AERA(3月10日号)に、「過去最多 子供の自殺を防ぐ対策」という記事が載っていた。
「日本に於ける自殺者の数は、年間約3万人。」というのが、自分の中での認識だった。確かに警察庁の「自殺統計」によれば、1998年に「32,863人/年」と初めて3万人を突破し、2003年に(1978年の)統計開始以降最多の「34,427人/年」を記録して以降は右肩下がりを続けるも、2011年迄は「3万人台/年」だった。だが、2012年に「3万人台」を割り、2024年は「2万268人/年」(暫定値)と、統計を取り始めてから過去2番目の少なさに成ったと言う。自殺者の数が此処迄減ったというのは、非常に良い事だと思う。
だが、今年1月に厚労省が発表した所によると「昨年、日本に於ける自殺者の総数が過去2番目の少なさを記録する一方で、小・中・高生の自殺者数は『527人』と、統計の在る1980年以降で最多を記録した。」と。此れは「約1.4人/日」という割合で、子供が自ら命を絶っている計算に成る。
子供の自殺は、2022年に初めて「500人」を超えた。「コロナ禍で人と人との繋がりが分断され、学校や家庭の悩みが深刻化した。」事が、増加の一因と見られたが、日常が戻った後も状況は変わり無し。然も、「少子化が進み続けているにも拘らずに。」という事で、2024年の内訳は「小学生:15人(前年比2人増)、中学生:163人(前年比10人増)、高校生:349人(前年比2人増)」と、何れも前年を上回っているのだ。
精神保健福祉士で、自殺防止に取り組むNPO法人「OVA」の代表でも在る伊藤次郎氏は、「自殺には自殺のリスクを上げる『危険因子』と、リスクを下げる『保護因子』が在る。今、家庭での虐待や学校での虐め等、子供を取り巻く危険因子は増えている。一方で、地域社会から子供の居場所と成り得る『中間共同体』が失われ、家庭や学校では親も教員も余裕が無いので、自殺予防で重要とされるゲートキーパー(命の門番)の機能が落ちている。詰まり、危険因子が上がっただけでは無く、保護因子も落ちている。」と指摘している。
厚労省の資料から子供達の自殺の原因&動機を見ると(複数回答)、「①学業不振や進路に関する悩み等の『学校問題』:349件(約44%)、②鬱病等の『健康問題』:284件(約36%)、③親子関係の不和等の『家庭問題』:148件(約19%)」と、受験や進学でプレッシャーを感じている子供は非常に多くなっている。伊藤氏は「大人達は競争原理の中で常に生産性を求められ、追い立てられている。其の為、『子供達には勉強をして、良い大学、そしてより良い企業に入って欲しい。』と考えている。其れが子供達にも伝わり、非常にプレッシャーに成っていると思う。」と分析。
そして、今回の厚労省の発表で他に留意すべき点として、「女子の自殺が増え続けている。」というのが在る。「昨年、自殺した小・中・高生の女子は、前年比34人増の『288人』。5年前の約2倍と成り、初めて男子の自殺者数を上回った。」と言う。
自殺の問題に詳しい南山大学の森山花鈴准教授は「小・中・高生の女子の自殺者数が増えた背景や原因は、詳細な分析が必要。」とした上で、「『本来、男性の方が女性より弱音を吐けず、悩みを打ち明ける事が出来ない。』と言われている。然し、其処が子供達の中で変化して来ている気もする。又、最近は、一見普通に日常を送っている子供が自殺をするケースが増えている。ギリギリ迄頑張って、悩みを打ち明ける事が出来ない女子が多く成っているのではないか。」と語っている。
「日本の未来を背負って立つ子供達の自殺が増えている。」というのは、"国を傾かせ兼ねない由々しき問題"と認識すべきだろう。