2月7日付けの東京新聞(朝刊)に、「音楽教室から著作権料 ~業界猛反発 講師等不安」という記事が載っていた。「音楽著作権の集中管理事業を、日本国内に於て営む社団法人の日本音楽著作権協会(JASRAC)が、ピアノ等の音楽教室の演奏から著作権料を徴収方針を決めた事に関する内容だ。
著作権法は、「公衆に聞かせる事を目的に楽曲を演奏したり歌ったりする『演奏権』を、作曲家や作詞家が専有する。」と定めている。JASRACは、「生徒も公衆に当たり、『演奏権』が及ぶ。」と判断した様だ。
長期縮小傾向に在る音楽業界に在って、JASRACは著作権料の徴収先を増やす事で、全体の徴収額を横這いに保って来ており、此れ迄にもダンス教室やカラオケ教室、楽器演奏講座を開くカルチャー・センター等から、著作権料の徴収を進めて来た。今回の方針も、其の延長線上に沿う物らしい。
JASRACは文化庁への届け出を経て、来年1月から徴収を始めたい考え。約1万1千ヶ所の音楽教室が在るされるが、個人運営の教室は除外する意向で、著作権料は年間受講料収入の2.5%を考えているとか。
此れ迄は基本的に“音楽を享受する場所”から著作権料を徴収して来たのに対し、今回初めて“音楽を練習する場所”に手を伸ばす事に。記事では、退職後にギターを習い始めた生徒の男性(63歳)の声が紹介されている。
「当然の事乍ら、月謝も上がるだろう。楽譜を買う時に著作権料を納めている筈だから、二重取りという感じもする。」。
今回の方針に関し、アーティストや作詞家等の間から反発も出ている。宇多田ヒカルさんは自身のツイッターで「若し学校の授業で私の曲を使いたいっていう先生や生徒が居たら、著作権料なんか気にしないで、無料で使って欲しいな。」と、又、「残酷な天使のテーゼ」【動画】の作詞等を手掛けた及川眠子さんは「音楽教室で『練習の為に』弾いたり歌ったりする者から、使用料を貰いたいと思った事等無い。」とコメント。
全てのアーティストや作詞家等が、今回のJASRACの方針に反対している訳では無いだろう。自身の作品に対して強い拘りを持っていたり、少しでも多くの著作権料が欲しいと思っているアーティスト等だと、賛成の思いを持っているかもしれない。
個人的には、「目先の金に執着する事で、結果的に音楽業界をより縮小させてしまわないだろうか。」という懸念が在る。「音楽教室の演奏から著作権料を徴収する。→教室の月謝が上がったりする事で、音楽業界を目指す人間が減少する。→才能の芽を摘んでしまい、音楽業界の裾野が狭まって行く。」のではないかと。
正に其の通りですね。縮小し続けて行く業界の抜本的な立て直しをするよりも、金の巻き上げ先を増やして行く事で、“表面上の収入”をキープする。大局的に“未来”を見据えるのでは無く、目先の事だけに汲々としているのがあからさまで、「未来が無いなあ。」と感じてしまいます。
私も自分の書いた文章や撮った写真が、自分の知らないところで無断で使われるとしたら、それは気分が悪いに違いない。
けれど作品として正当な対価を得て世間に公開したものであれば、ルールを変えてそれ以上の要求をするのはどうかと思います。
仮に百歩譲ってルール変更を認めるにしても、変更以前に発表されたものにまで遡及して範囲を及ぼすのは、それこそルール違反でしょう。
話は違いますが、刑事罰で法律が変わっても公布・発効した日以前の事案に対して、遡って罰則が適用されることはまずないでしょう。
仮に不公平だとしてそれをすれば、大混乱すること間違いナシ。
著作者の権利・財産を守るというより、日本音楽著作権協会が組織としての維持を目的にしているような気がしなくもありません。
子供の頃より本が大好きな人間なので、本の売り上げが減少している事で、作家達の収入が厳しい状況になって来ている事に堪らない思いが在ります。(図書館で借りる許りで、本の購入頻度が落ちている自分も反省しなければいけないのですが。)ですから、今回の件も、著作権料を得る側の気持ちも凄く理解出来るんです。既に可成りの金銭を得ている人達は別にして、そうじゃ無い人達も多いと思うし。
唯、悠々遊様も指摘されている様に、「組織の維持在りき。」というJASRACの思いが、強く感じられるのも確か。
又、仰る様に、法には不遡及の原則というのが在りますし、“網”を掛けるにしても、新しい取り決めが為されて以降の作品が対象とするのが筋でしょうね。実際には、「そういう棲み分けを行うのは難しい。」という事で、全ての作品を対象にするのでしょうが・・・。