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・瀬戸内の島で出会った青埜櫂(あおの かい)と井上暁海(いのうえ あきみ)。2人を支える教師・北原草介(きたはら そうすけ)が秘めた過去。彼が病院で話し掛けられた教え子の明日見菜々(あすみ なな)が抱えていた問題とは?(「春に翔ぶ」)
・才能という名の星を輝かせる為に、魂を燃やす編集者達の物語。漫画原作者・作家となった櫂を担当した編集者2人が繋いだ物。(「星を編む」)
・花火の様に煌めく時間を経て、愛の果てにも暁海の人生は続いて行く。(「波を渡る」)
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3つの短編小説から構成された、小説「星を編む」(著者:凪良ゆうさん)を読了。此の本は、2020年(第17回)本屋大賞を受賞した「汝、星のごとく」の続編。「汝、星のごとく」を読まれていない方も居られるだろうから、梗概を記す。
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風光明媚な瀬戸内の島に育った高校生の井上暁海と、自由奔放な母の恋愛に振り回され島に転校して来た青埜櫂。共に心に孤独と欠落を抱えた2人は、惹かれ合い、擦れ違い、そして成長して行く。
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「汝、星のごとく」では、「井上暁海と青埜櫂が17歳の高校生だった春から物語は始まり、其れ其れの視点で交互に話は進んで行く。そして15年後、32歳になった暁海の夏で、話は終わる。」という展開。家庭に大きな問題を抱えた2人の成長譚だが、“純愛小説”で在り、“悲恋小説”でも在る。
今回の「星を編む」、最初の「春に翔ぶ」では“教師・北原草介が暁海達と出会う前”を描き、そして「星を編む」及び「波を渡る」では“「汝、星のごとく」の後”を描いている。具体的に言えば、“58歳の暁海の夏”迄が描かれているので、暁海達が北原と出会ってから41年という年数が経っている。
他者から見れば、此の作品に登場する“家族達”は、“疑似家族”という事になるだろう。又、彼等はモラルや常識という点からすると、眉を顰められる様な“家族の形”かも知れない。けれど、彼等は彼等形に必死で生きているのも事実なのだ。
「汝、星のごとく」と「星を編む」では、幾つかの“生”と“死”が取り上げられる。人類が登場して以降、数多の生と死が紡ぎ合わされ、人類の歴史は今に到っている。人は個々で生きているが、他の人々と深く、又は浅く繋がり合っているのだ。此の作品に取り上げられている生と死からは、そういった人類の悠久の歴史を感じてしまう。
綜合評価は、星3.5個とする。