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ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「心淋し川」

2021年03月17日 | 書籍関連

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江戸千駄木町の一角は心町(うらまち)と呼ばれ、其処には「心淋し川(うらさびしがわ)」と呼ばれる小さく淀んだ川が流れていた。川のどん詰まりには古び長屋が建ち並び、其処に暮らす人々も又、人生という川の流れに行き詰まり、藻掻いていた。
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第164回(2020年下半期直木賞を受賞した小説心淋し川」(著者西條奈加さん)を読了。読む本の9割近くはミステリーで、残る1割程は歴史小説ノンフィクション物という感じの自分。「歴史上の人物を描く。」のが歴史小説だが、「過去の時代の架空の人物を描く。」という時代小説は、余り読む機会が無い。「心淋し川」は時代小説に当たり、直木賞を受賞しなかったら、読む事は無かったかも。

「心淋し川」は6つの短編小説から構成されているが、描かれているのは市井の人々、其れ社会の底辺で生きている人々の生活だ。

全6作品に共通して登場するのが長屋の差配・茂十(もじゅう)という男性。50代半ばと思われる彼の素性に付いて、第4話の「冬虫夏草」で或る女性が“匂わせの言葉”を口にしているが、最後の「灰の男」で意外な正体が明らかとなる。其れの5作品にばらばらで登場して来た人物達が、「灰の男」で繋がって行く。不自然さの無い繫がり方に、「設定が上手だなあ。」と感心。

「はじめましょ」及び「明けぬ星」という作品が、特に印象的。共に心に染み入る物が在り、「はじめましょ」は「良かったなあ。」という思いが、そして「明けぬ星」は何とも言えない切なさが在った。

総合評価は、星3.5個とする。


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