段階で「3対5」とマリーンズが勝っていた。そして迎えた12回裏、坂本勇人選手のタイムリー2塁打でジャイアンツが1点差に迫った所で、マリーンズ・ベンチは次打者のケーシー・マギー選手の敬遠を指示し、亀井選手との勝負に。
此の試合、8回の守備から出場した亀井選手は「8回1死2&3塁」、そして「10回2死2&3塁」の好機に打席に立つも、共に凡退。マギー選手は2回共に敬遠されており、3度目の敬遠だった。非常に悔しい思いをしていた亀井選手は、一振りで逆転サヨナラ3ランを放ったのだが、印象的だったのは「本塁で迎えていた高橋由伸監督の胸に飛び込み、男泣きしている亀井選手の姿。」。どんなにか悔しい思いをしていたか判るシーンだったし、若い頃から高橋監督に可愛がって貰っていた彼としては、何とかして高橋監督を“男にしたかったのだろう。見ている此方も、思わず爆泣きしてしまった。
遠く無い将来、彼には指導者としてジャイアンツに戻って来て欲しい。17年間、本当に御疲れ様でした!!!